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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/04/20 (Sat) 00:55:35

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No.184
2012/08/17 (Fri) 16:43:17

The Basketball which Kuroko plays

基本赤司+降旗です。
作中では黒子+青峰+火神、黄瀬+笠松、緑間+高尾、紫原+氷室気味なります。
地雷はあ敢えて言えば黒子や赤司が右側のCP(重要)です。

作品認知度
漫画・小説所有。週刊誌は現在未読。
アニメは秀徳戦から追ってますが、ED差し替え部とEDカード視聴が主体。
キャラソンは情報程度。

赤司+降旗
Campus Life
Campus Life Thursday
化物語×キセキ
それは所謂

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No.188
2012/08/17 (Fri) 16:41:38

≪設定≫
軽く人物の職業や状況をご紹介。
 
赤司征十郎
帝光病院の新任外科医。
次世代の先駆けとして注目を集めている。
 
降旗光樹
地方公務員。基本事務作業。
ある事情で話せない。
 
火神大我
帝光病院の精神科医。
降旗とは高校が同じで友人。
 
黒子テツヤ
帝光病院の看護師。
影の助っ人、第三の手などといわれている。
 
緑間真太郎
帝光病院の整形外科医。
診察室や手術室に妙なものがあり意外と安らぐと人気。
 
 
以上は確定している分だけです。他の方々は決まり次第出していきます。
どうして火神が精神科医になったかは、降旗との関係上です。
というか、成り行きです。最初は入院患者だったけれども医師にしました。
 
 
 
≪冒頭≫
 
 手入れの行き届いた中庭は、国立帝光病院の人気のスポットだった。四季折々に咲く花達は患者だけでなく勤務する医師達の心も癒している。
 
 程よく枝を広げた木の下に置かれたベンチに腰をかけているのは、新任外科医の赤司征十郎だった。付属大学に在学中から頭角を現しており、国家資格取得の後、すぐに配属された。ベテランの医師に引けを取らない正確かつ精密な技能は国内に留まらず、次世代の先駆けとして注目されている。
 
 しかし赤司にとって、そのような評価は利用できるものに過ぎない。本当に欲しいものは肩書きや名声ではなく、もっと別の。詰まっていた感情を離散させるように、深く息をついた。
 
 そこで不意に、視界に赤いPDAが入ってきた。
 
『大丈夫ですか?』
 
白く光る画面には、無機質なデジタルの文字が並んでいた。持ち主を見ようと顔を上げると、逆光のなか、微笑みを浮かべた青年が立っていた。
 
 耳が聞こえないのだろうと思い、白衣の胸ポケットに刺していた筆記具とメモを取り出そうとしたが、書き出す前に再度PDAを見せられた。そこには先程とは別の言葉が追加されていた。
 
『聞こえますから、大丈夫です』
 
相変わらず、表情は穏やかだった。文面を見ればつまり、話せないようだ。
 
「喉の異常か?」
 
そう尋ねれば、青年は首を横に振った。そしてまた文字を入力していく。
 
『精神的なものだそうです』
 
もう立ち直ったつもりなんですが(汗)、とも書かれていた。その手の症例を学んでいないわけではないが、専門外だった。下手な助言はできない。迷ってここにたどり着いた可能性もある。
 
 赤司は立ち上がると、青年は勢いよく左右に首を振って急いで入力すると、PDAの画面を指した。
 
『大丈夫です!!今日は友達に会いに来ただけなので』
 
会いに来たという事は、見舞いだろうか。外科なら案内できるがというと、友人は患者ではなく医者、しかも精神科医なのだという。彼ぐらいの年齢で精神科医というと、最近赴任してきた、自分とはまた違う赤い髪を持った大柄な男を思い出した。
 
『俺、行きますね』
 
医者の名前を言う前に、青年は軽く頭を下げて足早に去っていった。
 
「火神の患者か」
 
最初は、こんな認識だった。
 
 
 
≪認知≫
 
 昼が過ぎ、院内には見舞いに来た人々が増え始めていた。静かな待合室も、話すことが好きな高齢者達の話しでざわついていた。
 
 建前上の休憩時間に入った赤司は巡回していた。病院内であっても小さな事故は起こる。すぐに対応できるように階段付近や曲がり角では特に往来を注視して行く。
 
 向かいから足早にやって来た医師が、赤司を呼び止めた。
 
「赤司!」
「何だ、火神」
 
院内は静かにすべきだと目で言えば、火神は一度背筋をただした。しかしすぐにその調子は戻った。
 
「降旗、友達なんだけどさ、そいつ見なかったか?」
「俺は君の交友関係までは把握していない」
 
そのような名前を聞いた事は無かった。自分の患者の中にもその姓をもつものはいない。
 
 赤司の返事に火神は驚いた表情を見せた。
 
「は?会っただろ、お前。茶髪で……あー、『喋れない』奴」
 
最後に挙げられた特徴はあまりにも具体的過ぎた。確かに赤司は降旗と出会っていた。だが、名前を聞いていなかった。そうか、彼は降旗というのか。その名前を記憶にとどめた。
 
 あの後、赤司が降旗を見かける事は無かった。精神科と外科は距離があるため、本来すれ違うことは滅多にないのだ。
 
 火神は暫く唸ると、あの馬鹿、と呟いて溜息をついた。
 
「あいつ忘れ物していったんだよ」
 
そう言って差し出したのは小さな赤いPDA。会ったときに見せられたものであった。こんな大事なものを。
 
「よく忘れるな」
「少し抜けてっからな…」
 
失笑する火神のその言葉に、お前が言うか、と赤司は思った。しかしここで口に出せばまた面倒なことになるため、心のうちに留めておいた。
 
 
 
 
≪再会≫
 
 同日の日暮れ。外来はすべて締め切られ、患者の滞在する病棟は静かになっていた。
 
 緊急外来の治療を終えた赤司は仮眠室へと足を進めていた。思った以上の重傷で、処置は四時間に渡った。目頭を揉みながら、処置に関する反省をした。手は尽くした、抜かりはない。自然と出てきた言葉に、何処かの整形外科医と被るな、と一人ごちた。
 
 その途中、今朝方に見た青年がしきりに辺りを見回していた。歩いてきた一人の看護師が気づいて声をかけたが、青年は言葉を返さず、何かを書く仕草を見せた。そこで赤司は彼が降旗であることに気づいた。ジェスチャーの意図に気づいた看護師は胸ポケットに入れていたボールペンとメモ帳を渡した。どうやら書くもの、書かれるもののどちらもを持ってくるのを忘れてしまっていたようだった。
 
「降旗君、で合ってる?」
 
そう声をかけると、二人分の視線が赤司に向いた。
 
 やがて、茶髪の青年は一つ頷いた。それを確認して、赤司は看護師の方を見た。
 
「カウンターのところに赤いPDAがあっただろう?」
 
そう指示を出せば、降旗は大きく頷いた。
 
 こちらですか、と差し出されたPDAを受け取ると、降旗は深く頭を下げた。
 
「火神から聞いていたからね」
『え?火神から?』
「彼とは同僚なんだ」
『そうだったんですか』
 
そう書いた後、口が動いていた。読唇術は心得ていないが、何かしら火神に対して文句を並べているのだろうと勝手に推測した。
 
『PDAありがとうございました。赤司先生』 
 
No.186
2012/08/17 (Fri) 16:39:26

 日付を追ってとじたファイルは、現在でも活躍している青峰のものが一番厚いのは仕方の無いことだった。中学時代の写真から見ていくと、体格や動きの変化が非常によく判った。ジャンプをした瞬間の、トップで体が伸びている状態のカットを見る度、非常に恵まれた体格であることが分かる。続いて火神。あの桁外れの跳躍力はアメリカでも十分に通用していた。
 
 青峰と火神の対談(スポーツ選手も大変だ、と思わせる、ファッション誌のような写真もすべて残してある)を見ると、当初の険悪ムードが嘘のようだ。敵同士が、今や同じチームで戦う仲間なのだから。一番面白かったところは、やはり英語に関する項目で、火神が青峰を馬鹿にした一文だった。あれは酷い、人の事いえないだろうと降旗は思わず声に出して突っ込んでしまった。
 
 赤司のページは、帝光時代の発言が既に中学生のものではなかった。今だからこそ理解できるが、実際に中学生でこれを読んでいたら、何だこいつと思っていたことは容易に想像できた。髪は、今の彼の長さとほぼ同じであった。連鎖的に思い出すあの邂逅に良い印象はない。現在の時点では恐怖から苦手に軽くなった。
 
 記事を読んでいると、手が、腕が、脚が、体全体が疼いた。視界の端に暗い橙のボールが入るなり、降旗はそれを抱えて外に出た。
 
 バスケットゴールのある公園まで走れば、部活帰りらしい高校生の集団が5人ほど集まって、順に1on1をやっており、彼らの着るジャージは懐かしい色をしていた。
 
「なぁ」
 
降旗は思わず声をかけた。
 
「俺も参加して良い?」
 
高校生達は最初こそ戸惑った。しかし降旗が誠凛のバスケットボール部の元部員であったことや部員しか知らない内情を話せば、その緊張は一気に解けた。また、6人になったことで3on3をやることもできた。
 
 聞いた話、監督は今でも誠凛高校に顔を出しており、その日は地獄のような練習になる。それが毎日だったと言えば部員達が青ざめた。彼女の残していった基礎メニューは現在でも続いており、誠凛は毎年I.H.まで出ているのだから、強豪校と言えるし、もちろん彼らも強い。
 
 解散する頃には、すっかり体力を持ってかれてしまっていた。
 
 
 
 全学部共通科目、健康科学の講義が終わってすぐ、降旗は前に座っていた友人に声を掛けられた。
 
「この後カラオケ行こうぜ」
 
バイトの先輩から割引券貰ったらしい。左右に座っていた友人達はすぐに首を縦に振った。丁度歌いたい新曲がある、とか、ストレス発散したい、という声が耳に入ってくる。ところが降旗はそれに倣うことはできなかった。
 なぜなら、今日は木曜日である。
 
「悪い、今日約束があるんだ」
 
机上に広げていたプリントを挟み入れたファイルを、筆箱とともにリュックへぞんざいに投げ入れる。そうすれば帰宅の準備が整った。
 
「何そんなに急いでんだ?」
 
そのあまりの手早さに、友人達は少し驚いた。
 
「絶対に遅れたくないんだよ」
 
そういい残し、降旗は講義場を出た。
 
 講義が終わったのは14時50分。約束の16時までには一時間ほど残っていた。これなら十分先に着くと踏んで、本屋に立ち寄った。雑誌コーナーまで足を伸ばせば、中古から買い揃えたバスケットボール雑誌の最新号が出ていた。目次を開いて特集を確認すると、「青峰大輝」の文字が目に入った。他にもインカレの注目選手の特集も掲載されていた。出身大学を見ていけば、この大学出身現役選手もインタビューに答えていたことがわかった。後ろから状態の良いものを一冊抜き取り、降旗はレジへと向かった。
 
 待っている間に読んでしまえば良いだろう。階段を下りてセンタービルのエントランスに向かうと、そこには人だかりができていた。
 
(有名選手でも来たのかな?)
 
この大学に入って珍しくもなんとも無い光景となったが、それでも一目見たさに集まる生徒は絶えない。現在の中心は誰かと、下りかけた階段を登って上から覗いて見る。集団からやや間のあいた中心には鮮やかな赤い髪が目に入った。
 
「……はい?」
 
赤司征十郎が、既に待ち合わせ場所に立っていた。
 
 降旗は慌てて腕時計を見た。15時に差し掛かるぐらいだった。もう一度確認しても、短針はまだ3の上にあり、長針はまだ1にすら差し掛かっていない。秒針がただ一秒また一秒と進むのみ。幾らなんでも早すぎではないか。
 
(この中に割って入っていくって結構勇気というかなんと言うか…)
 
すぐに行きたいところだが、集団を成す殆どが女子生徒であり、思わず苦笑いがこみ上げた。その際に漏れた声が偶然にも聞こえたのか、赤司の頭が上を向いた。
 
「何をしているんだ?」
 
見つかってしまった。視線もばっちりと合ってしまった。隠れていたつもりも、遅刻したわけでもないのにこみ上げる罪悪感は一体何だろうか。降旗は小走りに階段を下りて、先ほどの考えは何処へ、女子学生の間を分け入って、赤司の前に立った。
 
「ごめん」
「謝ることはないだろう。まだ15時過ぎたところだ」
 
早いという認識は赤司の方にもあった。三時間目のあとに入れていた予定がキャンセルとなり、他にする事が待ち合わせだけであった。
 
 降旗は待ち合わせという行動を根本から考えたくなったが、それが言葉として外に出る事はなかった。
 
「行こっか」
 
 
 
 
 帰り道が実は同じ方向だったり、降りる駅が同じだったり、何となく振ってみた地元ならではの話が通じてしまった。お互いに驚きの連続で、どこかですれ違っていたかもしれないと考えた。
 
 降旗の家は最寄りのバス停から5分の住宅街の一角にある。赤司の実家はどんな風なんだと尋ねれば、平屋と返ってきた。
 
「じゃあ、家では和服なんだな」
 
そう降旗が冗談交じりに言ってみると、なんと事実だった。
 
 一体赤司の家はどうなっているのだろうか。興味と別のなにか半々の思いを抱きつつ鍵を開けて自室に案内すれば、少しだけ緊張が和らいだ。
 
「飲み物、何が良い?」
「学校に持って行った残りがあるから大丈夫」
「、分かった」
 
降旗はドアノブから手を離し、本棚の前に座った。一段分のファイルをごっそりと取り出すと、テーブルに積み上げていった。
 
「これが青峰、そっちが黄瀬と緑間、で、こっちが赤司、紫原、あと火神のも一応」
 
テーブルに置かれたファイルは姓に含まれる色で区別されていた。火神のファイルはスポーツメーカーが出していた赤地に黒のラインの入ったもので、赤司のものと見分けがつくようになっていた。
 
 赤司は自分のと示されたファイルを手に取った。一ページ目を見れば、懐かしい帝光中学校のユニフォームを着た過去の自分がいた。何時の間に撮られていたのか、全国大会の試合中の一枚だった。暫く写真のみが続き、やがてあのインタビュー記事にたどり着いた。発言内容は、実際に発言したものから大分柔らかい表現に変えられていた。そのまま書かれていたら大変な騒ぎになっていたかもしれない、と今更になって振り返った。
 
 他にも、黒子の見切れた写真や誠凛含む強豪校の選手達の写真もあった。
 
「後々考えてみると、凄い奴らと戦ってたんだなって今でも思うよ」
 
I.H.もW.C.も、決勝トーナメントは必ずといって良いほど、キセキの世代を獲得した高校が名を連ねた。降旗はスタメンには加わらなかったが、予選でも本選でも、交代でコートに入るぐらいの実力を得た。赤司の試合のビデオを見て、PGの勉強をしたのも懐かしい。
 
(そういえば、あのノートは何処へやったんだっけ)
 
そう思った矢先、赤司の手にある大学ノートのタイトルを見て降旗は焦った。
 
「それ!」
「よく研究しているね」
 
だが、甘い。赤司はそう付け足し、自分なら書き加えると推定できる項目を頭の中で展開して、止めた。自分で気づかなければ意味が無い。ノートを閉じて、降旗に返した。
 
 一通りファイルに目を通して、赤司が次に注意を向けたのは降旗の本棚だった。立ち上がってその前に立てば、雑誌だけでなく、バスケットボールの基本ルールの解説書から応急手当まで様々な本が並んでいた。降旗は、ひとつの事にのめりこむタイプなのだろうと赤司は分析した。
 
 本のいくつかは付箋や書き込みがなされており、そのメモもまた的を射たものばかりであった。中には選手以外の視点で初めて知ること、参考書に対する批判も書かれていた。
 
「監督の助言書いてたらなんか凄いことになってた」
 
本を読んでいると、逐一内容に触れた知識を口頭のみで説明をしてくれ、慌てて書き取っていた頃が懐かしかった。途中で選手よりマネージャーの方が向いているんじゃないかとも言われたが、あの頃はまだ選手でいたかった。
 
「マネージャーとして、その知識を活用してみないか?」
 
その言葉に、降旗はページを捲っていた手を止め、赤司を見上げた。
 
「使える奴が少なくて困っているんだ」
 
赤司は膝を折り、降旗に視線を合わせた。赤と金の双眸に見つめられ、降旗は忘れかけていた緊張感を戻してしまった。確かに知識を実践に回すのは大事なことだ。しかし相手にするのは名を持った選手たちであり、自分が言ったところで聞き入れてもらえないという不安もある。
 
 そして口から出た答えは。
 
「俺、で、よければ」
「決まりだ。早速明日から参加してもらおう」
 
机に置かれたのは、懐かしい入部届だった。更に付け加えるならば、その入部届けは降旗が名前と捺印するだけで受理まで終わる状態になっていた。つまり、書く前に既に受理の判が押されているのだ。
 
「サークルではないから、マネージャーでも大学の方に届け出る必要がある」
 
色々とつっこみたい所があったが、どこか嬉しそうな赤司を見ていると、あぁ、赤司だもんな、と納得してしまう自分がいた。
 
 
 
 
No.185
2012/08/17 (Fri) 16:36:52

 誠凜高校に入って、バスケットボールにのめり込んで、ふと何かから目が覚めたときには、降旗光樹は既に卒業し、都内の大学に進学していた。専攻はスポーツ健康学科。いわゆる未来のトレーナーを育てる学部である。
 何かで一番になったら、という言葉を目標に頑張っていたつもりが、いつの間にか皆で勝つために変化していた。そして現在、それが将来の夢へと繋がっていた。
 
 そんな中で、「キセキの世代」という選手を見られたことが自分の中で最も大きな事ではなかったか。思えば、彼らについて当時の自分はほとんど知らなかったと言い切れる。それは現在、テレビや新聞で活躍を見るたびに強く感じた。自分はこんな選手達と同世代で、戦ったのか、と。
 
 そして何を思ったか、今更になって降旗は雑誌を集め始めた。四年、五年前のものとなると見つけるのも苦労するが、幸いにも安価で提供する大型古本のチェーン店で見つけることができた。記事は一冊に留まらず、彼らが日本で活躍した六年間、さらに現在の活動に至るまで何件もの店舗を梯子してバックナンバーを集めた。雑誌自体の原価はそれなりだが、さすがチェーン店といったところで、一冊100円で手に入った。何をそんなに買い込んで、と最初は親に訝しがられた。多分今までに無いのめり込み様だから彼らも気になったのだろう。しかし降旗は意に介さない。雑誌のままでは嵩張るため、必要なページだけ切り抜き、ファイルに閉じていった。日付は幸いページ数の横に記されていたため間違えることは無かった。
 
 作業をしながら、何か熱烈なファンみたいだなぁ、と呟いたり、やっぱりあいつの記事無いや、と失笑したり。現在職業としてバスケットボールを続けているのは知っている限り、火神大我と青峰大輝の二人のみ。黄瀬涼太はモデルから俳優の道に進み、緑間真太郎は医学を志したと聞いた。県外の紫原敦と赤司征十郎に関しては、知り合いもいなかったため、何の情報も得られなかった。しかもどちらも去年の大会で記事が止まっていたことから、選手として活躍していないのは明らかである。二人の元チームメイトの黒子テツヤなら何か知っているかもしれない。そう思い立って、降旗はスマートフォンを手に取った。最近流行の型に機種変更したせいで今だ慣れないフリック操作を駆使してメールを作成した。
 
『赤司と紫原って今何どうしているか知ってる?』
 
そのまま送信したが、そのまま時刻に視線を移せば夜も深かった。黒子とは同じ大学のため、会ったときに教えてくれるかもしれない。返信があるとしたら夜が更けてからだろう。
 降旗は欠伸を一つした後、ベッドに潜った。
 
 
 
 
 何をどうしたら、こうなるのか。
 
 降旗は学生食堂で、食事がうまく喉を通らない事態に陥っていた。
 向かいに座るのは、黒子と。
 
「本当に気づいてなかったみたいですね」
「気づいていたら、メールなんて送らないだろう」
 
左様でございます、と降旗は目の前にいるもう一人の学生、深夜のメールで話題に上げた片方、赤司征十郎に心中で頭を下げた。まさか同じ学部、同じ学科だとは思いもしなかった。しかし考えてみれば、この大学のこの学部は、スポーツ界では指折りの地位を確立しており、降旗は必死の受験勉強が運よく実って、進学したのである。最も、訊けば赤司は推薦という枠で入ってきたわけだが。そして大学のバスケットボール部で主将を務めているとのこと。それを聞いて降旗は、入らなくて良かったと落ち着く自分は、まだ第一印象を引きずってしまっていると改めて認識した。
 
「高校は京都だったけど、実家は東京だし、大学はこっちの方が便利だからね」
 
赤司はコーヒーに口を付けた。
 
「紫原君も大学進学したそうです。何処、とは詳しく聞いていませんが」
 
よくお菓子の画像が送られてくるので、楽しんでいると思います。そう黒子は付け加えた。
 
「そう、なんだ」
 
彼なら即戦力だろうに。
 
「ところで、どうして急にそんなことを?」
「いや、えっと」
 
キセキの世代二人を前にして今更なことを話すのはどうかと思ったが、赤と僅かに色素の薄い橙の双眸から送られる視線が痛くて折れた。
 
「よくよく考えたら俺、キセキの世代ってよく知らなかったんだなって思って、それで雑誌を集めたら少しでも分かるかなって。青峰とか火神は今でも雑誌に載るけど、黄瀬や緑間は都内でちょくちょく話聞くけど、紫原と赤司は知らないなって思ったから」
「雑誌とは、また懐かしい物を」
「僕、あの時忘れられたんですよね」
 
黒子は未だに根に持っているようだ。
 
「その雑誌を借りてもいいかな」
 
赤司は空になったコーヒーカップをテーブルに静かに置いた。
 
「あー、キセキの記事だけファイルしちゃってる」
「読めれば問題ない」
 
他にも、何時からの記事があるとか、黒子以外のメンバー全員分あるのか、とか降旗は細部を尋ねられた。そこには疑問も残る。
 
「何で今更?」
 
すると、赤司と黒子は顔を見合わせた。
 
「実は受けるだけ受けて、僕たちがどう書かれていたのか読んでいない」
「読んだことがあるのは黄瀬君が持ってきたものぐらいですね、ファッション雑誌でしたが」
 
暗に、外聞より目の前のバスケ一筋であったと二人は口をそろえた。思わず賞賛する言葉が出たのは、降旗にとっては仕方の無いことであった。
 
「今度持ってくるよ」
 
何とか昼食を収め、軽く手を合わせる。
 
「今度の木曜日はあいているか?」
「あいてるけど」
 
理由を聞く前に、赤司が答えた。
 
「幾らファイリングされていても、それだけの量を持ってくるのは重い上に邪魔だろう」
「そうしてもらえるなら、ありがたいけど」
 
赤司の指摘するように、確かにファイルは重かった。
「なら、そのときに頼むよ」
「分かった」
 
木曜日、赤司と約束。忘れないようにその場でスマートフォンにメモを取った。講義後、16時、センタービル前。
 時計の表示に目を移せば、あと15分ほどで午後の講義が始まる。降旗の次の講義は学部の必修科目で、つまり、赤司も同じ講義である。
 
「早く片付けてきたらどうだい?」
「あ、うん」
 
空の食器が載ったトレーを持って、降旗は席を立った。黒子は自分のグラスのついでに赤司のコーヒーカップも引き受け、食器返却口へと向かった。
 
「普通に話せた…」
「学部の方で敬遠されがちのようで、寂しかったそうですよ」
 
食器を分類していた手が思わず止まった。
 
「マジで?」
「マジです」
 
横を見れば相変わらず表情に乏しい表情がそこにあった。更に視線を上へ、遠くへ移すと、こちらを見て立ち止まっている赤司も目に入った。目が合うなり動き出した彼に、降旗は小さく息をついた。
 
「何か、良いように使われそうな気がする」
 
そう言って駆け出した降旗に、黒子は苦笑するしかなかった。 
No.183
2012/06/27 (Wed) 17:38:44

櫂と三和明治時代パラレルかもしれません
続かない…
No.182
2012/06/27 (Wed) 17:36:54

三和くん店員妄想とレン様を出した買っただけですはい。
No.181
2012/06/27 (Wed) 17:32:11

高校生の日常ってこうかなと思い出しながら書いてみた平坦SS
定規はすみませんネタです
櫂君三和くんの高校生活をkwsk教えて欲しいです…
No.180
2012/06/27 (Wed) 17:25:50

CF!!VGのユニット小説、大君主と竜騎士のお話です。
うん、嵌るとは思っていました。YGOもBM師弟が好きなので…
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獅子えり
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自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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