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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/04/25 (Thu) 14:01:26

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No.183
2012/06/27 (Wed) 17:38:44

櫂と三和明治時代パラレルかもしれません
続かない…

 それは、幼い憧憬だったのかもしれない。
 「櫂」という姓の家に生まれたことを、幼いながらもトシキは恨んでいた。単純に退屈だった。窓の外を見れば、同じ年頃の男女が仲睦まじく遊び、語らっていた。片や自分はと言えば毎日机に向かって歴史を学び、武道を習い、芸術を嗜まされた。将来教養高い成年となり国に仕えるためなどと大人は豪語する。そんなこと言われても、二桁にも満たない年齢の子どもに理解できるはずがない。結局は自分たちの保身じゃないのか。どこかでそう感じていたが、表に出せるわけがない。いい成績を取れば褒めてもらえるのだ。つまらなくても、耐えるのに十分な理由になった。しかしふとした時にその感情は奥に下がり、もどかしい欲求が体を支配した。
 トシキの唯一の親類以外の知り合いは、現在の所、アイチだけであった。彼もまた「先導」の姓の家に生まれ、同じ境遇にあった。時折顔を見せては、どんなことを学んだとか、何を習ったとか、そんな話ばかりだった。
 アイチは女に間違えられるくらいの容姿をしていた。誘拐の対象になったことは数知れず。そのせいか外に出ることを躊躇うようになり、出かけるのも、この家に来るぐらいだという。来ても専ら、洋館なのに備えられた縁側に座って話すだけである。一歳下の彼はトシキにとっては弟のような存在で、よく面倒を見ていた。
 ある日、「三和」の継嗣がこの屋敷にやってくるという話を聞いた。「櫂」が士族からの華族であるのに対して、「三和」は生粋の公家からの華族であった。遡れば平安時代、なんて話も聞くが実際は誰も知らない。進みゆく欧米化に対しても、公家にしては考え方が柔軟な家であった。積極的に待降節や聖誕祭を祝ったのを写真で見た。飾り付けられた大きな樅の木を前に並ぶ人の中に、トシキは目を惹かれた。
 自分と同じくらいの子どもが、屈託のない笑顔を向けていた。いつも本心の見えない笑顔ばかり見ていたトシキにとって、衝撃だった。こんな笑い方があるのか。トシキは写真をそのまま、日記帳に挟んで引き出しに仕舞った。
 それを、トシキはアイチに見せた。
「綺麗な笑顔だね」
そう言って笑うアイチの顔は、初めて見た楽しそうな笑顔だった。
「今度、家にくるんだ」
「本当、僕も会えるかな」
二人はまだ見ぬ少年へ期待を抱いた。
 
 
 
 三和の本家は京都にあるのだが、東京へ学ぶためにやってきたという。
 ついにやってきたこの日。勉強を終えたトシキは待ちきれず玄関の影に立った。思っていた以上に自分は期待していたようだと第三者的に考えた。覗いて見れば、黒い服を着た男の集団の中、小さな影がちらちらと見えた。今時珍しい水干に身を包んでおり、いかにも公家出身というのを表していた。たぶん彼が継嗣なのだ。彼の後ろには袴を着た年配の男と着物の中年の女性が大きな鞄を持って立っていた。
「どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そんな挨拶が聞こえたのち、男女は門を抜けて行った。一人残った継嗣は、側近の後ろについた。そこで初めて子どもの顔が見えた。
 暖かそうな金色の髪は歩くたびに僅かに揺れた。灰色の大きな目は洋館が物珍しいのか忙しなく動き、周りを見回している。目でも周るんじゃないかと心配になるが、足取りはしっかりとしていた。
 すると、側近と目が合った。思わずどきりとして、トシキは影から出た。
「トシキ様、いらっしゃったのですか」
側近は驚く様子を見せるが、どうも演技が入っているように見えた。最初からいることを気付いていたらしい。トシキは正直に言った。
「気に、なったから」
じ、とトシキは三和の継嗣を見た。彼は首を傾げると、ふわりと笑った。
「おれ、三和タイシっていうんだ」
にこにこ、と効果音がついてもおかしくないくらい、屈託がなかった。それはまさに、あの写真で見た表情そのものだった。
「櫂、トシキ」
「よろしくな、トシキ!」
横に降りていた手はいつの間にかタイシに拾われ、暖かい両手に包まれていた。
 
[newpage]
 その瞬間、景色が離散し、暗い闇に落ちた。しかしそれも一瞬のことで、すぐに眩しさに苛まれた。
 横に転がって日差しから顔を背けて目を開けると、白いタイル調の壁にカーテンの色が反射していた。
「夢、か」
櫂はふらりと立ち上がり、時間を確認した。午前七時三十八分。起床には少々遅い時間だった。
 十年前以上の出来事を夢に見るとは思わなかった。それも、ほとんど現実に会ったことをそのまま。それほどに鮮明に覚えているのか。櫂は寝間着から普段着に着替えながら考えた。
 櫂の家に、三和はもういない。七年ほど前に実家へと帰って行ったのだ。朝食の席に姿を現さず、心配になって部屋を訪れてみればもぬけの殻で、何の前触れもなく、急に姿を消した。荷物も何も残っていない。
 かくいう櫂も、現在は実家を離れ、大学付近の借家に住んでいた。広くはないが近代的な様式で、一人という身分には十分な住まいだった。そもそも、朝夜の食事と寝るだけの家なのだ。
 昨晩の内に用意しておいた朝食に手を付け、必要な荷物を鞄に詰めて玄関に立つのに、三十分かからなかった。脇に置いてある写真立には、家族と撮ったものと、もう一枚、自分にしては珍しい笑みを浮かべた写真が置かれている。一緒に移っているのは、三和である。珍しく東京で雪が降った日に、庭で撮影したものだった。白黒だが、不思議と色が付いているように櫂には見えた。
 酸化しないようにその写真を倒して、櫂は家を出た。
 
 
 
 大学も毎日が退屈だった。家で散々叩き込まれたことの繰り返しで、新しく聞いたところだけを書き取る作業。教授は熱弁をふるうが、一部の狂信的な生徒を除いて聞いている者はほとんどいない。他の科目の教科図書を膝に乗せて、予習や復習をしている者が多かった。隣に座る者に至っては、完全に眠りこけていた。何も言わないのは、結局聞かせる前提で喋っていないからだ。興味のある奴だけ付いてこい。それ以外は黙っていろ。
 授業終了の鐘が響くと、教授は話しを切り上げ、皆一斉に立ち上がり、次の教室へ移動を始めた。
 櫂は隣の席の生徒の肩を叩いた。
「おい、雀ヶ森」
しかし、返事が返ってくることはない。だが身じろぎをした。起きるまであと一歩。
「レン。移動するぞ」
「う・・・」
ようやく雀ヶ森レンは覚醒した。半眼の状態で誰もいなくなった教室を見るなり、慌てて立ち上がった。
「もう講義終わっていたのですか!」
「ついさっきな」
櫂は次の時間は何も入っていないが、レンは第二外国語が入っていた。まだ少数しか受けていない英語なので、欠席すると余計目立つ。レンは慌てて机の上のものをひっつかんで、鞄を肩に掛けると、長い裾を翻して教室を出て行った。
「櫂、あとでまた!」
それを見送ってから、櫂は立ち上がった。レンの奴、途中で躓いたりしていなければいいが。そんなことを思いながら。
 昼食時間すぎた三時間目。今日は珍しく、軍事演習の視察の授業があった。将来を背負うものとして、軍の体制を見学するというものだが、結局のところは、軍と政府の関係を密接なものにするための講義であった。実際、現在の政府高官の中には元軍人という文民が入っている。
 暗い色のつなぎに身を包んだ同世代が、竹刀を振り回していたり、トラックを走ったり、草叢を匍匐前進していた。身体や服が汚れるのを気にしていてはやっていけない。箱入りの生徒たちにとっては見るに堪えない現場であった。皆口々に小さく罵るが、幸い教官の大音量の怒声で士官候補たちに届くことはなかった。
「彼らが身を賭して頑張っているのですから、僕たちもちゃんとこの国を良い方向に持っていかなければいけませんね」
そんなことを言ったのはレンだけだった。彼はこの中で唯一、都内に本家を持たない華族だった。
 櫂は静かに彼らに視線を向けた。学んだこともないのに講義を聞かない生徒よりは、真面目に訓練に従事する士官候補生の方がましな気がした。
 一通りの視察が終わったところで、生徒を交えた懇親会が開かれた。壮年の軍師たちは手馴れているようで、世辞を巧みに操って生徒たちの懐に入り込んでいった。どんな場所に行っても、このようなやり取りは行われるものなのかと、櫂は心中で舌打ちし、適当な理由付けをして早々に会場から離れた。櫂家の継嗣と紹介を聞くや否や、大勢の軍人たちに囲まれた。どの人間も取り入ろうとする魂胆が見えている。当たり前と分かっていながらも気持ち悪さが残る。利権のためだけの関係など、脆く壊れやすい。
 ぼんやりとしてどれだけ経っただろうか。相変わらず懇親会の喧騒は小さいながらも耳に届くが、それ以上に気を惹かれたものがあった。
 校舎から会場へと続く渡り廊下進んでいく青年を、櫂は思わず目で追った。そして気付けば立ち上がって駆け出していた。
「うわっ」
腕を惹かれた青年は危うくバランスを崩すかというところで踏みとどまって、振り返った。
「何だよ、いきなり・・・」
櫂はじっとその顔を見た。自分を映しているのは、東洋人に少ない灰色の目。帽子からわずかに見えるのは、金色の髪。
「お前、三和か?」
青年は櫂を一瞬怪しい目で見たが、その容姿に覚えがあるのか、すぐに思い当たった名前を言った。
「櫂?」
返事に一つ頷けば、青年は途端に笑顔になり、櫂の肩に手を置いた。
「うっわ、久しぶりじゃねーか!」
お前大学生になったんだな。三和は櫂の格好を見て言った。ということは今日は視察で来ているのか、とも理解して懇親会会場の方へ案内しようとしたが、断られた。逃げてきたと言われたら、無理に帰すのも難だった。立ち話も疲れるので、二人は中庭に置かれたベンチに腰を下ろした。
「どうして軍隊なんかに」
「話せば事情は長いんだけど」
そう前置きをして、三和は簡潔に語った。
 七年前、父が危篤になり、三和は当主即位のために帰郷せざるを得なくなった。そして帰ったまでは良かったが、父は亡くなった。そして当主に就くと思われた矢先、自分の若年がたたった。親戚たちの間で次期当主が姉の許嫁に決まってしまっていた。もちろん何人かは反対した。しかし許嫁は言葉巧みに親戚、重臣たちを説得し、満場一致で党首の座に就いた。そして三和に突きつけられた条件は、今後一切、本家に立ち入ることを禁止された。
「まあ、姉ちゃんが元気ならおれはそれでいいんだ」
身を隠さなければいけないことになったにしたって、七年間の音信不通は長い。
「お前は七年間、どこにいたんだ」
「海の向こう」
三和の口から出た言葉に、櫂は驚いた。自分もまだいったことがない世界だった。
「ほら、おれ櫂の所で勉強したじゃん。それで学あったから試験主席で通ってさ、これがまた簡単な試験で、そしたら軍事を学んで来いってあれよあれよと飛ばされて、気付いたら厳つい男たちの訓練見てた」
海むこうの軍人って本当にすごいんだ、と身振り手振りを使う三和の話は、どんな講義よりも面白く、容易に想像がついた。
「でもあれをおれたちにやれって言うのは正直つらいものがあると思う。なんせ身長がけた違いだからな」
腕を組んで、三和は一人何度も頷きながら言った。
「櫂も背高い方だけどさ、向こうじゃ小柄扱いだぜ。おれなんか女に間違えられて本当腹立った」
しかも金髪だって揶揄されたし。更に付け足して、アイチは絶対行っちゃいけないからなと三和は言った。確かに悲惨な目に遭うのがイメージできてしまう。幸いアイチは軍事ではなく憲法や文学の方に進んでいるので、その心配はないだろう。そう伝えれば、三和は安心した。
「ところで、訓練の中にお前の姿がなかったが」
「そりゃあ、おれ一応尉官だから」
その言葉に、櫂は驚いた。
「お前が?」
「失礼な奴だな、これでも中尉なんだぜ、おれ」
三和は腕を組んで鼻を鳴らした。思わずこんな上官を持った部下を憐れみかけたが、下手に厭らしい上官よりはこんな風に真っ直ぐな奴の方が、心からついて行く人間が多いんじゃないかと思った。
 すると、懇親会会場からぞろぞろと人が出てきた。どうやらお開きの様だ。
「お前も戻らないとな」
帽子を深く被り直し、三和は立ち上がった。櫂も立ち上がり、集団の方へと足先を向けた。踏み出す前に、一度三和の方を振り返った。
「今、どこに住んでるんだ?」
「普段は寄宿舎だけど、休みの時は『とくら』にいるぜ」
あの大学近くの茶屋な。そう言い残して、三和は軽く手を振って舎へと駆けて行った。その姿を見送って、櫂は生徒の集団に混ざった。 
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獅子えり
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自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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