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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
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No.185
2012/08/17 (Fri) 16:36:52

 誠凜高校に入って、バスケットボールにのめり込んで、ふと何かから目が覚めたときには、降旗光樹は既に卒業し、都内の大学に進学していた。専攻はスポーツ健康学科。いわゆる未来のトレーナーを育てる学部である。
 何かで一番になったら、という言葉を目標に頑張っていたつもりが、いつの間にか皆で勝つために変化していた。そして現在、それが将来の夢へと繋がっていた。
 
 そんな中で、「キセキの世代」という選手を見られたことが自分の中で最も大きな事ではなかったか。思えば、彼らについて当時の自分はほとんど知らなかったと言い切れる。それは現在、テレビや新聞で活躍を見るたびに強く感じた。自分はこんな選手達と同世代で、戦ったのか、と。
 
 そして何を思ったか、今更になって降旗は雑誌を集め始めた。四年、五年前のものとなると見つけるのも苦労するが、幸いにも安価で提供する大型古本のチェーン店で見つけることができた。記事は一冊に留まらず、彼らが日本で活躍した六年間、さらに現在の活動に至るまで何件もの店舗を梯子してバックナンバーを集めた。雑誌自体の原価はそれなりだが、さすがチェーン店といったところで、一冊100円で手に入った。何をそんなに買い込んで、と最初は親に訝しがられた。多分今までに無いのめり込み様だから彼らも気になったのだろう。しかし降旗は意に介さない。雑誌のままでは嵩張るため、必要なページだけ切り抜き、ファイルに閉じていった。日付は幸いページ数の横に記されていたため間違えることは無かった。
 
 作業をしながら、何か熱烈なファンみたいだなぁ、と呟いたり、やっぱりあいつの記事無いや、と失笑したり。現在職業としてバスケットボールを続けているのは知っている限り、火神大我と青峰大輝の二人のみ。黄瀬涼太はモデルから俳優の道に進み、緑間真太郎は医学を志したと聞いた。県外の紫原敦と赤司征十郎に関しては、知り合いもいなかったため、何の情報も得られなかった。しかもどちらも去年の大会で記事が止まっていたことから、選手として活躍していないのは明らかである。二人の元チームメイトの黒子テツヤなら何か知っているかもしれない。そう思い立って、降旗はスマートフォンを手に取った。最近流行の型に機種変更したせいで今だ慣れないフリック操作を駆使してメールを作成した。
 
『赤司と紫原って今何どうしているか知ってる?』
 
そのまま送信したが、そのまま時刻に視線を移せば夜も深かった。黒子とは同じ大学のため、会ったときに教えてくれるかもしれない。返信があるとしたら夜が更けてからだろう。
 降旗は欠伸を一つした後、ベッドに潜った。
 
 
 
 
 何をどうしたら、こうなるのか。
 
 降旗は学生食堂で、食事がうまく喉を通らない事態に陥っていた。
 向かいに座るのは、黒子と。
 
「本当に気づいてなかったみたいですね」
「気づいていたら、メールなんて送らないだろう」
 
左様でございます、と降旗は目の前にいるもう一人の学生、深夜のメールで話題に上げた片方、赤司征十郎に心中で頭を下げた。まさか同じ学部、同じ学科だとは思いもしなかった。しかし考えてみれば、この大学のこの学部は、スポーツ界では指折りの地位を確立しており、降旗は必死の受験勉強が運よく実って、進学したのである。最も、訊けば赤司は推薦という枠で入ってきたわけだが。そして大学のバスケットボール部で主将を務めているとのこと。それを聞いて降旗は、入らなくて良かったと落ち着く自分は、まだ第一印象を引きずってしまっていると改めて認識した。
 
「高校は京都だったけど、実家は東京だし、大学はこっちの方が便利だからね」
 
赤司はコーヒーに口を付けた。
 
「紫原君も大学進学したそうです。何処、とは詳しく聞いていませんが」
 
よくお菓子の画像が送られてくるので、楽しんでいると思います。そう黒子は付け加えた。
 
「そう、なんだ」
 
彼なら即戦力だろうに。
 
「ところで、どうして急にそんなことを?」
「いや、えっと」
 
キセキの世代二人を前にして今更なことを話すのはどうかと思ったが、赤と僅かに色素の薄い橙の双眸から送られる視線が痛くて折れた。
 
「よくよく考えたら俺、キセキの世代ってよく知らなかったんだなって思って、それで雑誌を集めたら少しでも分かるかなって。青峰とか火神は今でも雑誌に載るけど、黄瀬や緑間は都内でちょくちょく話聞くけど、紫原と赤司は知らないなって思ったから」
「雑誌とは、また懐かしい物を」
「僕、あの時忘れられたんですよね」
 
黒子は未だに根に持っているようだ。
 
「その雑誌を借りてもいいかな」
 
赤司は空になったコーヒーカップをテーブルに静かに置いた。
 
「あー、キセキの記事だけファイルしちゃってる」
「読めれば問題ない」
 
他にも、何時からの記事があるとか、黒子以外のメンバー全員分あるのか、とか降旗は細部を尋ねられた。そこには疑問も残る。
 
「何で今更?」
 
すると、赤司と黒子は顔を見合わせた。
 
「実は受けるだけ受けて、僕たちがどう書かれていたのか読んでいない」
「読んだことがあるのは黄瀬君が持ってきたものぐらいですね、ファッション雑誌でしたが」
 
暗に、外聞より目の前のバスケ一筋であったと二人は口をそろえた。思わず賞賛する言葉が出たのは、降旗にとっては仕方の無いことであった。
 
「今度持ってくるよ」
 
何とか昼食を収め、軽く手を合わせる。
 
「今度の木曜日はあいているか?」
「あいてるけど」
 
理由を聞く前に、赤司が答えた。
 
「幾らファイリングされていても、それだけの量を持ってくるのは重い上に邪魔だろう」
「そうしてもらえるなら、ありがたいけど」
 
赤司の指摘するように、確かにファイルは重かった。
「なら、そのときに頼むよ」
「分かった」
 
木曜日、赤司と約束。忘れないようにその場でスマートフォンにメモを取った。講義後、16時、センタービル前。
 時計の表示に目を移せば、あと15分ほどで午後の講義が始まる。降旗の次の講義は学部の必修科目で、つまり、赤司も同じ講義である。
 
「早く片付けてきたらどうだい?」
「あ、うん」
 
空の食器が載ったトレーを持って、降旗は席を立った。黒子は自分のグラスのついでに赤司のコーヒーカップも引き受け、食器返却口へと向かった。
 
「普通に話せた…」
「学部の方で敬遠されがちのようで、寂しかったそうですよ」
 
食器を分類していた手が思わず止まった。
 
「マジで?」
「マジです」
 
横を見れば相変わらず表情に乏しい表情がそこにあった。更に視線を上へ、遠くへ移すと、こちらを見て立ち止まっている赤司も目に入った。目が合うなり動き出した彼に、降旗は小さく息をついた。
 
「何か、良いように使われそうな気がする」
 
そう言って駆け出した降旗に、黒子は苦笑するしかなかった。 
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獅子えり
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女性
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大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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