日常/感想/二次創作小説(ここ重要)。小説へはカテゴリーの一覧からばびゅっと飛んでください。取扱いCPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/DFF:7810等々。DRRRは情報屋左推奨中。逆転OK。派生もOK。やっぱり派生情報屋左推奨。TV小説漫画DVD所有。APHは東西好きすぎて独語専攻中という。漫画全巻CD原作柄所持TVは二期迄。DFFはもう天気組愛してます。初代は別名KH組。DFF/012所持。究極は012の白い方まだない。原作は7のみ。コンピは把握。81012は動画や攻略wikiで勉強。ULTIMANIA好きすぎてゲームないのに買う。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.108
2012/01/21 (Sat) 00:12:39
DFF小説の一覧です。
新しい記事には*が付きます。
FFキャラクター設定
SS:7810メインに12とか7’等雑多に参戦。
Can you eat them?:7+8
Unreliable real:7+8+etc.
Addiction:7+7'+8+10
Back to the past:7+8
Visiting:7+8+10+CC7'+CCZ
Battle in the Dark World:7+8+7'
This is a type of Revival:7+Z(+2410)
Go home with Stopping:8+10+12etc.
Unreliable Mission:7+8+etc.
As a Player,as a...:10+10'+etc.
Go home with Stopping:12+8+10+etc.
Setting for School:学パロ設定
Hello,Future 1:Request 1/7追加
One Day:7+8+8''
Unreliable Summon:7+8*
Logs1:Omnibus
感想日記:急に止まったり、進んだりする。
DFF編
一日目 二日目 三日目 四日目
DdFF編
一日目 二日目
CCFFVII
第一回 第二回 第三回 第四回*
他:いろいろ小噺とかネタ
参戦決まると英雄g(ry:7(+8+10)
舞台裏1:学パロにおけるクラウドの過去について少し
新しい記事には*が付きます。
FFキャラクター設定
SS:7810メインに12とか7’等雑多に参戦。
Can you eat them?:7+8
Unreliable real:7+8+etc.
Addiction:7+7'+8+10
Back to the past:7+8
Visiting:7+8+10+CC7'+CCZ
Battle in the Dark World:7+8+7'
This is a type of Revival:7+Z(+2410)
Go home with Stopping:8+10+12etc.
Unreliable Mission:7+8+etc.
As a Player,as a...:10+10'+etc.
Go home with Stopping:12+8+10+etc.
Setting for School:学パロ設定
Hello,Future 1:Request 1/7追加
One Day:7+8+8''
Unreliable Summon:7+8*
Logs1:Omnibus
感想日記:急に止まったり、進んだりする。
DFF編
一日目 二日目 三日目 四日目
DdFF編
一日目 二日目
CCFFVII
第一回 第二回 第三回 第四回*
他:いろいろ小噺とかネタ
参戦決まると英雄g(ry:7(+8+10)
舞台裏1:学パロにおけるクラウドの過去について少し
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No.170
2012/01/21 (Sat) 00:10:30
というわけで、第四回をなんと五か月ぶりほどに更新します。
とりあえずLv.47でジェネシスに挑みました。
そして私、かなりの無茶振りをザックスに強いてしまいました。ごめんよザックス……
コマンドがですね、
「たたかう」
「バリア」
「マバリア」
「ケアルが」
これだけでした。攻撃魔法一切無し!
しかしザックス耐えました。究極本のおかげでジェネシス第一回からのダメージはほとんどなく、コピーにあえぎました。くっそ魔法装備すべきだったし。
ジェネシス二回目はさっくり行けました。
ひたすら背後に回って斬る斬る斬るでした。
で、エンディングに向けての対新羅軍耐久戦。
やばいこれ演出神だろ……(゜Д゜;)
涙は出なかったけど、正直つらいものがあった……
正直EDは観てません。PSP妹に渡して見せたので。
そして現在は二巡目に入っております。
Lv.47でのスタートです。
妹曰く、「安心のステータス」
そりゃあ序盤じゃ一撃で倒れるさモブ敵は。
今は進んで現在バノーラ村一回目。ジェネシスと遭遇する手前です。
ひたすらミッションやりまくってる自分。
あとフェニックスの尾を集めてる。
そのためにウータイの敵14体倒してさよならしといた。
究極本最高。
中古で750円。
対応してくれた店員がまさかの同級生かもしれない……
名前と顔に見覚えがあった。
よし、とりあえず遭遇して究極本沿いに進むぞ。
とりあえず、18歳ザックスはかわいい。
とりあえずLv.47でジェネシスに挑みました。
そして私、かなりの無茶振りをザックスに強いてしまいました。ごめんよザックス……
コマンドがですね、
「たたかう」
「バリア」
「マバリア」
「ケアルが」
これだけでした。攻撃魔法一切無し!
しかしザックス耐えました。究極本のおかげでジェネシス第一回からのダメージはほとんどなく、コピーにあえぎました。くっそ魔法装備すべきだったし。
ジェネシス二回目はさっくり行けました。
ひたすら背後に回って斬る斬る斬るでした。
で、エンディングに向けての対新羅軍耐久戦。
やばいこれ演出神だろ……(゜Д゜;)
涙は出なかったけど、正直つらいものがあった……
正直EDは観てません。PSP妹に渡して見せたので。
そして現在は二巡目に入っております。
Lv.47でのスタートです。
妹曰く、「安心のステータス」
そりゃあ序盤じゃ一撃で倒れるさモブ敵は。
今は進んで現在バノーラ村一回目。ジェネシスと遭遇する手前です。
ひたすらミッションやりまくってる自分。
あとフェニックスの尾を集めてる。
そのためにウータイの敵14体倒してさよならしといた。
究極本最高。
中古で750円。
対応してくれた店員がまさかの同級生かもしれない……
名前と顔に見覚えがあった。
よし、とりあえず遭遇して究極本沿いに進むぞ。
とりあえず、18歳ザックスはかわいい。
No.169
2012/01/20 (Fri) 23:58:10
数か月ぶりの更新。スコールinFF7の続編です。
とりあえず前振りが終わり、予定ではここからあと二話で終わる予定です。
あくまで予定なので、一話で終わる可能性もあります。
スコクラに見えますが、どちらでもない気持ちで書いているつもりです。
とりあえず前振りが終わり、予定ではここからあと二話で終わる予定です。
あくまで予定なので、一話で終わる可能性もあります。
スコクラに見えますが、どちらでもない気持ちで書いているつもりです。
No.168
2012/01/07 (Sat) 23:25:02
なんかもう自分のサイト統廃合を繰り返してます。
一つのサイトに並べれば、もういいや、って思うようになりました。
折角なのでサイト名を四字熟語の方にしました。
思ったほどマイナーでは無いようなので。
このサイト名はもともと日記のタイトルだったのです。
この時復活に嵌ってたもんだから、人気の方とその宿敵が入ってる四字熟語探したら見事に出てきました。
本当はなんか、雨と雲ですごい故事成語か会った気がしないでもない。
どこかの雲山同盟サイトで見て感動した。こんな言葉があるのか!って。
そのつながりでいえば「肚」って字も、ね……
乙ゲーさえもこう見てしまう自分がww
薄桜鬼も見てますよ。フィルター越しに。
では、寒中となりましたが、本年もよろしくお願いします。
一つのサイトに並べれば、もういいや、って思うようになりました。
折角なのでサイト名を四字熟語の方にしました。
思ったほどマイナーでは無いようなので。
このサイト名はもともと日記のタイトルだったのです。
この時復活に嵌ってたもんだから、人気の方とその宿敵が入ってる四字熟語探したら見事に出てきました。
本当はなんか、雨と雲ですごい故事成語か会った気がしないでもない。
どこかの雲山同盟サイトで見て感動した。こんな言葉があるのか!って。
そのつながりでいえば「肚」って字も、ね……
乙ゲーさえもこう見てしまう自分がww
薄桜鬼も見てますよ。フィルター越しに。
では、寒中となりましたが、本年もよろしくお願いします。
No.142
2012/01/07 (Sat) 22:53:11
No.143
2012/01/07 (Sat) 22:51:11
No.167
2012/01/07 (Sat) 22:42:54
家庭教師臨也×高校生静雄のパラレル話です。
もともとはコピー本収録用に書いたけれど、パラレルが苦手な人もいるからと思い下げたけれどもったいなくて転用。初の長編完結チャレンジ!
高校三年生。進学を考える誰もが大学受験という大きな壁にぶつかってしまうこの時期に、平和島静雄は母親の薦めもあって、春から家庭教師にお世話になることになった。と言っても、静雄は、実のところ、それほど頭は悪くない。むしろ良いといってもいい方である。なぜなら、彼は口下手であるがゆえ友人がなかなか作れず、部活にも入らず、休み時間や自宅にいる時間の大半を勉強に回していたからだ。おかげでクラス順位が下位を争うようなことはなかったし、学年順位も常に上位にいた。本当のところ家庭教師など頼まなくても勉強できるだけの器量を持ち合わせていたが、それでも従事したのは、ひとえに母親を安心させるためでもあった。
静雄は確かに学力面では問題はない。問題なのは学生としての生活の方にあった。
金髪というだけで、人より少し強い力を持っているというだけで、その目つきだけで、学内はおろか学外からも不良たちの根も葉もない因縁に付き合わされてきた。また、それをことごとく力でねじ伏せてきたことで、彼らと同等の『不良』というレッテルを貼られてしまっていたのである。そう見られることよりも静雄にとって辛かったのは、そのせいで周りの人々が遠ざかっていったことの方であった。
そして今日は、静雄を担当する物好きな(静雄視点)家庭教師が初めて家に来る日であった。静雄は物の少ない自室をとりあえず掃除して体裁を整え、椅子を余分に一つ置き、時間内に終わらせようと考えている勉強道具を机の上に用意して待つこと数分。家のインターホンが鳴った。インターホン越しの母親の応答から、来たのがその家庭教師だと分かり、静雄は少し緊張した。
部屋と廊下を隔てる壁一枚向こうで音が聞こえた。言葉という形は持っておらずとも、その低いトーンから少なくとも家庭教師が男であることが分かった。そして次第に足音が近づき、それは静雄の部屋のドアの前で止まった。二度ほどノックされたので、「どうぞ」と静雄は言った。
ドアが開いた。
「こんにちは」
入ってきたのは二十代の若い男だった。秀麗な顔に人の良さそうな笑顔を浮かべていた。これが女子ならば、普通の一般の男子なら、なにも思わない。ただのかっこいい家庭教師。それですまされただろう。
「…うも」
しかし静雄は違った。散々不良たちとかかわってきたためか、他人の態度、感情、考えを読むのが得意になっていた。今もその思考が働いているが、彼の笑顔に安心どころか、恐怖に似た不安のようなものを感じた。この男と三時間を週三日、一年間過ごさなくてはいけないのかと思うと、背筋が寒くなった。
青年は静雄が用意しておいた椅子に座った。その動作さえも、どこか洗練されたように見えるのはきっと生まれがよいのだろうと静雄は思った。
「まず自己紹介からかな」
青年は提げていた鞄からノートを一冊取り出した。それをぱらぱらとめくり『平和島静雄』と達筆な字で書いてあるページを開いた。そしてブランド名が焼き押しされた革のペンケースからどこにでも売っているボールペンを一本取り出した。
「一方的に話すだけじゃつまらないから、お互いに質問形式にしてもいい?」
俺も君のこと知りたいから。
その提案に静雄は賛成した。ルーズリーフを一枚用意し、ボールペンを持った。しかし青年の名前を書こうとして手が止まった。家庭教師を頼んだとは聞いたが、肝心の名前を、静雄は母親から聞きそびれてしまっていた。
「俺は、オリハライザヤ」
そう言われ、静雄は手を動かした。姓は書けたが、名前の漢字が分からなかった。当て字であることは予想できたのだが、『イザヤ』と当てられる字がない。イザヤと言えば、あの聖書に出てくる預言者のことが頭に浮かんだが、特に宗教に興味もなければ彼が何をしたかも知らなかったので、聖書にいる人物で考えは終わった。
「…名前は」
「面するって意味の臨むに、なりって読む也を書くよ」
青年、折原臨也はボールペンで宙に文字を書いた。それをまねて紙に書き、静雄は改めて名前を見る。
『折原臨也』
変わった名前だなあと思った。
「じゃ、質問に入ろうか」
臨也は椅子を回して静雄の方を向いた。それにならって静雄も身体を向け、少し姿勢をただした。
「まずは俺から。志望大学は?」
「…特にないです」
「そう?」
『特になし』と、読みやすい字で書かれた。将来何がしたいかとか、何を学びたいとか、静雄は全く考えを持っていなかった。ただ漠然と大学進学の道を選んでいた。大学と聞いてふと気になったのは。
「折原さんはどこを卒業したんですか?」
静雄も問いかけた。広告などではよく書かれているが、件の如く、静雄は何も知らない。
「T大、って言えたらカッコイイだろうけど、まあそこそこいい大学は出たよ」
明確な答えが返ってくると思っていた静雄は少し止まった。結局どこの大学なのか。そこを尋ねたかったのだが別に詮索する気はなかった。静雄は臨也が話した通り、『中堅大学卒業』と書いた。
「苦手な教科は?」
「特にないです」
静雄は即答した。どの教科にも一長一短があるので好きな教科も嫌いな教科もなかった。強いて言えば音楽と美術が苦手だったが、芸術系の大学に行く気はないので問題はないだろう、と静雄は思った。
「すごいね、オールマイティだなんて」
俺には到底できなかったよ、と両手を広げて大げさに臨也は言った。
「あったんですか?嫌いな教科」
そう尋ねると、臨也は大きく頷いた。意外だった。
「文系の科目とかあんまり好きじゃなかったなぁ。日本史とかどうして過ぎ去った時代とか日本社会の失敗を学ばなくちゃいけないんだろうって。今だに繰り返したりしているんだから無駄じゃないとか思わない?」
日本史から始まった臨也の苦手論、と言うよりもその教科に対する不満を、現代文古文漢文世界史など多岐にわたって静雄は聞くことになった。その内容は静雄も納得できる部分もあれば、そんなことと言うような些細なことまで様々だった。しかし文系科目の中で唯一倫理は好きだったようで、帰納法やイデア論は楽しかったと臨也は言った。
「あ、でもちゃんと文系の質問も受け付けるから大丈夫だよ」
多分この人に『できない』科目はなかったのだろう。静雄は頷くと同時に、そう思った。
その後も趣味や特技、好きなもの嫌いなものその他について質問しあった。途中好きな人はいるのかと個人的な質問を聞かれたが、その質問に答える必要性を感じなかった静雄は、答えなかった。
「さて、質問はこれくらいにして、勉強しようか」
「はい」
静雄は臨也について書き留めたメモを見返した。
『 折原臨也
中堅大学卒業。文系科目が嫌い。(できないわけじゃない)二十三歳。
好き 自分の気に入った物すべて
嫌い 自分の気に入らないものすべて
資格 英検一級、漢検準一級、数検準一級、第一種高等教育教員免許(英語、地歴、数学)他
趣味 人間観察、勉強
特技 パルクール、ロシア語 』
資格が多いのは臨也曰く暇だったからだそうだ。教員免許はたまたま大学の課程で取れるということで取得した。他にもロシア語検定などあまり知られていないものも持っていた。特技のパルクールは何なのかと尋ねれば、必要に迫られて習得しただけで特に意味はないよと臨也は答えた。静雄はその必要に迫られてというところが聞きたかった。何故壁などの障害物をよじ登るマイナーな競技を身につける必要があったのかと。そもそもこのメモを見て、折原臨也の何が分かるのか。何も分からない。これをやる必要はなかったのではないかと、静雄は思った。
「あ、あと俺のこと名前で呼んでくれてかまわないよ」
『折原さん』なんて呼ばれるのは気持ち悪いから。そう言われたが、静雄は呼び方を変えなかった。
「先生ですから」
「真面目だね」
臨也はくすくすと笑い、ボールペンをノートに挟んで膝の上に置いた。
「今日は何をやる予定?」
「数学です」
静雄は学校の指定で買った問題集と専用に用意したノートを準備した。
「分からないところがあったらいつでも言ってね」
その言葉に静雄は一つ頷いて、問題に取り掛かった。
勉強中は気持ち悪いくらいに静かで、壁にかけていた時計の秒針の音が大きく聞こえた。静雄はいつも音楽を流しながら一人で勉強をしていたため、『折原臨也』という他人がいる状況は慣れないものだった。
問題集を進めいていく中で、静雄は幾つか解けない問題にぶつかった。いつでも、とは言われたがどのタイミングで聞けばいいのか悩んでいると、臨也の方がその様子に気がついて声をかけた。
「どこか躓いた?」
「…この問題が」
静雄は問題を指した。臨也は椅子から立ちあがり、静雄に近づいた。そして問題を見て三秒。
「…あぁ、これはね」
臨也は静雄の手からシャープペンをとり、書きかけの解答の横に綺麗な字で考え方を澱みなく書いていった。
「!」
臨也が問題をさらっと解いてしまったことよりも、背後から被さるように問題をのぞきこんできたことの方に、静雄は驚いていた。
――― …近い
ちらりと視線を横に移せば、臨也の整った顔が近くにあった。色が白いとか睫毛が長いとか香水の匂いがするとか色々気になったが、一番静雄の気を引いたのは赤い虹彩だった。滅多にこんな色の人はいないだろう。黒に近い赤色で、何か惹かれるものがあった。
「そんなに見つめられると恥ずかしいなぁ」
そう話しかけられ、ふと我に返った静雄はいつの間にか臨也と至近距離で顔を合わせていたことに気づき、あわてて上体を後ろに反らした。
「えっ!あ、すみません」
「別に気にしてないよ」
そう言って笑う臨也を見て、静雄は羞恥で顔を赤くした。警戒しようとしていたはずなのに、いつの間にか自分の方から近づいてしまっていた。そのことに気がついた静雄は両手で頬を軽く叩き自身を戒め、そして気を取り直した。一方一通りの説明を書き終えた臨也はまた椅子に座り、ノートに記録を取り始めた。
静雄はノートに書かれた考え方を読んだ。静雄が躓いた問題は、確立漸化式とよばれる問題の類だった。臨也の書いた解説と図は理解しやすく、綺麗にまとまっていた。
――― 中堅大学とか、嘘だろ…
静雄は肩越しに、疑わしい目で臨也の方を見た。しかし目が合い、さっと、手元に視線を戻した。
――― 可愛いなぁ
気を取り直そうとしている静雄の様子を見て、臨也は思った。その後目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。
実のところ、臨也の本職は家庭教師ではない。『情報屋』という有形無実の仕事の方が本職であった。家庭教師をやっているのは自分の教養を保つための手段にすぎなかった。静雄を選んだのは、実は臨也を指名してきた人数の多さから抽選となり、適当に書類を引っこ抜いた結果静雄が当たったという偶然の機会であった。いつもどういう運命か女子生徒ばかりを見ていた臨也にとって平和島静雄という男子生徒はひどく新鮮に目に映った。自分を選んだ平和島静雄とは一体どういう男なのか。そんな興味が頭に浮かんでいた。
『平和島静雄』に関する情報は驚くほど速く、大量に、詳細に集まった。しかし、どれも似たような内容であった。『池袋最強』『自動喧嘩人形』等々、挙句『化け物』。いったいどんな巨体の持ち主なのか。はたまた不良なのか。正直面倒見るの嫌だなあと思っていた矢先、実際見てどうだろうか。臨也にしてみれば不良どころかただの純粋すぎる男子高校生にしか見えなかった。金髪というのは年齢もあるだろう。顔もその辺のアイドルの顔より綺麗で、喧嘩をしてばかりいるという割に怪我の跡ひとつ無ければ、言葉遣いや性格、態度にも問題がなかった。確か弟が俳優だったかなと臨也は一言付け加えておいた。とにかく自分の描いた人物像は間違いも甚だしい馬鹿げた偶像となった。だが人は見かけで判断できないということは、もはや情報屋という仕事の中では常であった。こんな細い体格をしていても、そこらの不良など本当に一蹴してしまうのではないかと疑ってしまう。
再び勉強に集中し始めた静雄の背中を見ながら、臨也は勉強とかけ離れた別のことを考えていた。色白の肌、鎖骨の浮き出た首元、細い腰。臨也と同じような黒いVネックのシャツを着ているため肌の白さが余計に目立ち、臨也を危険極まりない思考に押しやる。これだけ容姿が良いのだから女の一人や二人いるのかと思えばどうやらそうではないらしいことが分かった。質問にこそ答えなかったが、明らかに付き合ったことはおろか、世間話をしたこともそうないことが見て取れた。彼は面白いのだろうか。臨也は考える。そういった趣味を持ち合わせているのかと問われれば臨也は否と答えるが、自分が気に入ったものを愛でるのは当然のことであり、臨也のものはそれが人の、同性にも当てはまるというだけのことである。しかしそれは少し、いやかなりねじ曲がった、そういった趣味に近い愛で方であるが。
――― あぁ、平和島静雄というこの青年を!
そう心のうちで叫んだ瞬間、静雄が臨也を振り返った。
「何か言ったか?」
「ん?何も言ってないよ」
「そうか」
何か納得できていない表情のまま、静雄は視線をノートに戻した。
心の中で叫ぶ分には罪にはならない。成年という壁は意外にも高いものであった。臨也は一人思った。
三時間が経ち、臨也は筆記用具やノートなどを鞄の中にしまった。静雄の方もきりがついたので、問題集とノートを閉じ、机の隅にまとめた。
「あと聞いておきたかった問題はあった?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
そう言って頭を少し下げた静雄を見て、臨也は苦笑した。
「そんなに感謝されるほど教えてないよ。質問だって結局あれだけだったし、何で家庭教師なんて取ったのかなってこっちが疑問に思うくらいだったよ」
これは臨也の正直な感想だった。静雄は臨也が今まで見てきた生徒(と言っても女子ばかりなのだが)の中で一番頭がよかった。複雑な計算式も丁寧に且つ結構な速さで解くうえ、二次試験を想定した解答の書き方も定着していた。そんな彼がどうして家庭教師を取ったのかは疑問で仕方がなかった。
「…別に俺が取りたくて取ったわけじゃなくて、母さんが」
「そうなんだ」
――― なるほど。喧嘩ばかりしている子どもに対する自己満足か。案外信用されてないようだね。これはもしかしたら利用できるかもしれない。時間はきっとかかるだろうから。
臨也は相槌を打ちながら、別のことに考え耽った。
「……」
静雄は無言で、その様子を見ていた。今、彼はよからぬことをきっと考えているだろう、そうに違いない。そんな確信があった。しかし、それを止める権利も知る権利も静雄は持っていない。実行に移されて目に見える形でなければ何もできない。
「玄関まで送ります」
「あぁ、ありがとう」
今静雄が出来るのは、臨也をこの部屋から立ち去らせることだけだった。
No.166
2012/01/07 (Sat) 22:42:07
第二話です。ケンカ売られなくなる理由が欲しくて。
その日、静雄はいつもより早めに家を出た。特に理由はなかった。なんとなく早くに目が覚め、そのままいつものように朝食をとり、顔を洗い歯を磨き、制服に着替え、授業の用意を鞄に詰めなおし、家を出た。弟は家に帰らず次の映画の撮影のために北海道に飛び、母親は昨日遅く帰ってきたため、まだベッドの中だった。父親は単身赴任中のため家にいない。静かなままの家を出るのは久しぶりだった。
早く出ればその分登校に時間もかけることができたので、静雄はいつもと違う道で学校に行くことにした。
副都心である池袋には、朝から大勢の人が流れていた。しかしいつもの時間よりは少なかった。静雄はふらふらと人の間を縫って、まだ開いていない店の前で並ぶ大人を横目に見て、モーニングで賑わう喫茶店や人が来なくて暇そうな店員がレジに立っているコンビニの前を過ぎ、公園を抜けて広い通りを進んだ。
その通りは区役所に面し、それなりに人通りはあった。それでも、60階通りに比べたらずいぶん減っている。歩いているのは殆どが会社員で、学生もちらほらいるが、来良学園の生徒は一人も見当たらなかった。
別の道を通って行こうかなと考えていたところで、ふと、声が入ってきた。すぐ近くから聞こえたのであたりをぐるりと見回すと、数歩先の角の奥からだと分かった。見向きもしないで通り過ぎればよかったのだが、言葉にならない音の中唯一はっきりと聞き取れた名詞に、静雄は足を止めた。
――― 『情報屋』?
初めて聞く職業ではないが、実物に出会うのは初めてだった。半ば興味本位で静雄は建物の陰から、こっそりと路地裏を覗いた。
すると、作業着のような服を着た大柄の男二人と、フードを被った男がいた。小声で何かを喋っていたが、内容は全く聞き取れなかった。何か焦っている男二人の方に比べ、フードの男の方は余裕そうだった。こちらが情報屋だろうと静雄は思った。すると、フードの男が喋った。やはり何を言っているかは聞こえない。聞こえるのは僅かな声のみだった。たった一、二言のようだったが、何か男たちに対して有益なことを言ったのだろう。男たちの様子から焦りが消えた。そして彼らはフードの男に対し、紙幣を4、5枚ほど出して金を払った。
――― えっ?!
情報屋はただ喋っただけでお金を稼げるのか、と静雄は驚いた。しかも出した紙幣のほとんどに福沢諭吉がいた。フードの男はそれを受け取ると、ポケットから四つ折りにされた小さな紙を男たちに渡した。その紙を乱暴につかみ取ると、男たちは大通りの方に歩き始めた。静雄はあわてて顔を引っ込め、その場にあったガラスのショーウィンドウを鏡にして髪をいじる学生になり済ました。といってもその大通りにほとんど人はおらず、かえって学生服の姿は目立ってしまっていた。幸い、男たちは静雄に気がつくことなく反対側へと歩き去っていった。
男たちの姿が完全に見えなくなったところで、静雄は再度路地裏を覗いた。
――― あれ?
そこには誰もいなかった。
「何で、いないんだ?」
この路地裏に他に抜けられる道はなく、そこから出るには静雄側に来るか、可能性は低いが壁を登って上に行くしかなかった。フード付きの男は一体どのようにしてこの場を去ったのか。気になったが、学校に行くという最優先事項があったため、静雄は探すことを諦め、学校に向かうことにした。
静雄が隠れていたビルの屋上、そこに、“フードの男”は立っていた。その視線は学校へ向かおうと歩き始めた静雄をとらえていた。
「危なかったぁ」
屋上を吹き抜けた一筋の風が、男のフードを取った。
「これがなかったらまずかったなぁ」
黒く短い髪に、秀麗な顔つき、そして、赤い目。男の正体は折原臨也だった。
彼は作業着の男たちが去った後、壁の表面を這っていたむき出しのパイプや室外機に手を脚を掛けて壁を登り、屋上まで逃げたのだった。
「まさか、シズちゃんに出くわすとは」
臨也は、静雄が陰から見ていることに気づいていた。たまたま自分が通りの方を見ることができた位置にいたので、建物の陰から現れた金髪の学生を見ることができた。フードはもともと日が出ていたので他の人から顔を隠すために被っていたが、それが功を奏した。おかげで顔を見られることなく彼は去っていき、男たちからも金を取ることができた。
ビルの反対側を見下ろせば、先程の作業着の男たちが黒いワゴン車に乗り込む様子が見えた。エンジンがかかり、車はそのまま路地を抜け、教えてやった目的地の方に走っていった。
「あとは君達次第だよ、 」
そう言って、臨也はビルから飛び降りた。
静雄は学校に、始業三十分前についた。生徒はまばらかと思いきや、朝から学校が開放している図書館や自習室を使って受験勉強を進める殊勝な同級生が結構いた。教室も例外でなく、昨日に帰りにでも約束したのだろう、ある女子生徒のグループ五人が机を合わせて勉強していた。静雄が教室に入ると、彼女たちの視線が一斉に向いた。しかし朝のあいさつを交わすことは無く、彼女たちはそのまま手元の参考書に視線を戻し、互いに相談しながら問題に取り組み始めた。
静雄も自分の席に着いて、先日臨也に解説を書いてもらった紙をもとに、もう一度問題を解くことにした。数学の、国公立大学にしばしば出題される、確立を数列で表す応用問題であった。参考書を開き、解説の紙を開いたとき、知らぬ間に挟まっていた小さな紙が落ちた。拾って見ると、小さな紙にはメールアドレスと、『割に合わないから質問があったらいつでも』というメッセージが書いてあった。
「……」
静雄はしばしそれを眺め、やがてペンケースの内ポケットに仕舞った。きっと使うことは無い。シャープペンを手に取り、静雄は解答を書き始めた。
次に静雄が我に返ったのは、新羅に呼ばれてのことだった。
「おはよう、静雄」
「……おう」
集中していたのか寝てしまっていたのか、自分では全く分からなかった。ノートを見ると、読める字で書かれた解答の横に、何が書きたかったのか分からないねじ曲がった記号が幾つも書かれていた。
――― 寝ちまってたのか
新羅の方を見れば、今来たところなのか、鞄の中の授業の用意を机の中にしまっていた。次いで時計の方を見ると、後十分で始業のチャイムが鳴るところだった。まだ少し眠かったので、静雄は机の上を片付け、机に突っ伏した。
街に人があふれ始めた頃、臨也はまだ池袋にいた。人の多い広い道ではなく、入り組んだ裏道を、体を伸ばしながら歩いていた。
「さて、あとは粟楠会の所に行って終わりかぁ」
さらに欠伸を一つして、上着のポケットに手を入れ、粟楠会に行ったあとは朝食だ。適当な喫茶店で食べようかな、それともサンシャインの中で探そうかな、と考えていたところ、深緑色のニット帽をかぶった男が自販機の前に立っていた。
「あれは…」
相手は臨也に気がついていないようだった。臨也は口元に笑みを浮かべ、そっと背後に立ち、その肩を思いっきり叩いてやった。
「おはよう、ドタチン!」
「うおぁっ?!」
男は驚き、まさに開けようとしていた缶コーヒーを足の上に落としかけた。幸いすぐに宙に放ってしまった缶を素早く掴み取り、足に被害は及ばなかった。
「臨也……」
高校時代からの友人、門田京平だった。彼は振り返り、自分を驚かせた人物が臨也であることを視認するなり、溜息をついた。
「吃驚しただろう?」
「当然だ。というか、何度も言うがその呼び方は止めてくれ」
「べつにいいじゃない」
全く悪びれる様子もなく、臨也は自販機の前に立って、コーラを一本買った。
「珍しいね、一人だなんて。仕事の帰りかい?」
しかし缶を開けることなく、臨也は門田の横に移動し、背後のフェンスに少し体重をかけた。
「まぁな、昨日は遅かったからあいつらには先に帰ってもらったんだ」
門田からは真新しい溶剤の臭いがした。袖口やズボンの裾に薄汚れた白い斑点が幾つもついていた。夜中の左官仕事からの帰りなのだろう。門田の顔はどこか眠たそうだった。
「そういえば、臨也」
「ん?」
門田は飲み終わったコーヒーの缶をゴミ箱に入れ、臨也の方を向いた。
「この間運び屋から聞いたが、お前まだ家庭教師やってんのか?」
「あぁ。高校生なら話も合わせやすいし、何より嘘か真か分からない面白い情報が流れてくる」
「そういうところは相変わらずだな。今度もまた早々に飽きるんだろ」
かわいそうに。門田は臨也を指名した生徒のことを思った。それを見て、臨也はそうじゃないと笑った。
「今回はちょっと違ってね」
「違う?」
門田は首をかしげた。一方で、臨也はコーラの缶を片手で弄びながら楽しそうに話し始めた。
「すごくできる子なのに親の自己満足で受けているらしい。いや、受けさせられているかな。あぁ、ちなみにその子、男だよ。髪の毛を金色に染めていてさ。不良かと思えばただの口下手で妙なところで礼儀正しいというか固いんだ。人並み外れた馬鹿力を持った化け物だけど、本人の体格見てもそんな感じはまったく無い。むしろ現代の若者って感じがする」
つらつらと澱みなく続く臨也の話を聞いて、門田は一人の高校生が思い当たった。直接話したことはないが何度か見かけたことがある。何度か彼の喧嘩にも直面したことがある。
「まさかとは思うが、そいつの名前って平和島静雄じゃないか?」
門田のいった名前に、臨也は少し目を見開いた。
「何だ、知ってるんだ。残念。俺よりも先にあんな人とは何かが違う面白い魅力を持った奴に先に出会っていたなんて。俺に教えてくれたって良かったじゃないか。まぁ、でも家庭教師っていう便利な立場にいて彼に出会えたからいいか。彼を見てさ、初めて心の底から欲しいって思ったよ。世の中にはまだ俺の知らない、人間という種族以外に俺が気に入るものがまだまだ存在するんだね。」
「……臨也」
だんだんと臨也の話に違和感を感じてきた門田は、名前を呼ぶことでその話を止めた。
「何?」
「お前、今自分が」
「ドッタチーン!」
門田が、思ったことを口にしようとしたところに、女性の自分を呼ぶ声が入ってきた。その元の方を振り返ると、白いワゴン車がこちらに向かって走ってきており、後部座席の窓から身を乗り出すという危険極まりない体勢で大きく手を振る人が見えた。
「……狩沢」
「お迎えのようだね」
ワゴンは少し離れたところで停車した。
「じゃあな臨也」
「うん、またね」
門田が乗り込んで、首都高沿いに走り去っていったワゴンを見送って、臨也は携帯を開いた。表示された時刻は粟楠会との約束の時間に迫っていた。
――― これは急がないと
そう思って走り出そうとしたところ、見知らぬ人物に声を掛けられた。
「おい、兄ちゃん」
そしてすぐに周りを囲まれた。十代後半から二十代前半の八人の男の集まりだった。皆同じような上着を着ており、カラーギャングの一つのようだった。
「何か用かな?」
「さっき平和島静雄つったか?」
さっき、ということはずっと彼らは立ち聞きをしていたようだった。
――― 趣味が悪いなぁ
心中で臨也は一つ舌打ちをした。彼らに対してもあるが、彼らに気づかなかった自分に対して、も含まれていた。
「ソイツについてちょっと話が聞きたいからさ、一緒に来てよ」
「えー、それは困るなぁ」
両手を軽く上げ、臨也は大げさに困った、という感情を示した。しかし表情は笑っており、片手に持っていたコーラの缶のプルタブに親指を引っ掛けた。
彼らの羽織る上着に、臨也は見覚えがあった。それは以前見た、誰かが隠れて撮影した静雄の喧嘩の様子を撮影した動画の中で投げ飛ばされていた男たちが着ていたものと同一であった。確かにあそこまで理不尽に、たった一人を相手に大敗を喫すれば、その無駄に高いプライドから報復もしたくなるだろう。しかしそんなものは臨也にとってどうでも良いことで、彼らが報復しようが知ったことではない。ただ、そのたかが報復のために自分が気に入った平和島静雄という人物を利用価値のなさそうな集団に売るのは出来ない相談だった。
「俺はこの後、粟楠会に行かなくちゃいけなくてさぁ」
「粟楠会?」
臨也と対峙していた集団は相当世の中を知らない集まりのようだった。皆初めて聞く、池袋の裏を支配する一大勢力の名前に顔を見合わせた。そして彼らの背後にいる人物たちを見て、臨也は手を下ろし、苦笑した。
「そう。今君たちの後ろにいるこわーい人たちの所」
そう言って背後を見るよう促せば、スーツを着た大人が四、五人ほど立っていた。人数でいえば若者たちの方が上だったが、経験の差、彼らの持つ重く危険な空気にしてやられ、若者たちは為す術もなく、走り去っていった。
「怖いだなんて折原さん、人聞きの悪い」
「いや、事実でしょう。四木さん」
臨也は中央に立っていた白いスーツの男に向けて言った。
「ところで、どうしてこちらに?」
「私達も、たまには出歩かないと鈍りますからね」
――― 鈍るどころか、溜まったものを発散しているようにも見えましたけど
それを言葉には出さず、臨也は「そうですか」と相槌を打った。
「では、事務所の方に行きましょうか」
周りの男たちに合図をし、四木は歩き始めた。
「あぁそうだ、四木さん」
呼びかけられて振り返った彼に対し、臨也は笑顔で話しかけた。
「ちょっとお願いがあるんですよ」
授業後、静雄はハンズの中にいた。話は簡単。帰ろうとしていたところを岸谷新羅に捕まり、そのままずるずると引きずられて連れてこられたのであった。そして静雄と新羅がいるのはキッチン用品が集まったフロアである。機能性を重視したシンプルな鍋から、デザイン性を重視した変形フライパンまで、様々なものが集まっていた。ここに来た理由を聞けば「愛しのセルティが俺のために料理をしてくれると言うから一式揃えたいんだ」というなんとも甘い理由とのことだった。どれにしようかなと並べられた品物を物色している新羅の横で、静雄は腕を組んで立っていた。彼の醸す暗い空気のせいで、近くに客は誰もいなかった。
「で、それと俺がここに連れてこられたことに何の理由があるんだ」
「男一人じゃ恥ずかしかったから」
「帰る」
「ちょ、ちょっと待ってって」
どうでもいい、どうでもいい。静雄は新羅に背を向け、下りエスカレーターの方に向かおうとした。しかし腕を掴まれ、仕方なく足を止めた。
「ごめんさっきのは冗談。静雄って料理出来るでしょ」
「…何で知ってんだよ」
それは事実であり、よくある家庭環境事情の結果であった。しかし誰にも言った覚えはないし、家族以外の誰かに料理を振る舞った覚えもない。なぜこいつが知っているのか。じと、と静雄は新羅を睨んだ。けれど、それに慄くことなく新羅はあっさりと情報源を言った。
「幽君のインタビューに載ってたんだ。『兄の料理が時々食べたくなります』って」
「……」
「だから、参考になるかなーって」
「……どーでもいいだろ、道具なんて」
それが静雄の答えだった。別段道具に拘るようなことも無かった。だがその答えは新羅の気に入る答えで無いのは当然のことであった。
「そんなことないよ!可愛いものを持っていた方がいいじゃないか」
新羅に妙な啖呵を切られ、静雄は大きく溜息をついた。
「好きにすりゃあ良いじゃねーか」
「よし、じゃあこれとこれと…」
「ってちょっと待て。同じようなもの二つも買うな。用途考えろ」
帰り、新羅が持つ袋の中には、フライパンからゆで卵切り機まで、さまざまな料理器具一式が詰め込まれていた。静雄がいたからこそ大袋一つで済んだのだが、もし何も言う人物がいなければ、この三倍四倍近く、新羅は買っていたことだろう。主に『これ持ってたら可愛いよね』というかなり軽い理由で。そして会計を済ませたときに、奇妙なものを見る目で店員が一瞬自分と新羅を見たことに、静雄は気がついていた。
――― あり得ない
はぁ、と溜息をつけば、「どうしたんだい?」と新羅が顔を覗きこんできた。確かに新羅は自分より背が低いし声も高めで、顔も童顔だ。対して自分は全く反対で、それだけでああいう風に見られるのは迷惑だった。かといって新羅に責任はない。そのように見たあの店員の思考が悪い。静雄は近くにあったガードレールを軽く蹴飛ばすことでその怒りを発散させた。
「何でもねぇよ」
「……そう」
無残にも曲ったガードレールを、新羅は見なかったことにした。軽く蹴とばしていたようだが、蹴りを受けたガードレールは大きく歪み、急な放物線を描いていた。
60階通りを池袋駅方面に下っていく中料理のことを考えたとき、静雄はふと、臨也は何を食べているのだろうかと疑問に思った。大抵ああいう系統の人は外で買って家で食べていそうだが、案外自炊しているのではないか、と考えた。けれど高級レストランも普通に通っていそうで、益々分からなくなっていった。
「ねぇ、静雄」
「何だ?」
「あれ」
そう言って新羅の指す先には、同じ上着を着た青年が八人、標識の傍でたむろしていた。顔をそちらに向けると、視線が合った。ぼんやりと、静雄は彼らの羽織る上着には見覚えがあった。しかし具体的にどこで、どうして見覚えがあるのかまでは思い出せなかった。
彼らは目が合うなり急ぎ足で去っていった。
「…あ?」
「…何だったんだろうね?」
「さぁ…」
興味も何も引かれなかったので、静雄はそのまま新羅と一緒に駅方面に向かった。
No.165
2012/01/07 (Sat) 22:41:20
第三話。
家庭教師を受け始めてから早くも一カ月が経つ頃、静雄は最初に感じた違和感を忘れそうになっていた。実際、忘れていた。折原臨也という家庭教師は今一つ掴み切れない所はあるが、教え方に不満も文句も一つもなかった。彼の解説は分かりやすさを謳い文句にしているどの参考書の解説よりも丁寧で親切だった。かつ的確に自分の知りたいところが解った。そのお陰か、静雄の成績はさらなる伸びを見せた。中間考査ではクラス順位三番を獲った。また、何があったのかは分からないが、不良たちが絡んでくることも少なくなった。そのお陰か、生徒たちから、少しずつだが、話しかけてくるものが増えてきた。母親は褒美に何がほしいと聞いてきたが、静雄は何もいらないと答えた。別に褒美が欲しくて勉強している訳ではない。まるで自分のことのように喜ぶ母親の姿に目をとめてから、静雄は自室に戻った。後三十分ほどで臨也が部屋に来る。散らかってはいないが教科書類を片付けなければいけないし、何より制服から着替えなくてはいけなかった。
静雄はクローゼットからズボンやシャツを何着か取り出してベッドの上や床の上に伸ばして置いた。そして慎重に選んで袖を通した。今日は久しぶりに弟、平和島幽が夕方に帰ってくる日であった。早朝に出かけ深夜に帰ってくる芸能生活を送っている彼との約一カ月ぶりの顔合わせであった。
――― これなら文句はきっと無いよな
鏡の前に立ち、静雄は普段では気にしない細部まで入念にチェックをした。
静雄が選んだ服は質の良い七分の白いシャツとダメージ加工が施された黒い細身のジーンズであった。これらは以前から贈られたものであり、どこからか仕入れてきた服を、幽がクローゼットの中に勝手に入れていったものであった。静雄が止める機会を逃したその行為は、最早趣味の域に達してきているようで、時々奇妙なものも混じるようになった。「カンガルーはいません」のようなTシャツや、「海人」と習字で書かれたものなど、一体いつ着ようかと悩んでしまうものも増えてきていた。
選ぶために広げた服を片付けていると、不意にドアがノックされた。
「何?」
母親かと思い、静雄はいつものように軽い返事をした。
「こんにちわ、静雄君」
――― 折原さん?
返ってきた声に、静雄は驚き時計を確認した。まだ時間には余裕があった。かといってドアの前に臨也を置き去りにしていては何だか奇妙で申し訳ないので、さっと服をクローゼットの中に詰め込んで、臨也を部屋に入れることにした。
部屋に入ってきた臨也の姿を見て、いつもと違うことに静雄は気づいた。今まで黒一色の格好しか見たことが無かったので、薄青色に濃紺で英字が描かれたシャツが珍しく、やけに眩しく感じた。
「前の子が体調を崩してお休みになったから、早めに来ちゃった」
「・・・はぁ」
――― 体調が悪かったからって、こっちの都合も考えろよ
静雄は口に出さずに思い、そして気になっていたことを口にした。
「どこか行ってきたんですか?」
「何で?」
臨也は首をかしげた。
「いつもと違うので」
静雄は臨也のシャツを見て言った。臨也は指された自分のシャツを見て、少し肩を竦めた。
「俺だって四六時中黒子みたいな格好しているわけじゃないって。今日暑くなるって天気予報が言っていたから」
苦笑しながら臨也は答えた。しかし静雄は服から視線をそらさない。
「似合わない?」
「いや、似合わなくはないけど……」
確か。そう続けて静雄はクローゼットの中を少し漁った。間もなく、静雄は目当ての物を見つけた。その手には、臨也が来ているものと同じ服があった。
「これだ・・・って、これ?!」
「うん、それだね」
いまだ値札のついたままの服の、その値札を見て静雄は驚愕した。どう見ても静雄の価値観としては、長袖Tシャツ一枚の価格ではなかった。確か少し前に弟が珍しく嬉々として帰ってきたと聞いて何かとおもった時にクローゼットに追加されていたものだった。
――― もしかしたらこのクローゼットの中に入っている服って……
今まであまり気にしていなかったことに、静雄は焦った。そして先程の臨也の軽い返事からして、このような服がまだ家にたくさんあることが窺えた。多分あの黒一色のものも実はこのくらいの値段のするものばかりだろう。
――― 金銭感覚が違ぇ・・・
芸能人の例については幽がいるので知っていたが、家庭教師ってそんなに稼げるものなのだろうか。服を片付けて、そんなことを考えて自分の勉強椅子に座ったところ、机の上に置いていたA4サイズを横に四等分した短冊が目についた。それを見て、静雄は気持ちを切り替え、その紙を手に取って臨也に渡した。
「そうだ、これ中間考査の成績です」
「あぁ、返ってきたんだ」
いつもの椅子がなかったので臨也はベッドに腰を掛け、その紙を開いた。それを見て、静雄は椅子を取ってこようとしたが、やんわりと断られたため、自分の椅子に座りなおした。
「……わ、すごいね」
国語数学理科社会英語。大学入試の共通一次試験に必要な科目すべて八割超え。そうそう取れる成績ではない。あえて難を言えば、なぜこの成績でクラスのトップが獲れなかったのか。相当な天才もしくは奇人でもいるのか。それを尋ねると、静雄は悔しがる様子も嫌がる様子もなくあっさりと答えた。
「同じクラスの岸谷新羅って奴が医学部目指してるから」
「あぁ……新羅、か」
臨也の脳裏に浮かんだ、眼鏡をかけた四字熟語をよく使い解剖が趣味という変態じみた、いや変態の高校生。来良学園に通い、静雄と同い年であることは知っていたため、彼に違いない、と臨也は確信した。
「知ってるのか?」
「まぁ、ちょっとね。同じクラスなんだ?」
「俺に話しかけてくる数少ないうちの一人です」
「友達?」
その言葉に、静雄はぴくりと反応した。
「友達って言えば、友達、ですかね……」
そう言うも、静雄は少し嫌そうな顔をした。
「何でそんなに嫌な顔をするの?」
そう問いかけると、静雄は頭を掻きながら答えた。
「……初対面でいきなり体の構造が知りたいから解剖させてくれ、って言ってきたやつを喜んで友達なんて言えますか」
「……はは」
――― 新羅ならやりかねないなぁ
臨也は苦笑した。
「でもまぁ、話しかけてくれるし、いろんなところ連れ回されるのも嫌じゃないです。……本当、解剖だけ除いて」
――― 世間一般ではそれも友達と言うのだけれど
しかしあえて言葉には出さず、臨也は心の内に留めておいた。
ふと、ドアが控えめにノックされた。何だ、と静雄が声をかけるとドアが開いた。そして静雄より二、三歳ほど年下の、妙に表情に欠けた青年が立っていた。
「幽!」
「ただいま、兄貴」
その青年、平和島幽は抑揚のない声で言った。俳優業を営んでいるので容姿は整っていた。静雄より頭約一つ分背が低いが、年齢の平均には高い方だろう。少し長めの髪も、長さゆえの鬱陶しさはなく、むしろ彼の神秘的な、中性的な雰囲気にとても合っていた。顔の造形は静雄に似たところがあるが、あまり似ていない兄弟だった。
「これ、お土産」
そう言って幽が差し出したものは、静雄でもよく知る某有名ブランドの小さな紙袋。大きさから服や鞄でないことは確かだった。
「いつもありがとな」
先ほどの事もあり、静雄は少し引き気味でその紙袋を受け取り、中身を見た。
「ハンカチと・・・何だこれ?」
ハンカチは白地に黒いラインの入った、至ってシンプルなものであった。もうひとつは箱に入っており、開けてみると小さなデザイン性のある、薄青い液体の入った小瓶が入っていた。
「あぁ、それ香水だね」
「香水?」
「うん、きっと静雄君に似合うと思うよ」
静雄はその小瓶をしげしげと眺めた。透き通るような青はどこまでも綺麗で、どこか別世界を感じさせるような雰囲気を持っていた。
「そっちの人は?」
幽の視線が臨也に移った。表情からは判別しにくいが、少し警戒しているように静雄には見えた。
「この人は家庭教師の折原さん。一ヶ月前から教えてもらってる」
「家庭教師ですか」
小さく復唱すると、幽は背筋を伸ばし、臨也の方に向き直った。
「兄を、よろしくお願いします」
そして深々と頭を下げ、幽は部屋から出て行った。静雄は驚きで一瞬固まった。
「お願いされちゃったね、静雄君」
「幽の奴……」
静雄は顔に手を当て、深い溜息をついた。
「ま、社交辞令だろうから気にすることもないんじゃない」
「俺が気にします」
ガキじゃねぇって。静雄はもう一度溜息をついて勉強机の椅子に座った。臨也もベッドから椅子へと場所を移り、勉強を始めた。
「じゃあ、また明日」
「ありがとうございました」
玄関でにこやかに手を振る臨也に手を軽く振り返して見送り、静雄はリビングへと入った。
リビングには幽一人がソファに座ってテレビ番組を見ているだけで、母親の姿がなかった。テレビの中では、可愛らしい動物の子どもの特集をやっていた。
「勉強終わったの?」
テレビから視線を外し、幽は静雄を見た。
「あぁ。母さんは?」
「会社の方に呼ばれて出かけた。夕飯は冷蔵庫だって。食べる?」
そう言われて時計を見ると、時計は良い時間を指していた。
「そうだな」
静雄は冷蔵庫を開けた。中には二人分のラップのかかった皿が置いてあった。それらを取り出すと、カウンターキッチンの奥に進んで一皿目をレンジに入れて温め始めた。
「あの家庭教師の人、兄貴が選んだの?」
幽はソファからキッチンへ向かい、静雄の横に立った。
「んな訳ないだろ。母さんだよ」
もう一皿をレンジの上に置き、静雄は温めている間の時間を使って、しゃもじを手に炊飯器を開けて茶碗にご飯を二膳分用意し、幽に手渡した。
「変わった人だね」
それらを受け取った幽はカウンターをまわり、ダイニングテーブルに向かい合うように並べた。
「まぁ、家庭教師って感じはしないな。なんつーか、こう……そう、暇つぶしでやっているみたいな感じがするんだよな」
一皿目の温めなおしが終り、静雄は箸二膳とともにその皿をテーブルに置いた。幽はすれ違いにキッチンに戻り、もう一皿の温めなおしを始めた。
「俺もそう思う」
静雄もキッチンに戻り、幽の横に立った。
「まあでも教え方は上手い方だと思う。解説とか丁寧だし」
「でも兄貴もともと成績良いよね」
幽の言葉に、静雄は動きを止めた。
「……何で知ってるんだ?」
「前にごみ箱に捨ててあった成績表見たんだ。それで」
それを聞いて、静雄はもっと目につかないところに捨てるべきだったなと思った。
「母さんには内緒な」
その言葉に、幽は首をかしげた。
「別にいいけど、どうして?」
「……何でだろうな」
「さぁ、俺に聞かれても困る」
「そうだな」
ピーっと、二皿目の温めが終ったことを告げる電子音が鳴った。
夜、新宿。
臨也はサザンテラスに座っていた。道には出勤帰りの社会人の流れが出来上がっており、彼のように座ってのんびりとしている者は少なかった。
テーブルで一人、ペットボトルの紅茶を啜っていると、一人の女性が臨也の前に姿を現した。
「やぁ、遅かったね、波江」
「急に呼び出したのはそっちでしょう」
矢霧波江は長い髪を一度背中に払い、臨也の向かいに座った。昼間であればきっと周囲の目を引いただろうが、今は夜。周りに歩く者もいなければ臨也以外に座っている者もいなかった。
「で、何の用かしら?」
「別に用って程でもないよ。たまには外で食事でもどうかって思って」
空になったペットボトルを鞄に戻しながら臨也は言った。その言葉に、波江はあからさまに嫌そうな顔をした。
「……貴方、そんな理由で呼び出したの?」
「冗談だって。本題はこっち」
そう言って、臨也はついでに鞄から一つの封筒を出し、テーブルの上に置いた。
「前に頼んでいた資料が手に入ってさ。これ、整理しておいてよ」
その封筒の厚さに、波江は眉をひそめた。
「何、この量……」
「大丈夫。半分くらいは要らないやつだから」
「何が大丈夫よ」
「中身は何?」
「んー、池袋を中心に半径五キロ圏内に存在する集団の大切な資料だよ」
大切な、というフレーズを少し強調した臨也に、波江はため息をついた。
「…そんなもの手に入れて何に使うの」
間違っても私を巻き込まないで欲しい。そんな裏の声をこめて言った。すると、それを察したのか、臨也は小さく首を横に振った。
「いや、使いはしないよ。ただ持ってるだけ」
そう、持っているだけでいいのだ。それだけで管理できるくらいの力をこの資料は持っているのだから。
――― まぁ、手に入れるのにちょっと苦労したけど。
先日の四木とのやり取りを思い出しながら、臨也はため息をつき、椅子の背にもたれかかった。
No.164
2012/01/07 (Sat) 22:40:29
第四話。
感覚的な話であるが、受験生の一年は速い。外を見れば梅雨前線の影響で一週間ほど続いている雨が、今日も降っている。換気ができないため教室内の空気が濁ってしまい、暑かった。しかも教室には熱気もこもり始めていた。こ原因は、期末考査期間突入とともに企画が始まった高校生活最後の文化祭に対するクラスメイト達の活気であった。クラスみんなで何をしようかと友人同士で話し合っている中、静雄は窓際の席で静かに、静かに予習と考査のための勉強を進めていた。クラスメイト達は連日の雨や暑さで静雄の機嫌が下降していることを自然に察知し、関わらないようにしていた。大まかに食品を扱う模擬店と決まり、後は何を作り、どんなキャッチコピーで、どんな雰囲気の店にするかを話し合っていた。
突然教室の引き戸が荒々しく開かれるまでは。
「平和島ァッ」
そう叫び突然教室に乗り込んできたのは、先日まで停学処分を受けていた隣のクラスの生徒数名。短い学ランにサイズの大きすぎるズボンを腰のあたりでベルトで留めるという、やや古風なスタイルであった。今日も今日とて雨であったために濡れている裾が少し格好悪かった。
彼らは周りに目もくれず真っすぐ静雄の席へと歩き、周りを囲んだ。
「テメェ何イイコちゃんぶってんだぁ?アァッ?」
彼らの苛立ちの根源は全くもって停学処分への鬱憤と一人処分を免れた静雄への恨みに対する八つ当たりであった。静雄が処分を免れた理由は主に怪我であった。本人はちゃんと直立し意識もあったのだが、頭から血を流し、左腕と右足があらぬ方向を向いていた。いつもは加害者と見られがちであった静雄だったがこの時ばかりは被害者扱いされ、停学処分を受けなかった。それでも、何の意味も持たない反省文だけは書かされた。
なにはともあれ、機嫌の悪い静雄が黙っているはずがない。そう思ったクラスメイト達は一斉に教室の外へと貴重品を持って退出した。
「オレ達が・・なくて寂しかっ・・・よなァ」
「平和島静雄に・・んな ・・・ らねぇだろ」
「 て ・・が ・・ ・・」
「・・ ぇ ・・ ぉ・・・・」
苛立ちのあまり、静雄は次第に周りの音が聞こえなくなってきた。なぜ俺に突っかかってくる。この間の話はもう終わったことだろうに。勝手に引っ張り合いに出してこじ付けの因縁をつけてくるということはつまり喧嘩を売っていることか。俺に暴力を使わせる気か…
ぐるぐると持論が展開されていく中手に余計な力が入り、シャープペンが折れた感触がした。その時に、ふと我に返った。
「……あ、」
静雄は無残にも真ん中から折れたシャープペンを眺めた。そしてそれが今しがた込めた力のせいで折れたのだと気付いた。
――― 幽が、…幽がくれた、シャープペン……
「何だぁ?こいつ」
「シャープペン見たまま固まってッぞ?」
――― こいつらが
――― こいつらが、来なければ・・・
「あ、もうおぁッ」
静雄はすばやく手を伸ばし適当な位置にいた一人の顎を掴んだ。そのまま椅子から立ち上がり、腕を伸ばして上へと持ち上げる。
「……のに」
「は?」
「っの野郎ッ!」
後ろから殴ろうとしたもう一人に、静雄は空いたもう片方の手で裏拳を顔面に入れた。華麗に吹っ飛び、廊下側の壁に力なく激突し、床へと落ちた。
「幽から貰ったものなのによぉ…テメェ等が俺を怒らせなきゃ折れずに済んだよなぁ…」
静雄は持ちあげている一人を手早く放り投げ、服や腕を掴んできていた生徒の手を無理矢理はがし、正面から頬を殴ってきた生徒の腕を掴み軽く曲がらない方へと曲げ、さらにいまだ伸びてくる手を黙らせるため脛を蹴ってやった。それでも残った者たちはいたが、静雄に手を上げず払われた仲間の方へと向かっていった。
席の周りはさっぱりした。静雄は折れたシャープペンをジャケットのポケットに入れ、机に出していた筆記用具を筆箱に仕舞うと、鞄を机の横のフックから外し、その中に机の中から出した教科書ノート類を突っ込み、筆箱も突っ込んで、それを持ってうずくまる彼らを無視して歩き出した。
教室を出て、ぱっと目に付いた生徒に一言。
「帰る」
そう残して下駄箱へと向かった。
この日の静雄の備品への被害はゼロで、むしろクラスメイト達の証言により不良たちは生活指導の教員に二時間に及ぶ説教を受けることとなった。
クラスメイト達は、教室の被害がゼロだったことよりも、始めてみた静雄の、本当に悲しそうな表情を心配していた。
――― 静雄、大丈夫かな・・・
教室内で唯一事情を知る生徒、新羅はいなくなった二つ後ろの席をみて、窓の外を見た。
空はまだ暗く、雨足が少しだけ強くなった気がした。
学校を出て二十分。静雄は傘も差さずふらふらと街中を歩いた。雨の冷たさに頭が冷まされたが、さらに心も体も冷めていくようだった。こんな天気でも、こんな時間でも、中心街は相変わらず人の波があった。道行く人は静雄に奇異な視線を送るが、彼を避け、我関せずと過ぎ去っていった。
「……」
静雄の心の中は、あのシャープペンを折ってしまった自分に対する後悔ばかりが渦巻いていた。どこにでも市販されているただのシャープペンだが、あれは、幽が受験の応援として贈ってくれたものであった。見えない価値がついていた。だが、自分がここまで落ち込むとは思ってもいなかった。
気がつけば公園まで来ていた。静雄はふらりと中に入り、濡れて色濃くなったベンチに腰をかけた。公園に立ち寄っている者は誰もいなかった。
――― 幽、ごめん…
俯けば、髪から滴が絶え間なく伝い落ちていき、砂に混ざっていった。完全に制服は濡れ、雨粒が背中を打つのが感じられた。
しかしそれは不意に地面が少し陰ったと同時に止まった。
「静雄君?」
「……?」
名前を呼ばれ顔を上げると、臨也が立っていた。相変わらずのフードのついた黒いジャケットを羽織った格好で、ジーンズの裾が少し濡れていた。手にしている黒い傘は傾けられ、自分がぬれるのにもかかわらず静雄を雨から守っていた。
「傘も差さずに何してるの?」
「別に…濡れるからいい」
静雄は再度俯いて答えた。その声に力は無かった。何かあったのは確実だ。そう思い、臨也は傘を静雄に向けて傾けたまま、携帯電話を開いた。
――― 丁度終わったし、この後もしばらくは予定ないし
臨也は携帯をポケットに戻し、静雄に話しかけた。
「家の鍵持ってる?」
静雄は一つ頷いた。
「とりあえず家に帰ろうか」
「……」
臨也は静雄の手を引き、今更ともいえるが傘の中に入れ、歩き始めた。
静雄から鍵を借り、臨也はドアを開けた。
室内は真っ暗で、人の気配はしなかった。それでも、外気よりは少し暖かかった。
「親はいないみたいだね」
「…今日は仕事でいない」
そう小さく言って、静雄は靴を脱ぎ、ふらふらと自分の部屋へと向かった。しかし臨也はその腕を掴み、洗面所の方へと引っ張った。
「とりあえず温まっておいで」
「……」
そう言われ、静雄は誘導されるままに洗面所に入った。静雄は制服を脱ぎ下着を脱ぎ、風呂場へ入った。
「服は適当に選んでおけばいい?」
それに対し返事はなかった。
臨也は静雄の部屋に入り、適当に服を見繕って、風呂場に入ったのを見計らって洗面所の方に置いておいた。
リビングに入りキッチンに立つとココアやコーヒーの瓶が目につき、勝手だが淹れることにした。コートを脱いでダイニングの椅子に掛けさせてもらい、キッチンに戻った。
――― なーんで俺、こんなことしているんだろう?
カップや瓶など道具を並べながら臨也はふと思った。しかし手は止まることなく、家でするように水を沸騰させてカップに粉を入れそこに湯を注ぎスプーンで二、三回混ぜていた。携帯を見たときはまぁこの後は暇だし助けるか。そんな軽い気持ちだったが、よくよく考えてみれば雨に濡れた子を助けるなんて洒落たことは誰にもしたことがなかった。
――― 特別視したせいかな?
顎に手を当てながら、臨也は静雄が出てくるのを待った。
温かいシャワーを浴びると、静雄は気分が少し落ち着いた。冷えた体のみならずその温かさは心にも少しだけ届いた。薄緑色のタイルの壁に手をつき、静雄は鏡を見た。
――― ひっでぇ顔
こんな暗い表情をして自分は街を歩いていたのか。改めてそう思うと少し馬鹿らしく感じてしまった。正直に話そう。静雄はそう決めた。
濡れた体をふき、さぁ出ようと思った所で静雄は着替えのことを思い出した。そういえば部屋に寄って持ってくるのを忘れていた。しかしそれは杞憂に終わった。風呂場を出て洗面所を見ると、タオルが置かれているかごの上に服が置いてあった。そう言えば何か言っていたような気がした。静雄はそれに着替え、ジャケットから折れたシャープペンを取り出してジーンズのポケットに入れ、洗面所を出た。臨也に礼を言おう。そう思い電気のついたリビングに向かった。
扉を開けると、梅雨独特の湿気が消えていた。
「勝手にキッチンとかエアコン使ったけど、良かったかな?」
臨也はソファに座っていた。テーブルの上にはカップが二つ置いてあった。静雄は一つ頷いて、その向かいに座った。
「どっちが好きか分からなかったから両方淹れちゃったけど」
「……ココア」
「そう」
静雄はココアの入ったカップを取った。一口飲むと、丁度いいぐらいに冷めており、また偶然にも静雄の好きな濃さであった。臨也は残ったコーヒーの方のカップを手に取り、一口啜った。
「で、何があったの?」
そう尋ねられると、公園の時とは違い、静雄は答えることが出来た。
「幽がくれたシャープペンを、折っちまったんだ」
そう言って、静雄はジーンズのポケットからその折れたシャープペンを出した。
――― うわぁ
一体どれほどの力が入ればここまできれいに折れるのだろうか。割合太めのシャープペンは真ん中ぐらいのところで、見事に真っ二つに折れていた。外のケースも、内の軸も綺麗に割れていた。修復できないわけではないが、すぐにまた折れてしまうのは目に見えていた。
臨也はうーん、と唸って、やがてコートのポケットに手を入れた。
「はい」
「え?」
「幽君の物の代わりにはならないかもしれないけど、俺からプレゼント」
静雄の前に出されたのは、最近出たばかりの真新しいシャープペンだった。
「丁度今日買いに行ってきてね」
「でも」
「いいって。それくらい、また買えばいいし」
臨也はコーヒーを一気に呷り、立ち上がった。
「受験、頑張ろうね」
「…はい」
その後、静雄は幽にシャープペンのことを話した。
「そう」
幽は怒ることも悲しむこともなく、少し嬉しそうな表情をしてそのシャープペンを見た。
「これ、本当は兄貴の力を抑えてくれるように願掛けしてたんだ」
「そうなのか?」
「うん。あまり効果なかったかもしれないけど…」
「いや、そんなこと!ない、」
「無理しなくていいよ」
そう言うと、幽はもう一本、同じシャープペンを静雄に渡した。
「今度は、ちゃんと受験が成功するようにってお願いしておいた」
「…ありがとな」
期末考査中、静雄は調子が良かったことは言うまでもない。
梅雨が明け、じりじりと蒸し暑い季節がやってきた。授業も短縮に入り、午後は文化祭の準備が始まっていた。
「静雄、考査前に何かあった?」
休み時間、新羅は空いた静雄の前の席に座るなり、突然そう切り出した。
「なんだよ、突然…」
「いや、期末考査あたり、何か機嫌よかったからさ」
そう言いながら、新羅は静雄のペンケースの中を漁り始めた。何してんだと言いつつも静雄は特に彼の手を止めたりはしなかった。そして間もなく、新羅はその中から二本のシャープペンを机の上に出した。一本は以前静雄が折ってしまったものと同じものだった。どうしたのかと聞けば、また貰った、といった。
「へぇ、幽君から同じもの貰ったんだ」
「あぁ。前のやつは俺の力を止めてくれるよう願掛けしてあったらしい」
「成程」
一見どこにでも売っていそうなシャープペンだったが、軸をくるりと回したときに目についた軸の文字を見て、新羅は吹き出しかけた。
――― これは特別製だ
それでも顔はにやけていた。軸にあった文字は。
『 Dear.SHIZUO.H from,KASUKA.H 』
光の加減で薄く見える程度の文字であった。静雄の様子からして、この文字に気づいた様子はないようだった。
――― なかなか粋なことをするなぁ、幽君
新羅はさらに、もう一本の方のシャープペンを手に取った。そちらはついこの間新発売された某有名文具メーカーのものだった。気軽に買うにはちょっと高すぎる値段が付いていたことと新羅は思い出した。
「静雄って文具にこだわりあった?」
「それも貰いもんだ」
「誰から?」
そう聞くと、静雄の口から出てくるとは思ってもいなかった名前が出てきた。
「折原っていう家庭教師。受験がんばろうってくれた」
「折原?!」
その声は思った以上に大きく、教室中の視線を集めてしまった。新羅は苦笑いし、一つ溜息をついた。
――― いや待て自分。折原っていう名字は他にもたくさんいるよ。なに勝手に『臨也』って指定してるんだ。でも僕が知る折原って彼しかいないし……
新羅のその様子を見て、静雄は決定打を決めた。
「本当に知り合いだったのか」
――― あぁ、臨也に決定だ。てか、何で臨也?
「い、いや……まぁ、結構お世話になってるというか、お世話してるというか…」
「何だそれ?」
頭上にクエスチョンマークをいくつも飛ばしている静雄をよそに、新羅はへぇ、うん、そう、などと呟きながら、シャープペンをペンケースの中にしまった。
「あの時は本当、助かった気がするんだよな」
「…へぇー」
珍しい静雄の穏やかな表情に、新羅は一抹の不安を感じていた。
同日午後、川越沿いマンション
新羅はある人物を前にして怒っているのに笑っている顔をしていた。
「どうしたんだい?」
折原臨也だった。
あの後新羅は授業後にあった文化祭の話し合いに参加しなかった。とくに興味もなく、皆がやることに適当に合わせればいいかなぁと思い、同じ考えを持った静雄とともに教室を出て家にまっすぐ帰った。すると、なぜか臨也が家の中にいた。同居しているセルティが鍵をかけ忘れたと言うのは考えられなかった。だとすれば、この男は不法侵入者となりうるのだが、はっきり言って今に始まったことではなかったので、新羅は言及しないでおいた。
それよりも気にかかってやまなかったのは。
「何で君みたいな最低最悪腹黒外道残酷冷酷非常卑劣な情報屋折原臨也が、静雄の家庭教師なんてやってるのかなぁ」
「立派な罵詈雑言ありがとう」
臨也は他人の家だというのに優雅にソファに座り、新羅の出した紅茶を啜った。
「単なる偶然だよ」
聞けば、応募者多数により、抽選となって彼の書類を引き当てたそうだ。新羅にしてみれば、どんな家庭教師の会社なのかも気になった。生徒を抽選で選ぶ家庭教師があっていいものか。きっと臨也と何らかの取引をしているに違いない。
「で、興味持ったから続けてるんだよ」
「いつまで続くかなぁ」
新羅はダイニングテーブルに寄りかかり、愛用のマグカップでコーヒーを飲んだ。臨也は飽きやすいことを、新羅は知っていた。本職と人間への愛を除いて、今まで長くもって半年。短い時はたった二時間程度しか続かなかった。家庭教師も、生徒をころころと変えては長続きしていなかった。
「今までいろんな子のこと聞かされてきたけど、シャープペンをあげるなんて初めてじゃないか。しかも受験がんばろうだなんて」
「そうだね」
臨也はカップをテーブルに置き、背もたれに寄りかかった。
「俺も不思議だったよ。雨の日に公園で彼を見つけてさ、家まで送って色々世話して」
――― おいおい人の家で何やっているんだ。
心中でそう突っ込み、新羅はマグカップから口を離し、臨也の方を見た。
「最初に会った時も、俺が集めた情報と違いすぎて驚いたよ。これが化け物かってね。確かに容姿は人並み以上だし、力だって現場を見たことはないけど動画見て本当らしいことがわかった。しかも警戒心は人一倍強い割に、存外すぐ慣れるんだよね。この間も引かれてた線一本越えた感じがしたんだよ。俺を最初見たとき毛を逆立てた猫、いや、ライオンあたりにでもしておこうか、そんな感じだったのに。シャープペン一本壊したぐらいで落ち込むくらい精神的には弱くて・・・何であんな最強で最弱のものを、この世界は作り出したんだろう」
――― 臨也?
その長い言葉を聞いて、新羅はふむ、と顎に手を当てた。
「君ってさ、色々曲がってるよね」
「まぁ、真っすぐな人間ではないと思うよ」
俺が真っすぐだったら、この世の人間のほとんどが鋭利な直線になるんじゃないかな。
臨也は嗤った。そうじゃなくて、と新羅は結論を言った。
「好きなの?静雄のこと」
「好き?まさか。冗談だ」
そう言って、臨也はカップに口をつけた。
「そうやって短絡的に結びつけるところはまだ君も高校生だね。最初に言っただろう?興味だって」
あくまで興味と言い張る臨也に、新羅はかまを掛けてみた。
「興味、ね。確かに僕も静雄に興味はあるよ」
「へぇ」
瞬間、臨也の目の色、目つき、空気が少し変わった。それを感じ取りながらも、新羅は続けた。
「あの筋肉、骨格、体格でどうして自動販売機とかアスファルトに埋まった標識とか重いものが持ち上げあれるのかってね。解剖してみたいよ」
「それは彼が死んでからにしてくれないかなぁ」
そう言うと、臨也はソファから立ち上がった。いつの間にか変化はすべて消え去り、横に置いていたコートを羽織り、玄関へと歩き出した。
「俺この後仕事だから、また後でよろしく。じゃあねー」
ドアが閉まり、新羅はダイニングテーブルからソファへと移動した。
「また後でって、今日も怪我すること決定なのかい」
仕方ないなぁ。新羅は医療器具一式を準備しておくことにした。
そして、臨也は短絡的で高校生だと言ったが、明らかにあの空気の変化は間違いないと新羅は一人マグカップを片手に深く頷いた。
「というか、やっぱり好きなんじゃないか。静雄のこと」
案外短絡的なのは臨也の方じゃないかなぁ。マグカップを一気に呷って残りを飲み干し、新羅は事務室、もとい治療室の清掃を始めることにした。
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プロフィール
HN:
獅子エリ
性別:
女性
職業:
大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。8月下旬~12月中旬までドイツ。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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