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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/04/19 (Fri) 23:40:59

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No.148
2012/01/07 (Sat) 22:20:27

(煩い煩い煩い・・・)

ドイツの部屋で昼寝をしていたプロイセンは、下の階から聞こえる雑音に目を覚ました。
目覚めが良くないため、眉間に皺がよる。
何を言っているのかは分からないが、誰かが言い合いをし、誰かがわがままが通らなくて大泣きしている子供のような状態にあるのは分かった。
すると、雑音が膨張した。ドア一枚隔てた先の廊下に広がったと思えば、小さくなり、代わりに誰かが階段をのぼって来る音がわずかに聞こえた。
プロイセンはベッドから下り、何も着ていなかった上半身を晒す訳にはいかないと思い、近くに放っていた濃紺のワイシャツを羽織った。
しかしそれでは少し肌寒かったゆえ、勝手にドイツの上着を拝借した。

「・・・・・・」

若干、袖が余ってしまった。それが少し癪に触ったので、自分の軍服を羽織りなおした。
すると、不意にドアが開いた。

「なんだ、起きていたのか」
「・・・ヴェストか」

プロイセンは入ってきたドイツを見てから、再びベッドに沈んだ。

「あの騒音の中寝てられるかって」

今だ騒音は下からノイズとして鳴り響いている。

「下で何やってたんだ」
「・・・イタリアが昼食にパスタ食べたいと言い出し、日本がソバとやらを薦めたんだが気に入らなかったらしく暴れ出し、
そこにフランス、イギリスがまだやっていたのか、例の言い合いの意見求めに来てアメリカが無駄な発言を始めて、ソバを批判された日本が冷静さを失ってしまい」
「あー、もういい。要は収拾がつかなくなった訳か」
「まぁ・・・」

プロイセンは小さく溜息を吐いた。

「んなもの、剣抜いて軽く脅せ」

ちゅどーん・・・

その音の後、暫く騒音は静まったが、再びなり始めた。

「・・・坊ちゃんか」
「あぁ、オーストリアだ・・・」
「・・・よし、オレ様が黙らせる」
「出来るのか?」
「まぁ、軽ーくお願いするだけさ」

 

 


数分後・・・

 

 

「「「すみませんでしたー」」」

嫌に爽やかなプロイセンの前で、ドイツは自分に土下座をする騒音源達を目の当たりにすることとなった。
因みに、その中にオーストリアは含まれていなかった。
プロイセン曰く、「アレは黙らせられない」かららしい。

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No.147
2012/01/07 (Sat) 22:18:56


「ア、アメリカ?」
これは夢なのか?
イギリスは自分の頬を軽く抓った。
痛い、痛みを感じた。それだけで夢ではないと判断するのは少し浅はかかも知れないが、そんな事以上の、一種の喜びがイギリスを支配してしまった。
「そんなアホ面しないでくれないかい?」
それに対峙していたアメリカは、床に落としてしまったテキサスをその小さくなった手で拾い上げた。
現在のアメリカの姿は、まさにイギリスの記憶に大切にしまわれていた、幼児と言うに相応しいものであった。
幸か不幸か、記憶はそのままのようだった。
「何かわ・・・いや、何があったんだ!」
「オレだって、分からないさ」
はぁ、と溜息をつく小さなアメリカ。
「ッ・・・!」
イギリスは伸ばしかけた手を急いで引っ込めた。
(あ、危なかった)
つい条件反射で、抱き上げようと手が出てしまった。
また面倒なことに、身長差が著しく開いており、アメリカはイギリスの顔を見るのにほぼ真上を見なくてはいけなかった。
「イギリス」
「な、何だアメリカ」
「・・・・・・」
アメリカは無言で、イギリスに手を伸ばした。まるで子どもが大人に抱っこを求めるかのように。
「えっ?」
「だから、抱っこしてよ」
記憶がそのままのせいか、少し頬を染めて、ぶっきらっぽうな口調でアメリカは言った。
その台詞に、イギリスは卒倒しかけた。自分に甘えてばかりいたのも可愛かったが、こういう性格も悪くない。むしろ、と表に出せば即変態と言うレッテルを張られてもおかしくない事を、イギリスは思った。
「あぁ…分かった」
イギリスは一度しゃがむと、アメリカの脇の下を掴んで、ひょいと持ち上げた。
そして人形を上品に抱くようにアメリカを抱き直した。
「これでいいか?」
「うん」
アメリカはイギリスの顔を見た。まだ若干見上げる位置にはあるが、首は幾分楽になった。
「で、どうやったら戻るんだろう」
「というか、お前何で小っさくなったんだよ」
ここにきて、イギリスは最初にすべき質問を言った。
「それが分からないんだ」
「は?」
アメリカはうーんとうなって思い出そうとする。しかし何も出て来ない。
「何か変なもの食ったとか、そういうのないのか?」
「その辺の記憶が完全に吹っ飛んでるみたい」
「そうか・・・」
イギリスは様々な可能性について考えた。そのまま立っているわけにもいかないので、イギリスは近くにあった椅子に座った。アメリカは勿論膝の上。必然的に、アメリカはイギリスに体重を預けた。
(・・・懐かしい匂いだな)
深緑の軍服に顔を少し埋めてみた。
「何だアメリカ」
「別に、君は相変わらず変わらないなって」
「それは褒めてんのか、貶してんのか」
「別にどっちでもないよ」
「全く・・・解決策考えろ、バカ」
イギリスはそう言って、机の上に放置していた怪しい本を開き始めた。
どうやら英語ではなくイギリスの古語で書いてあるらしく、アメリカにはいまいち理解が出来なかった。















暫く経って、アメリカが言った。
「というか、これキミの御家芸で治せないの?」
「・・・・・・」
「その無言は何だい?」
「・・・チッ」
その舌打ちは明らかに「気付きやがったな」と言っていた。
「出来るんなら早くやってよ!」
アメリカはイギリスの服の襟を掴んだ。
「そんな言い方する奴、治してなんか」
「お願い、お兄ちゃん!」
「?!」
意表を突いた、イギリスには効果抜群の言葉攻撃だった。おまけで無意識なのか、首を少しかしげていた。
「お願い・・・」
「・・・わっ、分かった。分かったからそれは止めてくれ」
とどめの上目遣いに、イギリスは口に手を当てて折れた。これ以上こんな攻撃を受けていては自分の処理能力という名の理性を超えてしまう、そう判断した。
スーツの一体どこに隠し持っていたのか、イギリスはお国発某魔法物語のような杖を・・・ではなく、どう見てもおもちゃにしか見えない可愛らしいステッキを出した。そして、奇怪な掛け声と共に、アメリカの頭を軽く叩いた。すると、ポンと小さな水素爆発のような音を立てて、アメリカの体は煙に包まれた。
刹那、膝の上のものの質量が増した。煙が退くと、見慣れた青年のアメリカがいた。
「よし、戻ったね」
そう言ってイギリスの膝から降りようとした所、先に腰に手を回された。故に、アメリカはイギリスに被さるように中途半端に立った体勢となった。
「ちょっと、イギリス?」
「・・・あー、昔はあんなに可愛かったのに」
「そうかいじゃあ離して」
「今も何だかんだで、可愛いんだよな」
「・・・イギリスさん一体何をおっしゃっているので?」
アメリカは、大して視力は悪くないが、テキサスをかけた。
「べっつに、ただ」
不意に会議室の戸が開いた。
「おい、アメリカ、イギリス。そろそろ会議を再開・・・」
そう言って入ってきたのは、ドイツだった。
「あ、」
「やぁ」
「・・・・・・」
しばし沈黙。
「あー、その・・・すまん、邪魔したな」
そう言い残して、ドイツは静かに扉を閉めた。
「・・・明らかに、別の方にいってたな、思考」
「ご、誤解だよドイツ!」
意外にもあっさり解けたイギリスの拘束を気に掛けず、アメリカはドイツの誤解を解くため走り出した。
「・・・・・・」
急に空虚になった腕を寂しく思いながら、イギリスも後を追った。

No.146
2012/01/07 (Sat) 22:18:16

 大戦が終結して、はや16年が過ぎた。
時代の流れとは恐ろしいもので、社会経済は幾分か回復し、円滑とは言えないが、ゆっくりと回り始めていた。
しかし、複雑な分割占領は今なお続き、首都はまだ四分割されたままである。
戦後処理に、軍事に、公務に追われていたドイツは毎日が地獄のように思えた。しかし国民の表情が以前より明るくなりつつあるのを見る度、それはどこかへ行ってしまう。そして、頑張らねばと思った。最初は、負傷した身体を引きずりながらの活動であった。
二つの反立した経済体制が一国内で成り立っているのも、プロイセンというもう一人の“ドイツ”がいたからだろうとドイツは思った。
いずれはまた1つの、自分たちの“ドイツ”に戻ることを願った。

 


そんな中、それは突如として現れた。
仕事の合間、少し時間の余裕をとらねばと、気晴らしに外へ出て町の中心のほうへと散歩に出かけた時。人はいなかった。

「何だ・・・これは、一体・・・」

ドイツはその場に呆然と立ち、“門”を見上げた。

戦勝記念に立った、自分の凱旋門だと、プロイセンが自慢していた“門”が、門であるはずなのに先がない。左右を見渡しても、門より先の街は遮断されていた。
近づいて触ってみれば、コンクリートの冷たく硬い感触。完全に“壁”である。跳躍してもその先は見えないくらい、高い。

「スゲーだろ」

不意に声をかけられ、ドイツははっと横を見た。

「兄さん・・・」
「よっ」

プロイセンがその壁にもたれかかっていた。国だった時の紺青の軍服を着ていた。
ここ2、3日姿を見ていないと思っていたら、こんなにもあっさりと姿を捉えることができた。

「久しぶりだな」
「あぁ・・・それより、これは」

何だ、そうドイツが続けようとしたときだった。

「これはね、“しきり”なんだ」
「ロシア・・・」

プロイセンの後方にはロシアが、ソヴィエトの陣営がいた。

「こんなところにいたのかい」

今度はドイツの後方から声がした。

「探したよ、ドイツ」
「アメリカ」

ドイツの後方にはアメリカだけでなく、イギリス、フランスがいた。互いに数人の軍人を連れており、ドイツとプロイセンを介して対峙しているように見えた。
否、実際に対峙している。

「おいおい、物騒なモン構えんなよ。怖くて話せねーじゃんか」

プロイセンは構えられている銃を見て、軽く両手を挙げた。

「撃つ気はないよ、一応最後なんだから」

いずれも腕で「撃つな」と合図を取る。

「最後・・・?」

ロシアの言葉に、ドイツは引っかかりを感じた。

 

アメリカ・イギリス・フランス、ロシア。壁、そして「最後」。

 

聡い、というのは時として残酷である。

「・・・プロイセン」

ドイツはプロイセンを睨んだ。

「説明は要らないみたいだな」

プロイセンは腰に手を当て、ドイツを見た。いつもの目の色をしているのが、ドイツの気に障る。

「なぁに、ちょっとした別れだ。べつに消えはしねーよ」

そう言って、ドイツの肩を叩く。いつもは加減を知らないのかというくらいに強く叩かれるが、今はとても弱く、優しかった。

「お前は“ヴェスト”だ。丁度いいじゃねーか」
「何が丁度いいんだ!」

ドイツは壁を拳で殴り、

「丁度良い訳がないだろう!」

そして怒鳴った。

「東側の状況を解って言っているのか?!」
「あぁ」
「何故、もっと早く言ってくれなかった!」
「悪かった」
「どうして、一人で決めたんだ!」


「東に行きたいからだ」

最後の言葉だけ、はっきりとした意思が感じられた。ドイツはプロイセンの腕を掴んで、止まった。こんなにも簡単に掴める手だっただろうか、と。

改めて、プロイセンの顔を見る。

「頼む、行かしてくれ」

紅の双眸から、滴る雫。

ドイツは初めて、父であり兄であるものの「哀」を見た。

東。

ブランデンブルク、ザクセン、メクレンブルク=フォアポンメルン、ザクセン=アンハルド。

「大切なものをさ、もう失いたくないんだ」

プロイセンはドイツの肩口に顔を伏せた。

失った“国”としての自分、破壊された故郷、王の丘。
理由が解らないわけではない。解りたくなかった。

「俺だって、失いたくない」

ドイツは壁を殴った手をより強く握った。
その時、プロイセンが顔を少し上げ、ドイツの耳元で囁いた。

「Durch leiden Freude,West」

それはある有名な、「楽聖」と呼ばれた者の言葉だった。
そして完全に顔を上げ、プロイセンはドイツから数歩離れた。

「壁なんて、所詮ただの壁だ。障害になろうといつかは壊れ、越えていける」

そこにもう涙はなかった。代わりに、“覚悟”と“確信”が見えた。

「じゃあな、ルードヴィッヒ。我が兄弟、我が王よ」

そう言って、プロイセンは視線をドイツの後方へと移した。

こいつをよろしくな。

視線で言ったが、三人は、はっきりと聞いて取れたように感じた。

そして踵を返し、背を向けた。

「待て・・・ッ!」

ドイツは追いかけようとした。
しかし、阻害された。

「行かせるわけには、行かないよ」

アメリカが、しっかりとドイツの腕を掴んだ。

「アメリカッ・・・離せッ」

振り払おうと腕全体を動かすが、外れない。ドイツの身体も、大戦のせいでまだ回復しきっていなかった。
その間にも、プロイセンはソヴィエトの側へと足を進めていく。

「ッ・・ギルベルトッ!」
「来るなッ!」

プロイセンは足を止めた。

「いいか、絶対越えるんじゃねーぞ!分かったな!」

そして、もう振り返ることなく歩いて行く。

(嫌だ、解りたくない、解りたくない、解りたくないっ!)

だが、実際はどうなのか。阻害されているとはいえども、それとは別に、足が重くて前に出ない。何かに引っ張られ、地に縫い付けられる感覚。これは一体何なのか。

「じゃあね、西ドイツ君。アメリカ君たちもね」

東ドイツ君はありがたくもらっていくよ。
そう言い残し、ソヴィエト側も背を向けた。
その先に、ドイツは光を見ることができず、その場に膝をつき、頭を下に向けた。
そして同時に気づいた。この足の重さは、国民のすべてなのだと。結局自分は、去り行く兄より、“自分”を選んだのだ。

(なら、俺がやるべきことは)

立ち止まっては、いられない。

「「・・・・・・」」

イギリスは、ドイツの感情がわからないでもなかった。思い返される独立戦争の悲しみ。同じだったはずのものが、欠けていくその辛さ。
フランスも、かつての旧友が、敵側に回ることは許せない。許せない以上に、止められないことが悔しい。
しかし、同情することは許されない。

ロシアたちを乗せたであろう軍のヘリを見送って、ドイツは言った。

「離してくれ、アメリカ」

痛いんだ、そう付け加えて。

「あぁ、ゴメンゴメン」

アメリカはすぐに手を放した。ドイツの手首には少し赤い痕が残った。
すると、ドイツは門に背を向けて歩き始めた。

「おい、どこへ行く気だ」

イギリスが問いかけた。

「仕事の続きだ」

まだ結構な量が残っているからな、と付け加えて。

「お前、正気か?」

フランスが問いかけた。

「正気も狂気もない。俺は俺だ」

そう言って、ドイツは町の中に消えていった。

 


窓の外の目下には、首都の鳥瞰図が広がっていた。細くではあるが、壁も見える。

「たいした演技だったね」
「・・・るせぇ」

その風景を、プロイセンは整理のつかない心中で見下ろしていた。

「そんな顔じゃ、なぁんにも効果ないよ」
「黙って進めろ」

何が嬉しくて、ロシアの隣に座らなければならないのか。

冬季面での軍事力は認めているが、個人の性格はどうも好かない。無邪気に言い出すことが、あまりにも恐ろしいからだ。
向こうについたら、まず何をするのか。

プロイセンは片足を座席に上げ、膝に額をのせた。

「・・・ヴェスト」

ポツダムは、ブランデンブルクは、東は守りたい。なんとしても。

(本当、お前が西でよかった)

 

 

 

仕事部屋の扉の前で、ドイツは一度足を止めた。

「Durch leiden Freude・・・」

苦しみを経て、喜びに帰れ。
もう後悔はない、しない。

「俺は、必ず・・・」


必ず、“ドイツ”を取り戻す。

No.145
2012/01/07 (Sat) 22:14:29

 会議後の生徒会室は閑散としていた。会議中の騒がしさが嘘のように消え去り、縦長の大きな窓からさす西日がなんとも言えない穏やかな雰囲気を醸し出していた。デスクに残っている紙の山はほとんどが廃棄されるべき古紙であり、必要な紙はすでに目を通し、棚にずらりと並んだファイルの中に納められていた。
その室内で、アーサーは一人、窓際に座り紅茶を楽しんでいた。彼にとってこの時間は至福の一時であった。騒がしい弟もいなければ、何かと突っかかってくる幼馴染もいない。さくり、と別の学部の友人から貰った市販のクッキーをかじった。
向かいのだれも座っていない椅子の前には、カップの伏せられたソーサーが一式、その横にはクッキーの乗った皿が置いてあった。これらは、これから来るであろう生徒のために用意されたものであった。
紅茶を啜りながらちらりと時計を見やれば、五時一分前。同時に、外の廊下に足音が響き始めた。

そして長針が一歩進んだ瞬間、ドアが開いた。

「よぉ、邪魔するぜ」

ノックもなしに入ってきたのはギルベルトだった。短い銀髪をかきあげながら、かつかつと近づき、アーサーの前の椅子に座った。そして皿に乗ったクッキーを一枚掴んで一言。

「…今日は市販品かよ」

ティーカップをひっくり返し、紅茶を注ぎながら、アーサーは言った。
「悪かったな。忘れたんだ」

暖かい紅茶はふわりと湯気を立てながら、ギルベルトの前に置かれた。品の良い香りが鼻をくすぐった。

「その分、紅茶はいい葉にしてある」
「いい葉なら、いい菓子も必要だろが」

そういってにやりと笑ったギルベルトは、鞄とは別に持っていた紙袋をテーブルの上に置いた。その中から出された箱は簡素な茶色の箱だった。

「何だ?それ」
「ふふん、“いい菓子”だ」

しかし、いい菓子というにはラッピングが安すぎだった。リボンもデザインも何もない、どこにでも売っていそうな安物のラッピングだった。
だが箱を開ければ、そこにはきれいな焼き色をした小ぶりのケーキが二きれおさめられていた。飾りもクリームもない質素なケーキだったが、アーサーは笑みをこぼした。

「お前が作ったのか」
「まーな。いっつも作ってもらってばかりじゃつまんねーしよ」

アーサーはデスクの引き出しから円形の紙ナプキンを二枚と輪ゴムを取り出した。そして皿に乗っていたクッキーをナプキンで包みその口を輪ゴムで縛り、テーブルの端によけた。ギルベルトはそのあいた皿にケーキを乗せた。

「っと、フォークも必要だな」
「ぬかりはないぜ」

そういって、ギルベルトは紙袋から、先を紙で巻かれたフォークを二本出した。


それを受け取り、アーサーはケーキを一口口に入れた。

「…ん、うまいな」
「当たり前だ」

ギルベルトはカップを口につけ、一口すすった。

「お、確かにいいな。これ」
「俺のとっておきだ」

口の端を吊り上げ、アーサーはもう一口、紅茶を飲んだ。

「さすが、紅茶にうるさいカークランド会長様だな」
「紅茶は紳士のたしなみだ」

その言葉に思わず吹き、フォークをくるくると振りながら、ギルベルトは返した。

「料理は、まだまだだけどな」
「…うるさい」

こうして、今日も静かにお茶会は続いた。

No.144
2012/01/07 (Sat) 22:13:42

なんとなく、学ヘタ。
(英・米・独・南伊・普・西・仏登場)


朝、八時三十分少し前。

生徒会長アーサー=カークランドは来るべき敵に備え、アルフレッド=F=ジョーンズ、ロヴィーノ=ヴァルガス、ルートヴィッヒ=バイルシュミットと共に門の前に防衛線を敷いていた。
「今日こそその首根っこ掴んで、悪魔召還の生贄にしてやらぁ・・・」
「いや、遅刻を注意するのが目的だろう」
あまりに非現実的な、いや実現させてしまいそうな生徒会長を見て、ルートヴィッヒは口を挟まずに入られなかった。
「別にいいじゃねーか」
とロヴィーノ。
「いいのか?帰ってこなくなるぞ」
「そんなんであいつが死ぬかってんだ。というか、気安く話しかけんなジャガイモ野郎!」
生贄なのにその確証はどこから来るのやら。まぁ、たとえ生贄になっても化けて出そうな連中ばかりだなと妙な納得をしてしまうルートヴィッヒ。
「というか、何でオレがここに呼ばれてるのさ」
包み隠さず大口を開けて欠伸をするアルフレッド。
「昨日は菊から借りたゲームで徹夜したんだよ」
「それは身体に悪いぞ」
「いやー、本当菊の持ってるゲームはやりこみ甲斐があってさー」
聞く耳持たずである。
「暴れるかって聞いて乗ってきたのはお前だろ」
とアーサーが言う。
「えー、そうだっけなー?」
「おいっ!」
「はぁ・・・」
ため息しか出ない。
すると、遠くから走ってくる三人組が見えた。ギルベルト=バイルシュミット、フランシス=ボヌフォア、アントーニョ=フェルナンデス=カリエド。
「おい、来たぞ」
そうルードヴィッヒが声をかけるも、アーサーとアルフレッドはその後罵詈雑言を飛ばしあい始めたのか全く反応しない。一方ロヴィーノは興味がなくなったのかさっさと校舎に向かっているではないか。
「おい」
「だから君は!」
「そういうお前だって!」
「・・・・・・」
そう言っている間に、三人組は門の前に来てしまった。
「よぉルッツ!早ぇーじゃねーか!」
とギルベルト。
「あ、待ってぇなロマーノぉー!」
とアントーニョ。
「お、今日も痴話喧嘩真っ最中ってか?」
じゃあなー、と付け足してフランシス。
彼らは何の苦労もなくあっさりと、生徒会長の防衛線を越えていった。
それにさえ気づかない二人。
同時に、チャイムがなった。
「おい」
「「何だ!」」
「越えていったのだが」
校舎のほうを指差すルートヴィッヒ。もう三人組の影はなかった。
「ああっ!くそっ!」
「全く君は、本当に生徒会長かい?」
「これはお前のせいだろーが!」
「君が乗ってきたんじゃないか!」
「・・・・・・」
もはや収拾をつける必要性を感じなくなり、ルートヴィッヒも校門に背を向け、校舎の方へと歩き始めた。

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プロフィール
HN:
獅子えり
性別:
女性
職業:
大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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