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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/04/28 (Sun) 20:35:38

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No.186
2012/08/17 (Fri) 16:39:26

 日付を追ってとじたファイルは、現在でも活躍している青峰のものが一番厚いのは仕方の無いことだった。中学時代の写真から見ていくと、体格や動きの変化が非常によく判った。ジャンプをした瞬間の、トップで体が伸びている状態のカットを見る度、非常に恵まれた体格であることが分かる。続いて火神。あの桁外れの跳躍力はアメリカでも十分に通用していた。
 
 青峰と火神の対談(スポーツ選手も大変だ、と思わせる、ファッション誌のような写真もすべて残してある)を見ると、当初の険悪ムードが嘘のようだ。敵同士が、今や同じチームで戦う仲間なのだから。一番面白かったところは、やはり英語に関する項目で、火神が青峰を馬鹿にした一文だった。あれは酷い、人の事いえないだろうと降旗は思わず声に出して突っ込んでしまった。
 
 赤司のページは、帝光時代の発言が既に中学生のものではなかった。今だからこそ理解できるが、実際に中学生でこれを読んでいたら、何だこいつと思っていたことは容易に想像できた。髪は、今の彼の長さとほぼ同じであった。連鎖的に思い出すあの邂逅に良い印象はない。現在の時点では恐怖から苦手に軽くなった。
 
 記事を読んでいると、手が、腕が、脚が、体全体が疼いた。視界の端に暗い橙のボールが入るなり、降旗はそれを抱えて外に出た。
 
 バスケットゴールのある公園まで走れば、部活帰りらしい高校生の集団が5人ほど集まって、順に1on1をやっており、彼らの着るジャージは懐かしい色をしていた。
 
「なぁ」
 
降旗は思わず声をかけた。
 
「俺も参加して良い?」
 
高校生達は最初こそ戸惑った。しかし降旗が誠凛のバスケットボール部の元部員であったことや部員しか知らない内情を話せば、その緊張は一気に解けた。また、6人になったことで3on3をやることもできた。
 
 聞いた話、監督は今でも誠凛高校に顔を出しており、その日は地獄のような練習になる。それが毎日だったと言えば部員達が青ざめた。彼女の残していった基礎メニューは現在でも続いており、誠凛は毎年I.H.まで出ているのだから、強豪校と言えるし、もちろん彼らも強い。
 
 解散する頃には、すっかり体力を持ってかれてしまっていた。
 
 
 
 全学部共通科目、健康科学の講義が終わってすぐ、降旗は前に座っていた友人に声を掛けられた。
 
「この後カラオケ行こうぜ」
 
バイトの先輩から割引券貰ったらしい。左右に座っていた友人達はすぐに首を縦に振った。丁度歌いたい新曲がある、とか、ストレス発散したい、という声が耳に入ってくる。ところが降旗はそれに倣うことはできなかった。
 なぜなら、今日は木曜日である。
 
「悪い、今日約束があるんだ」
 
机上に広げていたプリントを挟み入れたファイルを、筆箱とともにリュックへぞんざいに投げ入れる。そうすれば帰宅の準備が整った。
 
「何そんなに急いでんだ?」
 
そのあまりの手早さに、友人達は少し驚いた。
 
「絶対に遅れたくないんだよ」
 
そういい残し、降旗は講義場を出た。
 
 講義が終わったのは14時50分。約束の16時までには一時間ほど残っていた。これなら十分先に着くと踏んで、本屋に立ち寄った。雑誌コーナーまで足を伸ばせば、中古から買い揃えたバスケットボール雑誌の最新号が出ていた。目次を開いて特集を確認すると、「青峰大輝」の文字が目に入った。他にもインカレの注目選手の特集も掲載されていた。出身大学を見ていけば、この大学出身現役選手もインタビューに答えていたことがわかった。後ろから状態の良いものを一冊抜き取り、降旗はレジへと向かった。
 
 待っている間に読んでしまえば良いだろう。階段を下りてセンタービルのエントランスに向かうと、そこには人だかりができていた。
 
(有名選手でも来たのかな?)
 
この大学に入って珍しくもなんとも無い光景となったが、それでも一目見たさに集まる生徒は絶えない。現在の中心は誰かと、下りかけた階段を登って上から覗いて見る。集団からやや間のあいた中心には鮮やかな赤い髪が目に入った。
 
「……はい?」
 
赤司征十郎が、既に待ち合わせ場所に立っていた。
 
 降旗は慌てて腕時計を見た。15時に差し掛かるぐらいだった。もう一度確認しても、短針はまだ3の上にあり、長針はまだ1にすら差し掛かっていない。秒針がただ一秒また一秒と進むのみ。幾らなんでも早すぎではないか。
 
(この中に割って入っていくって結構勇気というかなんと言うか…)
 
すぐに行きたいところだが、集団を成す殆どが女子生徒であり、思わず苦笑いがこみ上げた。その際に漏れた声が偶然にも聞こえたのか、赤司の頭が上を向いた。
 
「何をしているんだ?」
 
見つかってしまった。視線もばっちりと合ってしまった。隠れていたつもりも、遅刻したわけでもないのにこみ上げる罪悪感は一体何だろうか。降旗は小走りに階段を下りて、先ほどの考えは何処へ、女子学生の間を分け入って、赤司の前に立った。
 
「ごめん」
「謝ることはないだろう。まだ15時過ぎたところだ」
 
早いという認識は赤司の方にもあった。三時間目のあとに入れていた予定がキャンセルとなり、他にする事が待ち合わせだけであった。
 
 降旗は待ち合わせという行動を根本から考えたくなったが、それが言葉として外に出る事はなかった。
 
「行こっか」
 
 
 
 
 帰り道が実は同じ方向だったり、降りる駅が同じだったり、何となく振ってみた地元ならではの話が通じてしまった。お互いに驚きの連続で、どこかですれ違っていたかもしれないと考えた。
 
 降旗の家は最寄りのバス停から5分の住宅街の一角にある。赤司の実家はどんな風なんだと尋ねれば、平屋と返ってきた。
 
「じゃあ、家では和服なんだな」
 
そう降旗が冗談交じりに言ってみると、なんと事実だった。
 
 一体赤司の家はどうなっているのだろうか。興味と別のなにか半々の思いを抱きつつ鍵を開けて自室に案内すれば、少しだけ緊張が和らいだ。
 
「飲み物、何が良い?」
「学校に持って行った残りがあるから大丈夫」
「、分かった」
 
降旗はドアノブから手を離し、本棚の前に座った。一段分のファイルをごっそりと取り出すと、テーブルに積み上げていった。
 
「これが青峰、そっちが黄瀬と緑間、で、こっちが赤司、紫原、あと火神のも一応」
 
テーブルに置かれたファイルは姓に含まれる色で区別されていた。火神のファイルはスポーツメーカーが出していた赤地に黒のラインの入ったもので、赤司のものと見分けがつくようになっていた。
 
 赤司は自分のと示されたファイルを手に取った。一ページ目を見れば、懐かしい帝光中学校のユニフォームを着た過去の自分がいた。何時の間に撮られていたのか、全国大会の試合中の一枚だった。暫く写真のみが続き、やがてあのインタビュー記事にたどり着いた。発言内容は、実際に発言したものから大分柔らかい表現に変えられていた。そのまま書かれていたら大変な騒ぎになっていたかもしれない、と今更になって振り返った。
 
 他にも、黒子の見切れた写真や誠凛含む強豪校の選手達の写真もあった。
 
「後々考えてみると、凄い奴らと戦ってたんだなって今でも思うよ」
 
I.H.もW.C.も、決勝トーナメントは必ずといって良いほど、キセキの世代を獲得した高校が名を連ねた。降旗はスタメンには加わらなかったが、予選でも本選でも、交代でコートに入るぐらいの実力を得た。赤司の試合のビデオを見て、PGの勉強をしたのも懐かしい。
 
(そういえば、あのノートは何処へやったんだっけ)
 
そう思った矢先、赤司の手にある大学ノートのタイトルを見て降旗は焦った。
 
「それ!」
「よく研究しているね」
 
だが、甘い。赤司はそう付け足し、自分なら書き加えると推定できる項目を頭の中で展開して、止めた。自分で気づかなければ意味が無い。ノートを閉じて、降旗に返した。
 
 一通りファイルに目を通して、赤司が次に注意を向けたのは降旗の本棚だった。立ち上がってその前に立てば、雑誌だけでなく、バスケットボールの基本ルールの解説書から応急手当まで様々な本が並んでいた。降旗は、ひとつの事にのめりこむタイプなのだろうと赤司は分析した。
 
 本のいくつかは付箋や書き込みがなされており、そのメモもまた的を射たものばかりであった。中には選手以外の視点で初めて知ること、参考書に対する批判も書かれていた。
 
「監督の助言書いてたらなんか凄いことになってた」
 
本を読んでいると、逐一内容に触れた知識を口頭のみで説明をしてくれ、慌てて書き取っていた頃が懐かしかった。途中で選手よりマネージャーの方が向いているんじゃないかとも言われたが、あの頃はまだ選手でいたかった。
 
「マネージャーとして、その知識を活用してみないか?」
 
その言葉に、降旗はページを捲っていた手を止め、赤司を見上げた。
 
「使える奴が少なくて困っているんだ」
 
赤司は膝を折り、降旗に視線を合わせた。赤と金の双眸に見つめられ、降旗は忘れかけていた緊張感を戻してしまった。確かに知識を実践に回すのは大事なことだ。しかし相手にするのは名を持った選手たちであり、自分が言ったところで聞き入れてもらえないという不安もある。
 
 そして口から出た答えは。
 
「俺、で、よければ」
「決まりだ。早速明日から参加してもらおう」
 
机に置かれたのは、懐かしい入部届だった。更に付け加えるならば、その入部届けは降旗が名前と捺印するだけで受理まで終わる状態になっていた。つまり、書く前に既に受理の判が押されているのだ。
 
「サークルではないから、マネージャーでも大学の方に届け出る必要がある」
 
色々とつっこみたい所があったが、どこか嬉しそうな赤司を見ていると、あぁ、赤司だもんな、と納得してしまう自分がいた。
 
 
 
 
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日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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