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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/04/30 (Tue) 23:17:10

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No.146
2012/01/07 (Sat) 22:18:16

 大戦が終結して、はや16年が過ぎた。
時代の流れとは恐ろしいもので、社会経済は幾分か回復し、円滑とは言えないが、ゆっくりと回り始めていた。
しかし、複雑な分割占領は今なお続き、首都はまだ四分割されたままである。
戦後処理に、軍事に、公務に追われていたドイツは毎日が地獄のように思えた。しかし国民の表情が以前より明るくなりつつあるのを見る度、それはどこかへ行ってしまう。そして、頑張らねばと思った。最初は、負傷した身体を引きずりながらの活動であった。
二つの反立した経済体制が一国内で成り立っているのも、プロイセンというもう一人の“ドイツ”がいたからだろうとドイツは思った。
いずれはまた1つの、自分たちの“ドイツ”に戻ることを願った。

 


そんな中、それは突如として現れた。
仕事の合間、少し時間の余裕をとらねばと、気晴らしに外へ出て町の中心のほうへと散歩に出かけた時。人はいなかった。

「何だ・・・これは、一体・・・」

ドイツはその場に呆然と立ち、“門”を見上げた。

戦勝記念に立った、自分の凱旋門だと、プロイセンが自慢していた“門”が、門であるはずなのに先がない。左右を見渡しても、門より先の街は遮断されていた。
近づいて触ってみれば、コンクリートの冷たく硬い感触。完全に“壁”である。跳躍してもその先は見えないくらい、高い。

「スゲーだろ」

不意に声をかけられ、ドイツははっと横を見た。

「兄さん・・・」
「よっ」

プロイセンがその壁にもたれかかっていた。国だった時の紺青の軍服を着ていた。
ここ2、3日姿を見ていないと思っていたら、こんなにもあっさりと姿を捉えることができた。

「久しぶりだな」
「あぁ・・・それより、これは」

何だ、そうドイツが続けようとしたときだった。

「これはね、“しきり”なんだ」
「ロシア・・・」

プロイセンの後方にはロシアが、ソヴィエトの陣営がいた。

「こんなところにいたのかい」

今度はドイツの後方から声がした。

「探したよ、ドイツ」
「アメリカ」

ドイツの後方にはアメリカだけでなく、イギリス、フランスがいた。互いに数人の軍人を連れており、ドイツとプロイセンを介して対峙しているように見えた。
否、実際に対峙している。

「おいおい、物騒なモン構えんなよ。怖くて話せねーじゃんか」

プロイセンは構えられている銃を見て、軽く両手を挙げた。

「撃つ気はないよ、一応最後なんだから」

いずれも腕で「撃つな」と合図を取る。

「最後・・・?」

ロシアの言葉に、ドイツは引っかかりを感じた。

 

アメリカ・イギリス・フランス、ロシア。壁、そして「最後」。

 

聡い、というのは時として残酷である。

「・・・プロイセン」

ドイツはプロイセンを睨んだ。

「説明は要らないみたいだな」

プロイセンは腰に手を当て、ドイツを見た。いつもの目の色をしているのが、ドイツの気に障る。

「なぁに、ちょっとした別れだ。べつに消えはしねーよ」

そう言って、ドイツの肩を叩く。いつもは加減を知らないのかというくらいに強く叩かれるが、今はとても弱く、優しかった。

「お前は“ヴェスト”だ。丁度いいじゃねーか」
「何が丁度いいんだ!」

ドイツは壁を拳で殴り、

「丁度良い訳がないだろう!」

そして怒鳴った。

「東側の状況を解って言っているのか?!」
「あぁ」
「何故、もっと早く言ってくれなかった!」
「悪かった」
「どうして、一人で決めたんだ!」


「東に行きたいからだ」

最後の言葉だけ、はっきりとした意思が感じられた。ドイツはプロイセンの腕を掴んで、止まった。こんなにも簡単に掴める手だっただろうか、と。

改めて、プロイセンの顔を見る。

「頼む、行かしてくれ」

紅の双眸から、滴る雫。

ドイツは初めて、父であり兄であるものの「哀」を見た。

東。

ブランデンブルク、ザクセン、メクレンブルク=フォアポンメルン、ザクセン=アンハルド。

「大切なものをさ、もう失いたくないんだ」

プロイセンはドイツの肩口に顔を伏せた。

失った“国”としての自分、破壊された故郷、王の丘。
理由が解らないわけではない。解りたくなかった。

「俺だって、失いたくない」

ドイツは壁を殴った手をより強く握った。
その時、プロイセンが顔を少し上げ、ドイツの耳元で囁いた。

「Durch leiden Freude,West」

それはある有名な、「楽聖」と呼ばれた者の言葉だった。
そして完全に顔を上げ、プロイセンはドイツから数歩離れた。

「壁なんて、所詮ただの壁だ。障害になろうといつかは壊れ、越えていける」

そこにもう涙はなかった。代わりに、“覚悟”と“確信”が見えた。

「じゃあな、ルードヴィッヒ。我が兄弟、我が王よ」

そう言って、プロイセンは視線をドイツの後方へと移した。

こいつをよろしくな。

視線で言ったが、三人は、はっきりと聞いて取れたように感じた。

そして踵を返し、背を向けた。

「待て・・・ッ!」

ドイツは追いかけようとした。
しかし、阻害された。

「行かせるわけには、行かないよ」

アメリカが、しっかりとドイツの腕を掴んだ。

「アメリカッ・・・離せッ」

振り払おうと腕全体を動かすが、外れない。ドイツの身体も、大戦のせいでまだ回復しきっていなかった。
その間にも、プロイセンはソヴィエトの側へと足を進めていく。

「ッ・・ギルベルトッ!」
「来るなッ!」

プロイセンは足を止めた。

「いいか、絶対越えるんじゃねーぞ!分かったな!」

そして、もう振り返ることなく歩いて行く。

(嫌だ、解りたくない、解りたくない、解りたくないっ!)

だが、実際はどうなのか。阻害されているとはいえども、それとは別に、足が重くて前に出ない。何かに引っ張られ、地に縫い付けられる感覚。これは一体何なのか。

「じゃあね、西ドイツ君。アメリカ君たちもね」

東ドイツ君はありがたくもらっていくよ。
そう言い残し、ソヴィエト側も背を向けた。
その先に、ドイツは光を見ることができず、その場に膝をつき、頭を下に向けた。
そして同時に気づいた。この足の重さは、国民のすべてなのだと。結局自分は、去り行く兄より、“自分”を選んだのだ。

(なら、俺がやるべきことは)

立ち止まっては、いられない。

「「・・・・・・」」

イギリスは、ドイツの感情がわからないでもなかった。思い返される独立戦争の悲しみ。同じだったはずのものが、欠けていくその辛さ。
フランスも、かつての旧友が、敵側に回ることは許せない。許せない以上に、止められないことが悔しい。
しかし、同情することは許されない。

ロシアたちを乗せたであろう軍のヘリを見送って、ドイツは言った。

「離してくれ、アメリカ」

痛いんだ、そう付け加えて。

「あぁ、ゴメンゴメン」

アメリカはすぐに手を放した。ドイツの手首には少し赤い痕が残った。
すると、ドイツは門に背を向けて歩き始めた。

「おい、どこへ行く気だ」

イギリスが問いかけた。

「仕事の続きだ」

まだ結構な量が残っているからな、と付け加えて。

「お前、正気か?」

フランスが問いかけた。

「正気も狂気もない。俺は俺だ」

そう言って、ドイツは町の中に消えていった。

 


窓の外の目下には、首都の鳥瞰図が広がっていた。細くではあるが、壁も見える。

「たいした演技だったね」
「・・・るせぇ」

その風景を、プロイセンは整理のつかない心中で見下ろしていた。

「そんな顔じゃ、なぁんにも効果ないよ」
「黙って進めろ」

何が嬉しくて、ロシアの隣に座らなければならないのか。

冬季面での軍事力は認めているが、個人の性格はどうも好かない。無邪気に言い出すことが、あまりにも恐ろしいからだ。
向こうについたら、まず何をするのか。

プロイセンは片足を座席に上げ、膝に額をのせた。

「・・・ヴェスト」

ポツダムは、ブランデンブルクは、東は守りたい。なんとしても。

(本当、お前が西でよかった)

 

 

 

仕事部屋の扉の前で、ドイツは一度足を止めた。

「Durch leiden Freude・・・」

苦しみを経て、喜びに帰れ。
もう後悔はない、しない。

「俺は、必ず・・・」


必ず、“ドイツ”を取り戻す。

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獅子えり
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大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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