教師パロです。
静雄→体育教師
臨也→養護教諭
というなんとも微妙な設定。
体育科教員がジャージ姿でいるのは別段不自然なことではない。各々有名なスポーツブランドのポリエステル製のジャージを好きなように着くずしている。
今年赴任してきたばかりの新米教師平和島静雄も例外でなく、袖と、ズボンの脇に二本の白ラインの入った、ギリシアの某島で見つかった女神の像と同じ社名のロゴの入った黒いものを、袖を捲って着ていた。自前の長身とモデル並のスタイルでジャージさえも見事に着こなすが、本人は至って無自覚無頓着この上なかった。金髪なのは先生としてどうなのかと思われるが、一度校長先生に注意され地毛の色にに戻したことはあった。しかし生徒から思いがけない文句を言われ、校長からはなぜか了承が出て、結局金髪に戻したのであった。もっとも、彼は裏で糸を引く人物を確実に察知していた。
本日は全校生徒が楽しみにしていた球技大会の日である。優勝すれば校内施設の利用優先権がかかっているだけに皆燃えている。たった一ヶ月の権利だが、無いに越したことはない。
静雄の担当は男子バスケットボールだった。しかし次の試合までに少し空き時間ができ、校門前まで足を運んだのがつい五分前。
「やぁ、平和島先生」
今では校内で禁止されてしまった煙草を、門の外でフェンスを背もたれにして立ち紫煙をふかせていると、生徒にとって魅力的な、静雄にとって苛立ちしか与えない声が背中にかけられた。振り返って返事をするのも面倒に思い、静雄は無視した。
「今日もいい天気ですねー」
空は快晴。雲ひとつない。洗濯日和の確かにいい天気だ。「テメェがいなきゃな折原先生」
静雄は煙草を口から離し、了承してもいないのに横に立った白衣の教員折原臨也を睨んだ。
「ひどいなぁ、俺結構愛されてるのに」
確かに臨也の容姿は静雄に劣らない。むしろ勝っているのかもしれない世間的には。だが静雄にとっては言語道断。なぜこのような人間が愛されるのかわからないどころか理解不能である。静雄は再び煙草を口にくわえようとし、同時にそれを奪われた。
「体育教員なのに煙草はだめだよー、シズちゃん」
最後の呼び方に、静雄のこめかみに青筋が立った。実は静雄は、臨也とは同輩の仲であった。お世辞にも仲が良いとは到底言えない。
「テメェ・・・大体、今日は球技大会だろ」
職務怠慢か。そう言ってやれば否定の言葉が返ってきた。
「俺はまじめに仕事しようとしたよ?でも俺がいると怪我人が保健室に入れないって新羅に言われてね」
本当、馬鹿だよねぇ。
臨也は侮蔑の色をたたえた笑いをこぼした。確かに、常時の保健室は常に女子生徒であふれている。まぁ、大半が臨也との会話目当てなのだが。時折正しい怪我人が来くるのだが、女子たちに冷たい目で見られるという何とも非道な仕打ちを受ける羽目になるのが日常である。
ふと、臨也が話題を切り換えた。表情はいつもの食えない微笑に変わっている。
「そういえば、今日最後のイベントで生徒バーサス教員のバスケットガチバトルあったよね」
「あー、そんなもんもあったな」
めんどくせぇ・・・。静雄はポケットに手を突っ込み溜息をついた。スポーツは嫌いではないのだが、如何せん人並み以上の力を持ち合わせているため、ゴールを壊すことなど朝飯前だ。なのに選手に推薦されてしまったのだ。
「応援してるよ」
「・・・は?!」
臨也の言葉に、静雄は激しく動揺した。
「だって、教員が負けたら今度の試験を簡単にしなきゃいけないんだよ、まぁこれはどうでもいいけど、生徒が選んだ先生が一カ月担任やらなきゃいけないんだよ」
俺とって食われちゃうかも。最近の高校生すすんでるからねぇ。
臨也はわざとらしい演技で身を震わす。それを静雄は、動揺が収まり明らかに引いた目で見ていた。
「新羅より、お前のほうが変態だな」
「ちなみに負けたら切り刻むからね、シズちゃん」
臨也はそういうと、まるで置き土産をするかのように、静雄の手の甲にズボンの上からナイフを刺した。当然血は出るし、痛い。
「・・・・臨也アアァァァっ!!」
「あっはは!そうこなくっちゃ!」
白衣を翻し走る臨也の後ろを、静雄もまた全速力で追いかけた。
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