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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
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2024/04/29 (Mon) 09:26:04

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No.157
2012/01/07 (Sat) 22:27:59

第十話。とりあえず完結。


 その日は朝からさわやかな快晴だった。これで着納めとなるだろう制服に袖を通し、在学時と変わらない着崩しで、玄関先の鏡の前に立った。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
静雄は母親に見送られながら、家を出た。
 国公立二次試験合格発表日。多くの受験生たちが喜び、悲しみ、涙を流す一日である。
 静雄は発表開始時間に合わせて家を出た。すると、冬の寒さがまだ残る冷たい風が一筋吹き抜けた。思い返せばこの一年、今までにないいろいろなことがあった。家庭教師に会い、喧嘩が減り、銃で撃たれ、そして恋をした。

会場は大勢の受験生達で賑わっていた。少し離れたところで様々な塾や予備校がのぼりを持って立ち案内をその腕に抱え、大学側の役員たちが入学書類などを準備していた。
――― 暇だ
周りを見れば家族や友人と来ている学生が多く、静雄は近くにあった花壇の縁に座った。丁度開示される場所の正面あたりだが、そこから掲示を見るには遠すぎる距離であった。
 ――― 臨也、来てないかな
少し期待を持って辺りをぐるりと見まわしたが、彼らしい人物は見つからなかった。代わりにここに何の用事もないはずの人物が自分に近づいてきていることに気づいた。
「やぁ、静雄」
そう言って静雄の前に立ったのは、新羅だった。真っ白な白衣を着ていたが、それが仮初であることを静雄は知っていた。
「久しぶりだね、学校ほとんど来なくなってたし」
「そうだな」
「四六時中勉強してたのかい?」
「いや、そこそこやっていただけだ。正直、暇だった」
暇ねぇ。新羅は笑った。
掲示される方に目を向けると、立て置かれていた金属製の枠に、大学関係者が十数人がかりで大きな二重の紙を張り付ける作業をしていた。作業で揺らぐ紙の隙間から番号が見えないかと必死になって覗きこむ学生がいた。しかし見えなかったようで、肩を落としていた。
「もうすぐみたいだね」
「そうだな」
「お前はどうだ?」
「僕?まぁやっていけそうだよ」
 やがてその時が来た。二重になっていた紙の上一枚が一斉に剥がされ、それと同時に学生たちがその前に、我先にと言わんばかりに流れていった。
「じゃ、僕はこれで。朗報を期待しているよ」
「あぁ。じゃあな」
新羅は静雄に背を向け、セルティの方に駆けていった。静雄も、人が密集し始めた方へと歩いて行った。身長の甲斐もあって、一番後ろからでも掲示をはっきりと見ることができた。
 ――― 0327、0327
静雄は順に目で追った。0301、0305、0321、0326、“0327”、0339……
「あった…」
喜びのあまり手に持っていた受験票を握り締めてしまった。
「合格おめでとう、シズちゃん」
慌てて受験票の皺を伸ばしていると、後ろから声をかけられた。振り返る前に肩に腕を回された。さらりと視界の端を黒が走った。
「い、臨也……?」
「やぁ」
臨也が来たことにも驚いたが、さらに驚いたのは彼の格好だった。
「これならここにいても違和感ないかなって思ってさ。いやー、まだ着れたとは正直びっくりだったよ」
丈が短めの学ランを羽織り、中には赤いTシャツを着ていた。ズボンはタイトな仕様で、不良っぽさの中にどこかファッション性を感じさせた。傍から見れば確かに仲のいい高校生が友人の合格を祝って肩を組んでいるように見えなくもない。しかし現実は甘くない。
「コスプレ……」
思わずそう呟いた静雄に、臨也はその額を弾いた。
「失敬な。これは俺が高校生の時本当にしていた格好なんだよ」
「いや、二十代の男がそんな格好しててもただのコスプレだろ」
鋭いところをつかれ、臨也は静雄から離れると、小さく溜息をついた。
「…そこは認めよう」
しかし似合わないわけではないのだ。素直に格好いいと思った。絶対高校時代も彼女に苦労していないだろう。コスプレとは言ったが、そのまま出かければ普通に学生としても通用するだろう。静雄にとって意外だったのは、臨也が制服を着崩していたことだった。
「お前のことだから制服だけはちゃんと着てると思ってた」
「そんな真面目な生徒なわけないでしょ。この俺が」
「そうだな臨也だもんな」
静雄に二つ返事で返され、臨也は再度溜息をついた。
「何か納得いかないなぁ」
そう言って臨也は静雄の肩を取って入学書類を渡している場所の方に誘導した。

 
 受付に行って受験番号の一致を再度確認してもらい、無事通過して静雄は入学書類を受け取った。その作業はわずか数分。まだどこか信じられず夢の中にいるようで、足元が不安定な感覚がした。
「本当、信じらんねぇ」
「皆そんなもんだよ」
ほら。そう言って臨也の指した方を見れば、母親に肩を抱かれて泣き崩れる女子学生、友人にもみくちゃにされている男子学生、携帯を高々と上げて受験番号の写真を撮る男子学生などがたくさん見えた。
「あれに比べたら、シズちゃんは冷静だね」
「絶対お前にだけは泣きつかないからな」
その言葉に臨也は苦笑した。じゃあこの手は何かな。臨也はさりげなく静雄の右手と繋がれた自分の左手を意地悪く尋ねようかと思ったがやめておいた。その手がわずかに震えていることも、それでもちゃんと加減して掴んでいることも、すべて胸の内にとどめて置いた。
 駅に行く道はまだ発表を見に行く人ばかりで、駅に向かう人は少なかった。
「さて、折角だし祝いに行こうか」
そう言うと、臨也はポケットから長方形の紙を二枚取り出した。ここ、シズちゃんの行きたいところでしょ。それは六本木にある有名なスイーツショップの優待券だった。その店名に静雄は見覚えがあった。
「それ!何で知って……」
「そりゃあ、素敵で無敵な情報屋さんだから」
そう言ってにっこりと笑った臨也を見て、静雄は心底嫌そうな顔をした。
「うわ、一気にうざさが」
「酷いねぇ」
あれほど雑誌を真剣に見ていたのだから覚えていないはずがない。甘いものが好物なことも臨也にとっては既知であり、あの後すぐに手を回して手に入れていたのだった。
 券をポケットにしまい、臨也は静雄の横に並んで歩いた。
「とりあえずシズちゃんが社会人になったってことで俺も色々解禁されるんだよね」
「どういう意味だ」
静雄は首をかしげた。
「シズちゃんに『何でも』できるってこと」
言葉の意図を掴めず首を傾げた静雄を見て、臨也は腕を掴んで自分の方に引き寄せた。ついでに手を腰のあたりに滑らせた。
「だからキス以上のこと、しなかったでしょ?」
耳元で言われた瞬間、静雄は目を見開き頬を真っ赤に染めた。そして臨也を前方へと突き飛ばした。しかし寸前で離れていったためあまり威力は出なかった。それでも痛いことに変わりはない。
「お前いっぺん死ね!」
「ってて……そんなこと言うと連れてってあげないよ」
ひょいと軽い足取りで暴れる静雄から距離を取り、臨也は券を軽くひらつかせた。
「う……卑怯だぞ!」
「何とでも。シズちゃんが何言っても俺傷つかないし」
「嫌いだバカ臨也」
「嘘だって分かってるから効かないよ」
「…チッ」
「さて、まず手始めに一緒に住もうか」
「何でだ!」
間をおかず静雄は素早く突っ込んだ。
「大丈夫。君の両親には許可もらってるから」
「普通順序逆…って許可貰ったのかよ?!」
いったいどんな手を使ったんだと静雄は頭を抱えた。とりあえず母親が変な考えを持っていないことを願いながら、先行く臨也の背を追った。
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獅子えり
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大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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