臨也が池袋にいる。妹たちと一緒にいる。
臨也:普通に双子のお兄ちゃんやってる。
静雄:臨也の事そんなに嫌いじゃない。何か異常に普通。
舞流:主に料理担当。性格はほぼ一緒。
九瑠璃:主に洗濯掃除担当。同上。(字合ってるかな?)
今日も仕事帰り、臨也は近くのスーパーマーケットに来ていた。
かごを乗せたカートを引き、生鮮食品売り場から順に店内を回っていく。片手には達筆とは言えないが読める字で書かれた買い物メモを握っていた。先日高校生になった妹、舞流の手書きである・・・と言うのは嘘で、舞流が言ったものを書きとった臨也の手によるメモである。朝食の時間に広告とにらめっこしながら呟いていた独り言を書きとるのが最早臨也の朝の習慣となりかけていた。自分の決めた順路に沿ってスーパー内を歩いている途中、ちょっとした出来心で新商品のおいしそうなチョコレート菓子を二個かごに放り込んだ。その行為をを顧みて、決して妹のためではないという嘘を自分に言い聞かせた。
(で。ええと、人参玉葱キャベツ大根トマト胡瓜白菜。それから・・・)
臨也はカートに乗せたかごの中身を一つ一つ、メモと照らし合わせていった。かごの中の状況も手慣れたもので、見やすく且つ無駄なくきれいに入れられていた。
(食パンにリンゴに苺・・・あぁ、あとヨーグルトか)
臨也は乳製品が並べられている方へと向かった。
しかし、そこであまり、いやかなり遭いたくない人物と遭遇してしまった。背中を向けていたのでそのまま気づいてくれるなよそのまま通り過ぎてくれよと臨也は願った。が、逆にその強い視線を感じ取ったのかその人物は後ろを振り返って臨也とばっちり目を合わせた。
「・・・よぉ、ノミ蟲」
「や、やぁ、・・・シズちゃん」
長身痩躯で金髪の、バーで働く人が着る制服を着た平和島静雄その人物がいた以上そのままその場を過ぎ去りたかったが、生憎彼の前には臨也の目的のものが陳列されていた。
静雄はそのまま棚に顔を向け、牛乳に手を伸ばした。頬に痛々しくもガーゼが張り付けてあり、まくりあげた袖から伸びる腕には丁寧に包帯が巻いてあった。どうやら新羅の所からの帰りらしい、臨也は思った。
「奇遇だね、こんなところで会うなんて」
牛乳の賞味期限を確認しながら、静雄は言葉を返した。「てめぇは何でここにいる」
「見ての通り、買い物さ」
臨也はいつもの調子で両手を広げて見せた。しかしカートを片手に、背景がスーパーマーケット内ではどんな恰好をしても格好が悪い
「・・・似合わねー・・・」
静雄は、臨也の押しているカートに乗っているかごの中身を、今朝の広告に載っていた特売品やら新商品などが整頓されて入っている状況を見て更に一言。
「お前、」
主婦みてーだな
その一言に、臨也は一瞬固まり、そして深いため息をついた。
「シズちゃん、とりあえず君の脳内がかわいそうなのはよーく解った」
「んだとコラ」
「というか、俺作ってないし」
その言葉に、静雄は少し驚いた。
「そうなのか」
てっきり一人暮らしをしているものだと、静雄は思っていた。
「じゃあなんでそんなに買ってんだよ」
「頼まれたんだよ、マイルに」
「あぁ」
静雄の頭に思い浮かんだのは、伊達眼鏡をかけた見かけ文学少女の快活な少女が思い浮かんだ。しかし彼女が料理を作れるとは到底思えなかった。
「マイルが飯作ってんのか?」
「クルリは洗濯とか掃除とか」
あ、マイル料理上手いよ。今度頼んでみれば?きっと喜んで作るだろうね。
「そういえばお前がコンビニとかで買ってるの見たことないな」
「買い弁じゃ栄養がって」
「妹に栄養管理されてんのか」
「そこ煩い」
「テメーは何もしてねーのか、お兄ちゃん?」
「二人の手伝い位はするよ。金銭面は俺担当」
「一番楽そうだな」
「誰も文句言わないよ」
乳製品売場の前で顔の良い男が二人肩を並べて物色もとい商品の吟味をしている奇妙な光景の間に割って入った携帯電話の音があった。それは臨也のものであり、着信の名前を見てとるかとらないか一瞬迷ったが取らないと後がうるさいと思い通話ボタンを押した。
「はい」
『あ、イザ兄?』
臨也はすぐさま携帯電話を耳から離した。そして音量を最も小さくして再び耳に近づけた。電話の相手は舞流だった。「用件は?」
『うん、あのね、ヨーグルトはブル○リアよろしく!牧○の朝とか○ノンとかはダメだからね!』
「そういうことはちゃんと言葉に出すか紙に書けって言ってるだろ」
『できれば朝○とかでもいいんだけど、』
「ああそう、じゃあね」
そこで、臨也は携帯電話を切った。そうでもしないと延々とヨーグルトの銘柄からさらに話が発展して結局ぐだぐだと通話料金が重ねられるだけの会話になっていくことを経験的に知っていた。
「何だ」
「マイル。ヨーグルトの指定」
「これか?」
そう言って静雄が臨也の前に出したのは、まさに舞流が欲しいと言っていた銘柄であった。
「よくわかったね」
「いや、聞こえた」
「・・・そう」
なんとなく、臨也は恥ずかしい気分になった。
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