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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
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2024/05/04 (Sat) 23:52:57

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No.159
2012/01/07 (Sat) 22:29:47

第八話。


 目を開けると硬い地面はなかった。かわりに背中には柔らかいベッドの感触があり、ひどく落ち着いた。
 ――― ここ、俺の家?
確かに天井も電灯もベッドから見える部屋の構造も臨也の部屋のものだった。あれ俺ってドタチンと話してなかったっけ。そう考えながらがんがんと痛む頭を押さえて起き上ると思わぬ顔に出くわした。
「起きたか」
焦点が合う前に目の前で金髪が動いた。この部屋に他人を入れたことは無い。すぐに身体が動いた。
「うぉっ!」
シーツを煙幕代わりに用いて相手に被せると、臨也はベッドから飛び降り枕の下に隠していたナイフを向けた。次いで椅子が倒れる派手な音がした。
「何しやがッ」
シーツを掛けられた方は慌てて顔を出すなり怒鳴ったが、目の前にナイフの切っ先を向けられているのを見てすぐに押し黙った。
「え?は?静雄、君……?」
その人物の顔をちゃんと見て臨也は驚き、ゆっくりとナイフを下ろした。しかしその驚きはすぐに焦りに変わった。ナイフなんてふつうの人は枕の下に入れていない。まして人に向けることなんてありえない。だが向けてしまった事実は消えない。まずいまずい非常にまずい。
おそるおそる静雄の方を見れば向こうも驚いた顔でこちらを見ていた。
――― 冷静になれ、冷静になれ折原臨也!
異常に速くなった鼓動を抑えるために静かに二、三度深呼吸をして、冷静を繕って臨也は言った。
「何でここにいるの?」
「……門田さんと喋ってる最中にお前が倒れて、そん時たまたまその場に居合わせて……いや違う、ずっと見てた。お前が倒れるところは見てなかったけど、門田さんの友達がここまで車で運んで、部屋までは門田さんと俺が運んだ。あと新羅も来てる」
「そう」
臨也は静雄の言葉に推測を加え、自分が倒れた後の記憶を作り上げた。しかし引っかかる点が一つ。静雄は偶然ではなく必然で居合わせたと言った。
つまり、情報屋の姿を見られていたということである。
―――見てたって……
情報屋としては確かまだ面は割れてないし、あの時も顔は隠していたよな。臨也は記憶を手繰った。
そこで矛盾に気付いた。静雄は自分じゃなくて情報屋を探していたんだ。だから居合わせたんだ。そして情報屋が自分だったということだ。気を付けていたのに、何てざまだ。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
沈黙が辛かった。かちこちと部屋に置かれた時計が針を進める音が聞こえた。何かを言おうとは思うが、口を開くまでに至らない。あぁだこうだと頭で考えて終わってしまう。
 するとその沈黙を破るかのように扉が開いた。
「なんかすごい音聞こえたけど」
扉の先から顔を出したのは新羅だった。恐らく門田が念を入れて呼んだのだろうと臨也は思った。しかし彼の姿が見えない事からもう帰ったのだろうと思った。
新羅は臨也と静雄を交互に見て、そして床に落ちたシーツを見て推測をそのまま口に出した。
「もしかして臨也が目覚めて静雄の顔を見て驚いてナイフ向けちゃったりしたの?」
その言葉に、当事者二人は顔を見合わせた。
「……その通りだよ」
「お前エスパーか?」
「本当なんだ……冗談のつもりだったんだけど」
室内に入り、新羅は倒れた椅子を立てて座りなおした静雄の横に立った。臨也は床にあるシーツを拾ってベッドに座った。
「一応診たところ、門田さんの言うとおり寝不足だね。あと軽い失調も」
「ここのとこ碌に食べた記憶ないから仕方ないね」
淡々と続く新羅の言葉に心当たりがないどころか自覚するほどにありすぎるため、溜息しか出なかった。自己管理には自信があったつもりだった。
「まだ眠いだろう?もう少し寝るといいよ」
そう言われると、思い出したかのように眠気が襲ってきた。一つ欠伸をして臨也はベッドに横になった。
「そうするよ」
扉に背を向けて、シーツを被り直し枕に頭を沈めた。
「じゃ、僕は帰るよ」
「わざわざ新宿までご足労様」
ベッドの中から手を振って、臨也は新羅を見送った。ぱたんと一度扉の閉まる音が鳴った。
 そして室内は静かになった。しかし一人にはなっていない。静雄がまだ椅子に座っている。背後を気配だけで窺うが、出て行く様子は感じられなかった。
 ――― 予測していたことではあるけど。
短く息を吐いて臨也は起き上がった。眠さ特有の気怠さはあるがぱたりと倒れることは無いだろう。
「さて」
「寝ないのか?」
「寝ないというより、寝れないよ」
静雄の質問に肩をすくめて臨也は答えた。
「聞きたいことがあるだろう?いろいろと」
そう臨也が尋ねると、静雄はすこし視線をさまよわせてから一つ頷いた。
「まぁ、俺もいろいろ話したいことがあるからさ」

 
 場所を私室から職場へと移し、臨也は気付け代わりに自分用に苦めの、静雄用に甘めのコーヒーを淹れていた。
 その間、静雄は初めて見る部屋に視線を巡らせていた。正面を見ればテレビがあり、背後には少し離れた壁沿いに大量の整理されたファイルが納められた棚があり、左手にはパソコンが二台置かれたデスクがありその先のガラス張りの壁はブラインドが閉じられている。夏休みに行った“家庭教師”としての臨也の家ではないことは来たときから分かった。
「そんなに珍しいものでもあった?」
ゆらゆらと湯気経つカップを二つと水を絞ったタオルをトレーに乗せて来た臨也は、それをトレーごとテーブルの上に置いた。
「いや、ここは初めてだなって」
「普通だったら君みたいな子が来る場所じゃあないしね」
ここは情報屋の事務所だよ。臨也はそう言った後カップに口をつけた。
「さて、ドタチンからはどれくらい聞いてる?」
「……情報屋が本職ってこととか、人間愛?をもってるってことか、臨也が倒れるまで何をしてたとか」
「情報屋ってどんなものかはわかるよね」
「あぁ、なんとなくな」
静雄はコーヒーを手に持ったまま答えた。
臨也はカップをテーブルに置き、椅子の上に片足を上げてそこに腕を乗せて続けた。
「一応言っておこうか。基本的に俺の仕事は人が求めてる情報をその人に売ることだけど、取引の仲介もするよ。中身はまぁ火器に銃器に動物などなど。麻薬は扱ったことは無いし扱う気もない。ナイフは仕事柄恨みをよく買うから護衛のためにね。ときどき脅しに使うこともある。それと人間愛って言い方されるのはあまりいい気分じゃないけど、確かに俺は人間が好きだよ。愛していると言っても過言じゃない。人種も民族も国籍も何もかもを越えてね。俺の予想通りに動く奴もいればそうじゃない奴だっているし、簡単に動く奴もいればてこでも動かない奴もいる。同じ存在は二つとしてない。だから見ていて飽きない。まぁ、なかには外れる奴とか例外がいたりするんだけどさ」
最後の一文を、臨也は静雄の方を見ながら言った。
 静雄はコーヒーを飲みながら、長い臨也の言葉を咀嚼した。
「お前は人間が好きで情報屋をやってるわけだな」
「そうでもないとこんな仕事やってられないよ」
足を下ろして組みながら臨也は言った。
「家庭教師は丁度いい情報源として使ってるんだ。高校生の噂話や世間話は一虚一実で面白いからね。そんな噂でも活用できることもある。あとは学を落とさないためにもかな。馬鹿じゃやっていけないだろうし」
「悪かったな、使えない高校生でよ」
「君が悪いという必要性はどこにもないよ」
そう言われればそうだ。静雄は特に返さずコーヒーを啜った。
「あとは君を襲ったやつらに関していろいろ探ってたことだけど、彼らが俺を知っていたのは前にその組織を追いつめたのが俺だったから。結局そこは一度解散したみたいだけどしぶといみたいで今度は君に目を付けたみたいでさ。おもにその異常なまでの膂力に関して」
「……こんな力の何がいいってんだ」
静雄は思わず手に力を入れてしまった。がちゃんとカップが崩れ、まだ幾分か熱いコーヒーが手を濡らした。こうなることを予想していたのか、臨也は慌てることなくトレーにあるタオルを手に取り、静雄の手に当てた。
「悪い……」
「気にしないで。第一者から見ればそれは確かに要らないかもしれない。でも人体に関する研究をしている人たちにとっては興味がそそられる対象なんだよ。それは経験しただろう。それに君のことだから普通の方法じゃ捕まえられない。だから凶行に及んだってわけ」
幸い制服のズボンには付かなかったが、ジャケットやシャツの袖に幾らか付いてしまった。ある程度はタオルで抜いたが、ちゃんと洗わないとしみが残りそうだった。
「うまいこといけば交渉材料にも使えるだろうね。組織再興のためにもさ」
ついでにかけらをタオルに集めて包み、テーブルに置いた。
 臨也は椅子に戻り、息を吐いた。
「さて、一応一通り答えたつもりだけど」
何か質問とか、他に訊きたいことはある。臨也は問いかけた。
「別に」
小さな声で静雄は答えた。まだ頭の中の処理が間に合っていなかった。自分が交渉材料になるとは思いもしなかった。そんなフィクションじみた話が実際に起こることなんかないだろうと思うが、その考えはきっと自分がそっち側にいないから思うことなのかもしれない。
「君を襲ったやつらに関しては俺が何とかしておくよ。一度潰した組織がまた再興になったら情報屋としての信用が落ちるからさ」
臨也は立ち上がって、デスクに置かれたパソコンを指で叩きながら言った。
「俺も手伝う」
静雄は立ち上がってすぐに返したが、断られた。
「受験生は家で大人しく勉強していないとだめだよ、静雄君」
臨也は再びソファに近づき、ソファの足下にあった鞄を拾い、静雄の背を押して玄関へとすすめた。
「おい、何しやがる」
「そろそろ帰った方がいいと思うよ。夜の新宿は物騒だから」
そう指摘されて時計を見ると、もうすぐ九時になろうとしていた。反論できず、静雄はしばらく押し黙った。
「ちゃんと食って寝ろよ。じゃあな」
「分かってるよ」
まるで親のようなことを言い捨てていく静雄に苦笑しながら、臨也は見送った。
 
 隠していたことはほとんど話した。ただ話すべき重大なことを一つ除いて。
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日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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