日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.171
2012/02/01 (Wed) 16:23:59
DFF学パロ短編集
Catch a cold
スコールが風邪を引いた話。ラグナとレオンが心配します。
School Ramble
異説学園高等部文化祭の話。季節外れで挫折。スコール&レオンのブラコン疑惑。
Catch a cold
スコールが風邪を引いた話。ラグナとレオンが心配します。
School Ramble
異説学園高等部文化祭の話。季節外れで挫折。スコール&レオンのブラコン疑惑。
Catch a cold
発端は一週間ほど前にさかのぼる。
丁度そのあたりから喉の調子が悪かった、とスコールは記憶していた。咳き込むたびに息が苦しくなり、三日後ぐらいから鼻水も酷くなった。日に日に悪化していく様子を見ていたティーダとヴァンは、水やのど飴を購買で買ってきてスコールに渡したり、街頭でもらったポケットティッシュを鞄の中に勝手に放り込んだりと世話を焼いた。スコールも咳と鼻水程度で済むと思っていたが、現実は甘かった。
朝。目は覚めたが身体に違和感を覚えた。頭が重いうえに鉛のように体が怠く、起き上がるのが面倒に感じられた。ベッドに寝転んだまま自分の手を額に当ててみれば、いつも以上に暖かいことに気付いた。
――― 熱、か。
とりあえずと引きずるように上体を起こし、ぼんやりとした頭でベッドに座った。すると不意に部屋の戸が開いた。ラグナは零番街の大統領邸に缶詰め中なので、必然的に答えは絞られた。
「どうしたんだ?」
既に着替えて髪も整え、いつでも出勤できるといった格好でレオンが上がってきた。その言葉に枕元の携帯の時計を見れば、八時を少し過ぎたところだった。確実に遅刻決定だが、今日はそもそも遅刻すらできないことをスコールはとうに知っていた。
「下から何度か呼んだんだが……」
結構出勤ぎりぎりなのは承知だが、言わなければきっとまずいことになるだろうと思い、スコールは口を開けた。
「熱があるから、休む」
そう言うや否や、レオンの表情が変わった。足早にスコールに近づいて、手首の脈を測り、額に手を置いた。丁度水仕事を終えたところだったのだろう。レオンの手は程よく冷えて気持ちがよく、スコールはその心地に任せて目を閉じた。
――― だいぶ熱いな
レオンは息を吐いてスコールの前髪をはらった。
緩く冷えているはずのスコールの手は珍しく温かく、頬の赤みも増していた。とりあえずまずベッドに横になるよう促し、布団をかけなおした。咳がおさまっただけまだ楽な方だろう、そう思いながら、レオンは冷却シートと水を取りに一度スコールの部屋から出た。
スコールは携帯を手に取り、メール送信画面を開いた。
『熱が出たから休む』
短く打ち込むと、送信履歴の三番目にあったティーダの名前を選択し、決定ボタンを押して送信した。とりあえずこれで配布物を取り逃すことはなくなった。身体の熱さに息を吐いても熱が抜けることはない。何で熱なんて出したんだ。スコールは毒づいた。
たん、たんとリズムの良い音が戻ってきた。レオンは部屋に入ってベッドの傍らに膝をつくと、スコールの額に冷却シートを張り付けた。
――― 冷た……
体温との温度さに目の奥が痛み、スコールは目を閉じて額に手を当てた。
「替えはここに置いておくからな。あと水も」
――― 後は薬だが
レオンは顎に手を当てた。
「何か食べられそうか?」
「……飲み物、程度なら」
「そうか」
何もいらないと言われるよりはましだったので、コーンスープを作ることにした。キッチンに行こうとしたところ、ズボンの裾を掴まれて引き留められた。
「仕事には、行ってくれ」
「ちゃんと行くさ。遅刻はするがな」
苦笑しながら、レオンはスコールの手を服から外した。
薬によって眠ってからどれほど経っただろうか。意識の浮上に任せて目を覚ますと、自分の顔を覗きこむラグナの顔が目に飛び込んできた。スコールは思わずその顔を押しのけて起き上がった。
「何で、あんたがここにいるんだ……!!」
「だってスコールが風邪引いたって!」
ラグナは顎をさすりながら涙目にスコールに言った。薬を飲んで寝たことで顔色は良くなっているが、まだわずかに赤い。スコールは頭を抱えて溜息を吐いた。もしこれがレオンなら、ここまで苛立たないのだが。
「あんた、一国の大統領だろう……」
「その前に、スコールの父親だ」
胸を張って言うラグナに、スコールは呆れた。父親と宣言されて嬉しくないわけじゃないしあれやこれやと言及する気力も起きないが、ラグナの場合伴う責任が大きすぎる。今頃きっと秘書の人たちが執務に追われていることだろう。彼らの苦労を思った。
「それにしても、スコールは本当にお兄ちゃんっ子だなぁ」
パパ寂しいよ、とラグナは手を顔に当てて泣く振りをして見せた。
「何を根拠に」
「だって寝言で言ってたぞ、お兄ッ」
お兄ちゃん、まさかの昔の呼び方発言にスコールは枕を投げた。見事に顔面に枕が直撃し、ラグナはそのまま大袈裟な音を立てて後ろに倒れた。そのあまりの酷い音にスコールは驚き、ベッドから身を乗り出した。
「……大丈夫、」
「何の音だ!」
今度は部屋の戸が酷い音を上げて開いた。開けたのはもちろん、いるはずのないレオンで。
「何で、仕事はどうした!」
「休む旨を伝えに行っただけだ」
してやられた。スコールは枕を拾い、頭から布団を被った。
たかが風邪だろう。スコールは溜息を吐いた。たかが風邪に、大統領は職務放棄、兄は仕事を休んだ。もう看ていなければならない子どもじゃあるまいし、放っておいてくれ。布団越しに聞こえるラグナを気遣うレオンの声を聞きながら、スコールはそう思った。
School Ramble
秋が深まり、紅葉が姿を現し始めていた。吹き付ける風も軽く冷気を帯び、半袖が姿を消しつつあった。
しかし、異説学園は夏真っ盛りのように、生徒たちの熱気が渦巻いていた。生徒たちは朝早くに登校し、終業後遅くまで残って作業をする毎日が続いていた。校内の消灯時間も、併せて伸びて行き、暗くなってから門をくぐって出ていく生徒が急増した。
そう、文化祭の季節である。その文化祭は、異説学園のなかでも、高等部と大学部は非常に盛り上がる。初等部や中等部は専ら見学か、図画工作、美術などで作った作品の展示活動になる。
高等部では、模擬店、バザー、ダンス、ミュージカルなどの様々な出し物がある中、スコールのクラスの出し物は演劇であった。
中世ヨーロッパの騎士物語をベースにしたオリジナル作品であり、脚本は演劇部部長のジタン・トライバルが『ある条件』を出して貸してくれた。演劇の準備は夏休みから始まり、ジタンの指導を受けながら演技は教え込まれ、衣装制作は女子生徒たちによって計画的に行われていった。
因みにその条件とは、スコール・レオンハートを主役にすることだった。
――― 一体何の嫌がらせだ……
スコールは舞台裏に置かれたパイプ椅子に座り、台本の表紙を眺めながら溜息を吐いた。しかし一朝一夕で面白い話が書けるほどの文才を持ったクラスメイトはいなかった。そのうえ、劇の内容も文句ひとつでないほど、面白味のある話だった。
「おいおい、主役がそんなしけた面してちゃいけないだろ?」
他の生徒の演技指導を終えたジタンが話しかけてきた。自分のクラスの仕事の傍らの指導の筈が、逆に指導がメインになっていた。時間があれば常に様子を見に来きては、的確な指導を残していくので、誰も何も言わなかった。
――― あんたがそうさせることを言ったんだろう
言葉に出すのも面倒で軽く睨んでやると、肩をすくめて見せた。
「そりゃあ、この話の騎士はかっこいいやつがやらなきゃいけないんだ」
――― かっこいいも何もないだろう。
唯の物語で、顔も何もないのにどこからそんなイメージが出来上がるのか全く分からなかった。
「じゃあその生き様を務めてみせろよ、スコール」
任務なんだろ。
当日、演劇は異説学園始まって以来の動員数を数え、体育館は超満員になった。皆が緊張する中、スコールはその観客数に対する緊張をものともせず、非常に落ち着いた、最高の演技を魅せた。
『この剣に誓おう、私は必ず、貴方の下へ舞い戻ると』
そう言って剣を高くかざす姿は、まさに騎士物語にふさわしい騎士そのものだった。
――― 眩しい……
スポットライトだけではない、暗い観客席から飛んで来るフラッシュの光に対して、スコールは目を閉じた。
緊張していないわけではなかった。少なくとも、朝に家を出るまでは。
朝からスコールの家は騒がしかった。ラグナが、スコールの演劇見たさに文化祭に行くんだと仕事を放棄しようとしていた。
「スコールの勇士を見に行くんだ!この目に焼き付けるんだーッ」
「貴方は大統領という自覚を持つべきだろう!」
それに対し文句さらには愚痴を並べて、キロスとウォードという秘書官たちが引きずって出て行った。全く朝から近所迷惑極まりないと、スコールは頭を抱えた。
その横を、いつもの鞄を持ったレオンが通り過ぎた。
「今日も仕事なのか?」
「あぁ。ちょっと三番街までな」
「その格好で、か?」
その格好、というのは、ジャケットは普通に着ているのだが、その中は無地のカッターシャツではなく、むしろ洒落たデザインの、襟首の開いたシャツだった。ボトムもスラックスではなく、足の長さが強調されるようなデザインの黒いジーンズだった。他には、シルバーのネックレスや革製のブレスレットなどなど、アクセサリーが飾っていた。
「相手先がファッション業界だからな、この格好の方が都合がいい」
成程、それならちゃんと着なくちゃいけないな。
いつの間にか、緊張の二文字は消え去っていた。
しかしこの時、スコールは気付かなかった。レオンの鞄は確かにいつもの鞄だったが、その中にノートパソコンは入っていなかった。
演劇が終わり、舞台裏で達成感と感動を分かち合っていたところ、ジタンが入ってきた。
「ジタン、演劇は本当に」
振り返ると、ジタンの後ろにレオンとクラウドが立っていた。
「何で、ここに」
どちらも今日は仕事中の筈で、レオンに至ってはエスタにすらいないはずだった。二人ともいつも見かける格好ではなく、品の良いカジュアルな服に身を包んでいた。特にレオンは、朝見た格好そのままだった。
「スコールにあんまりにも似てたもんだから、『スコールの父兄の方ですか?』って聞いたら」
「偶には有給休暇を使ってみようと思ってな」
楽しそうなレオンの様子に、クラウドは小さく溜息を吐いた。演技がつまらなかったわけではない。それは面白かった。しかし、折角の休みだったから、バイクの手入れや事務作業を片付けようと思っていた。そこに急に電話がかかって来たかと思えば、『今から高校に行く、お前も一緒に来い』の一言。勝手に一人で行けばいいものを、わざわざ七番街まで迎えに来て、さらに時間があるからと、寝ぼけた頭のまま喫茶店に連れて行かれ、校内の出店を回った。
「……スコールの演技が見たかった、って素直に言えばいいのに」
「お前が素直なんて言葉言える立場か?」
「少なくともお前に対しては言えると思ってるが?」
L「この後時間あるか?」
8「あともう一回やるが、大丈夫だ」
L「じゃあ案内してくれないか?」
9「なぁ、ストライフ先輩?」
7「何だ?」
9「スコールってさ、結構ブラコンだったりするわけ?」
7「むしろ俺はレオンの方が酷いと思うが」
発端は一週間ほど前にさかのぼる。
丁度そのあたりから喉の調子が悪かった、とスコールは記憶していた。咳き込むたびに息が苦しくなり、三日後ぐらいから鼻水も酷くなった。日に日に悪化していく様子を見ていたティーダとヴァンは、水やのど飴を購買で買ってきてスコールに渡したり、街頭でもらったポケットティッシュを鞄の中に勝手に放り込んだりと世話を焼いた。スコールも咳と鼻水程度で済むと思っていたが、現実は甘かった。
朝。目は覚めたが身体に違和感を覚えた。頭が重いうえに鉛のように体が怠く、起き上がるのが面倒に感じられた。ベッドに寝転んだまま自分の手を額に当ててみれば、いつも以上に暖かいことに気付いた。
――― 熱、か。
とりあえずと引きずるように上体を起こし、ぼんやりとした頭でベッドに座った。すると不意に部屋の戸が開いた。ラグナは零番街の大統領邸に缶詰め中なので、必然的に答えは絞られた。
「どうしたんだ?」
既に着替えて髪も整え、いつでも出勤できるといった格好でレオンが上がってきた。その言葉に枕元の携帯の時計を見れば、八時を少し過ぎたところだった。確実に遅刻決定だが、今日はそもそも遅刻すらできないことをスコールはとうに知っていた。
「下から何度か呼んだんだが……」
結構出勤ぎりぎりなのは承知だが、言わなければきっとまずいことになるだろうと思い、スコールは口を開けた。
「熱があるから、休む」
そう言うや否や、レオンの表情が変わった。足早にスコールに近づいて、手首の脈を測り、額に手を置いた。丁度水仕事を終えたところだったのだろう。レオンの手は程よく冷えて気持ちがよく、スコールはその心地に任せて目を閉じた。
――― だいぶ熱いな
レオンは息を吐いてスコールの前髪をはらった。
緩く冷えているはずのスコールの手は珍しく温かく、頬の赤みも増していた。とりあえずまずベッドに横になるよう促し、布団をかけなおした。咳がおさまっただけまだ楽な方だろう、そう思いながら、レオンは冷却シートと水を取りに一度スコールの部屋から出た。
スコールは携帯を手に取り、メール送信画面を開いた。
『熱が出たから休む』
短く打ち込むと、送信履歴の三番目にあったティーダの名前を選択し、決定ボタンを押して送信した。とりあえずこれで配布物を取り逃すことはなくなった。身体の熱さに息を吐いても熱が抜けることはない。何で熱なんて出したんだ。スコールは毒づいた。
たん、たんとリズムの良い音が戻ってきた。レオンは部屋に入ってベッドの傍らに膝をつくと、スコールの額に冷却シートを張り付けた。
――― 冷た……
体温との温度さに目の奥が痛み、スコールは目を閉じて額に手を当てた。
「替えはここに置いておくからな。あと水も」
――― 後は薬だが
レオンは顎に手を当てた。
「何か食べられそうか?」
「……飲み物、程度なら」
「そうか」
何もいらないと言われるよりはましだったので、コーンスープを作ることにした。キッチンに行こうとしたところ、ズボンの裾を掴まれて引き留められた。
「仕事には、行ってくれ」
「ちゃんと行くさ。遅刻はするがな」
苦笑しながら、レオンはスコールの手を服から外した。
薬によって眠ってからどれほど経っただろうか。意識の浮上に任せて目を覚ますと、自分の顔を覗きこむラグナの顔が目に飛び込んできた。スコールは思わずその顔を押しのけて起き上がった。
「何で、あんたがここにいるんだ……!!」
「だってスコールが風邪引いたって!」
ラグナは顎をさすりながら涙目にスコールに言った。薬を飲んで寝たことで顔色は良くなっているが、まだわずかに赤い。スコールは頭を抱えて溜息を吐いた。もしこれがレオンなら、ここまで苛立たないのだが。
「あんた、一国の大統領だろう……」
「その前に、スコールの父親だ」
胸を張って言うラグナに、スコールは呆れた。父親と宣言されて嬉しくないわけじゃないしあれやこれやと言及する気力も起きないが、ラグナの場合伴う責任が大きすぎる。今頃きっと秘書の人たちが執務に追われていることだろう。彼らの苦労を思った。
「それにしても、スコールは本当にお兄ちゃんっ子だなぁ」
パパ寂しいよ、とラグナは手を顔に当てて泣く振りをして見せた。
「何を根拠に」
「だって寝言で言ってたぞ、お兄ッ」
お兄ちゃん、まさかの昔の呼び方発言にスコールは枕を投げた。見事に顔面に枕が直撃し、ラグナはそのまま大袈裟な音を立てて後ろに倒れた。そのあまりの酷い音にスコールは驚き、ベッドから身を乗り出した。
「……大丈夫、」
「何の音だ!」
今度は部屋の戸が酷い音を上げて開いた。開けたのはもちろん、いるはずのないレオンで。
「何で、仕事はどうした!」
「休む旨を伝えに行っただけだ」
してやられた。スコールは枕を拾い、頭から布団を被った。
たかが風邪だろう。スコールは溜息を吐いた。たかが風邪に、大統領は職務放棄、兄は仕事を休んだ。もう看ていなければならない子どもじゃあるまいし、放っておいてくれ。布団越しに聞こえるラグナを気遣うレオンの声を聞きながら、スコールはそう思った。
School Ramble
秋が深まり、紅葉が姿を現し始めていた。吹き付ける風も軽く冷気を帯び、半袖が姿を消しつつあった。
しかし、異説学園は夏真っ盛りのように、生徒たちの熱気が渦巻いていた。生徒たちは朝早くに登校し、終業後遅くまで残って作業をする毎日が続いていた。校内の消灯時間も、併せて伸びて行き、暗くなってから門をくぐって出ていく生徒が急増した。
そう、文化祭の季節である。その文化祭は、異説学園のなかでも、高等部と大学部は非常に盛り上がる。初等部や中等部は専ら見学か、図画工作、美術などで作った作品の展示活動になる。
高等部では、模擬店、バザー、ダンス、ミュージカルなどの様々な出し物がある中、スコールのクラスの出し物は演劇であった。
中世ヨーロッパの騎士物語をベースにしたオリジナル作品であり、脚本は演劇部部長のジタン・トライバルが『ある条件』を出して貸してくれた。演劇の準備は夏休みから始まり、ジタンの指導を受けながら演技は教え込まれ、衣装制作は女子生徒たちによって計画的に行われていった。
因みにその条件とは、スコール・レオンハートを主役にすることだった。
――― 一体何の嫌がらせだ……
スコールは舞台裏に置かれたパイプ椅子に座り、台本の表紙を眺めながら溜息を吐いた。しかし一朝一夕で面白い話が書けるほどの文才を持ったクラスメイトはいなかった。そのうえ、劇の内容も文句ひとつでないほど、面白味のある話だった。
「おいおい、主役がそんなしけた面してちゃいけないだろ?」
他の生徒の演技指導を終えたジタンが話しかけてきた。自分のクラスの仕事の傍らの指導の筈が、逆に指導がメインになっていた。時間があれば常に様子を見に来きては、的確な指導を残していくので、誰も何も言わなかった。
――― あんたがそうさせることを言ったんだろう
言葉に出すのも面倒で軽く睨んでやると、肩をすくめて見せた。
「そりゃあ、この話の騎士はかっこいいやつがやらなきゃいけないんだ」
――― かっこいいも何もないだろう。
唯の物語で、顔も何もないのにどこからそんなイメージが出来上がるのか全く分からなかった。
「じゃあその生き様を務めてみせろよ、スコール」
任務なんだろ。
当日、演劇は異説学園始まって以来の動員数を数え、体育館は超満員になった。皆が緊張する中、スコールはその観客数に対する緊張をものともせず、非常に落ち着いた、最高の演技を魅せた。
『この剣に誓おう、私は必ず、貴方の下へ舞い戻ると』
そう言って剣を高くかざす姿は、まさに騎士物語にふさわしい騎士そのものだった。
――― 眩しい……
スポットライトだけではない、暗い観客席から飛んで来るフラッシュの光に対して、スコールは目を閉じた。
緊張していないわけではなかった。少なくとも、朝に家を出るまでは。
朝からスコールの家は騒がしかった。ラグナが、スコールの演劇見たさに文化祭に行くんだと仕事を放棄しようとしていた。
「スコールの勇士を見に行くんだ!この目に焼き付けるんだーッ」
「貴方は大統領という自覚を持つべきだろう!」
それに対し文句さらには愚痴を並べて、キロスとウォードという秘書官たちが引きずって出て行った。全く朝から近所迷惑極まりないと、スコールは頭を抱えた。
その横を、いつもの鞄を持ったレオンが通り過ぎた。
「今日も仕事なのか?」
「あぁ。ちょっと三番街までな」
「その格好で、か?」
その格好、というのは、ジャケットは普通に着ているのだが、その中は無地のカッターシャツではなく、むしろ洒落たデザインの、襟首の開いたシャツだった。ボトムもスラックスではなく、足の長さが強調されるようなデザインの黒いジーンズだった。他には、シルバーのネックレスや革製のブレスレットなどなど、アクセサリーが飾っていた。
「相手先がファッション業界だからな、この格好の方が都合がいい」
成程、それならちゃんと着なくちゃいけないな。
いつの間にか、緊張の二文字は消え去っていた。
しかしこの時、スコールは気付かなかった。レオンの鞄は確かにいつもの鞄だったが、その中にノートパソコンは入っていなかった。
演劇が終わり、舞台裏で達成感と感動を分かち合っていたところ、ジタンが入ってきた。
「ジタン、演劇は本当に」
振り返ると、ジタンの後ろにレオンとクラウドが立っていた。
「何で、ここに」
どちらも今日は仕事中の筈で、レオンに至ってはエスタにすらいないはずだった。二人ともいつも見かける格好ではなく、品の良いカジュアルな服に身を包んでいた。特にレオンは、朝見た格好そのままだった。
「スコールにあんまりにも似てたもんだから、『スコールの父兄の方ですか?』って聞いたら」
「偶には有給休暇を使ってみようと思ってな」
楽しそうなレオンの様子に、クラウドは小さく溜息を吐いた。演技がつまらなかったわけではない。それは面白かった。しかし、折角の休みだったから、バイクの手入れや事務作業を片付けようと思っていた。そこに急に電話がかかって来たかと思えば、『今から高校に行く、お前も一緒に来い』の一言。勝手に一人で行けばいいものを、わざわざ七番街まで迎えに来て、さらに時間があるからと、寝ぼけた頭のまま喫茶店に連れて行かれ、校内の出店を回った。
「……スコールの演技が見たかった、って素直に言えばいいのに」
「お前が素直なんて言葉言える立場か?」
「少なくともお前に対しては言えると思ってるが?」
L「この後時間あるか?」
8「あともう一回やるが、大丈夫だ」
L「じゃあ案内してくれないか?」
9「なぁ、ストライフ先輩?」
7「何だ?」
9「スコールってさ、結構ブラコンだったりするわけ?」
7「むしろ俺はレオンの方が酷いと思うが」
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プロフィール
HN:
獅子えり
性別:
女性
職業:
大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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