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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/05/04 (Sat) 20:03:47

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No.167
2012/01/07 (Sat) 22:42:54

家庭教師臨也×高校生静雄のパラレル話です。
もともとはコピー本収録用に書いたけれど、パラレルが苦手な人もいるからと思い下げたけれどもったいなくて転用。初の長編完結チャレンジ!



 高校三年生。進学を考える誰もが大学受験という大きな壁にぶつかってしまうこの時期に、平和島静雄は母親の薦めもあって、春から家庭教師にお世話になることになった。と言っても、静雄は、実のところ、それほど頭は悪くない。むしろ良いといってもいい方である。なぜなら、彼は口下手であるがゆえ友人がなかなか作れず、部活にも入らず、休み時間や自宅にいる時間の大半を勉強に回していたからだ。おかげでクラス順位が下位を争うようなことはなかったし、学年順位も常に上位にいた。本当のところ家庭教師など頼まなくても勉強できるだけの器量を持ち合わせていたが、それでも従事したのは、ひとえに母親を安心させるためでもあった。

 静雄は確かに学力面では問題はない。問題なのは学生としての生活の方にあった。
 金髪というだけで、人より少し強い力を持っているというだけで、その目つきだけで、学内はおろか学外からも不良たちの根も葉もない因縁に付き合わされてきた。また、それをことごとく力でねじ伏せてきたことで、彼らと同等の『不良』というレッテルを貼られてしまっていたのである。そう見られることよりも静雄にとって辛かったのは、そのせいで周りの人々が遠ざかっていったことの方であった。
 そして今日は、静雄を担当する物好きな(静雄視点)家庭教師が初めて家に来る日であった。静雄は物の少ない自室をとりあえず掃除して体裁を整え、椅子を余分に一つ置き、時間内に終わらせようと考えている勉強道具を机の上に用意して待つこと数分。家のインターホンが鳴った。インターホン越しの母親の応答から、来たのがその家庭教師だと分かり、静雄は少し緊張した。
 部屋と廊下を隔てる壁一枚向こうで音が聞こえた。言葉という形は持っておらずとも、その低いトーンから少なくとも家庭教師が男であることが分かった。そして次第に足音が近づき、それは静雄の部屋のドアの前で止まった。二度ほどノックされたので、「どうぞ」と静雄は言った。
 ドアが開いた。
「こんにちは」
入ってきたのは二十代の若い男だった。秀麗な顔に人の良さそうな笑顔を浮かべていた。これが女子ならば、普通の一般の男子なら、なにも思わない。ただのかっこいい家庭教師。それですまされただろう。
「…うも」
しかし静雄は違った。散々不良たちとかかわってきたためか、他人の態度、感情、考えを読むのが得意になっていた。今もその思考が働いているが、彼の笑顔に安心どころか、恐怖に似た不安のようなものを感じた。この男と三時間を週三日、一年間過ごさなくてはいけないのかと思うと、背筋が寒くなった。
 青年は静雄が用意しておいた椅子に座った。その動作さえも、どこか洗練されたように見えるのはきっと生まれがよいのだろうと静雄は思った。
「まず自己紹介からかな」
青年は提げていた鞄からノートを一冊取り出した。それをぱらぱらとめくり『平和島静雄』と達筆な字で書いてあるページを開いた。そしてブランド名が焼き押しされた革のペンケースからどこにでも売っているボールペンを一本取り出した。
「一方的に話すだけじゃつまらないから、お互いに質問形式にしてもいい?」
俺も君のこと知りたいから。
その提案に静雄は賛成した。ルーズリーフを一枚用意し、ボールペンを持った。しかし青年の名前を書こうとして手が止まった。家庭教師を頼んだとは聞いたが、肝心の名前を、静雄は母親から聞きそびれてしまっていた。
「俺は、オリハライザヤ」
そう言われ、静雄は手を動かした。姓は書けたが、名前の漢字が分からなかった。当て字であることは予想できたのだが、『イザヤ』と当てられる字がない。イザヤと言えば、あの聖書に出てくる預言者のことが頭に浮かんだが、特に宗教に興味もなければ彼が何をしたかも知らなかったので、聖書にいる人物で考えは終わった。
「…名前は」
「面するって意味の臨むに、なりって読む也を書くよ」
青年、折原臨也はボールペンで宙に文字を書いた。それをまねて紙に書き、静雄は改めて名前を見る。
 
『折原臨也』
 
変わった名前だなあと思った。
「じゃ、質問に入ろうか」
臨也は椅子を回して静雄の方を向いた。それにならって静雄も身体を向け、少し姿勢をただした。
「まずは俺から。志望大学は?」
「…特にないです」
「そう?」
『特になし』と、読みやすい字で書かれた。将来何がしたいかとか、何を学びたいとか、静雄は全く考えを持っていなかった。ただ漠然と大学進学の道を選んでいた。大学と聞いてふと気になったのは。
「折原さんはどこを卒業したんですか?」
静雄も問いかけた。広告などではよく書かれているが、件の如く、静雄は何も知らない。
「T大、って言えたらカッコイイだろうけど、まあそこそこいい大学は出たよ」
明確な答えが返ってくると思っていた静雄は少し止まった。結局どこの大学なのか。そこを尋ねたかったのだが別に詮索する気はなかった。静雄は臨也が話した通り、『中堅大学卒業』と書いた。
「苦手な教科は?」
「特にないです」
静雄は即答した。どの教科にも一長一短があるので好きな教科も嫌いな教科もなかった。強いて言えば音楽と美術が苦手だったが、芸術系の大学に行く気はないので問題はないだろう、と静雄は思った。
「すごいね、オールマイティだなんて」
俺には到底できなかったよ、と両手を広げて大げさに臨也は言った。
「あったんですか?嫌いな教科」
そう尋ねると、臨也は大きく頷いた。意外だった。
「文系の科目とかあんまり好きじゃなかったなぁ。日本史とかどうして過ぎ去った時代とか日本社会の失敗を学ばなくちゃいけないんだろうって。今だに繰り返したりしているんだから無駄じゃないとか思わない?」
日本史から始まった臨也の苦手論、と言うよりもその教科に対する不満を、現代文古文漢文世界史など多岐にわたって静雄は聞くことになった。その内容は静雄も納得できる部分もあれば、そんなことと言うような些細なことまで様々だった。しかし文系科目の中で唯一倫理は好きだったようで、帰納法やイデア論は楽しかったと臨也は言った。
「あ、でもちゃんと文系の質問も受け付けるから大丈夫だよ」
多分この人に『できない』科目はなかったのだろう。静雄は頷くと同時に、そう思った。
その後も趣味や特技、好きなもの嫌いなものその他について質問しあった。途中好きな人はいるのかと個人的な質問を聞かれたが、その質問に答える必要性を感じなかった静雄は、答えなかった。
「さて、質問はこれくらいにして、勉強しようか」
「はい」
静雄は臨也について書き留めたメモを見返した。
 
『 折原臨也
中堅大学卒業。文系科目が嫌い。(できないわけじゃない)二十三歳。
好き 自分の気に入った物すべて
嫌い 自分の気に入らないものすべて
資格 英検一級、漢検準一級、数検準一級、第一種高等教育教員免許(英語、地歴、数学)他
趣味 人間観察、勉強
特技 パルクール、ロシア語         』
 
 資格が多いのは臨也曰く暇だったからだそうだ。教員免許はたまたま大学の課程で取れるということで取得した。他にもロシア語検定などあまり知られていないものも持っていた。特技のパルクールは何なのかと尋ねれば、必要に迫られて習得しただけで特に意味はないよと臨也は答えた。静雄はその必要に迫られてというところが聞きたかった。何故壁などの障害物をよじ登るマイナーな競技を身につける必要があったのかと。そもそもこのメモを見て、折原臨也の何が分かるのか。何も分からない。これをやる必要はなかったのではないかと、静雄は思った。
「あ、あと俺のこと名前で呼んでくれてかまわないよ」
『折原さん』なんて呼ばれるのは気持ち悪いから。そう言われたが、静雄は呼び方を変えなかった。
「先生ですから」
「真面目だね」
臨也はくすくすと笑い、ボールペンをノートに挟んで膝の上に置いた。
「今日は何をやる予定?」
「数学です」
静雄は学校の指定で買った問題集と専用に用意したノートを準備した。
「分からないところがあったらいつでも言ってね」
その言葉に静雄は一つ頷いて、問題に取り掛かった。
 
 
 勉強中は気持ち悪いくらいに静かで、壁にかけていた時計の秒針の音が大きく聞こえた。静雄はいつも音楽を流しながら一人で勉強をしていたため、『折原臨也』という他人がいる状況は慣れないものだった。
問題集を進めいていく中で、静雄は幾つか解けない問題にぶつかった。いつでも、とは言われたがどのタイミングで聞けばいいのか悩んでいると、臨也の方がその様子に気がついて声をかけた。
「どこか躓いた?」
「…この問題が」
静雄は問題を指した。臨也は椅子から立ちあがり、静雄に近づいた。そして問題を見て三秒。
「…あぁ、これはね」
臨也は静雄の手からシャープペンをとり、書きかけの解答の横に綺麗な字で考え方を澱みなく書いていった。
「!」
臨也が問題をさらっと解いてしまったことよりも、背後から被さるように問題をのぞきこんできたことの方に、静雄は驚いていた。
――― …近い
ちらりと視線を横に移せば、臨也の整った顔が近くにあった。色が白いとか睫毛が長いとか香水の匂いがするとか色々気になったが、一番静雄の気を引いたのは赤い虹彩だった。滅多にこんな色の人はいないだろう。黒に近い赤色で、何か惹かれるものがあった。
「そんなに見つめられると恥ずかしいなぁ」
そう話しかけられ、ふと我に返った静雄はいつの間にか臨也と至近距離で顔を合わせていたことに気づき、あわてて上体を後ろに反らした。
「えっ!あ、すみません」
「別に気にしてないよ」
そう言って笑う臨也を見て、静雄は羞恥で顔を赤くした。警戒しようとしていたはずなのに、いつの間にか自分の方から近づいてしまっていた。そのことに気がついた静雄は両手で頬を軽く叩き自身を戒め、そして気を取り直した。一方一通りの説明を書き終えた臨也はまた椅子に座り、ノートに記録を取り始めた。
 静雄はノートに書かれた考え方を読んだ。静雄が躓いた問題は、確立漸化式とよばれる問題の類だった。臨也の書いた解説と図は理解しやすく、綺麗にまとまっていた。
 ――― 中堅大学とか、嘘だろ…
静雄は肩越しに、疑わしい目で臨也の方を見た。しかし目が合い、さっと、手元に視線を戻した。


 
――― 可愛いなぁ
気を取り直そうとしている静雄の様子を見て、臨也は思った。その後目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。
 実のところ、臨也の本職は家庭教師ではない。『情報屋』という有形無実の仕事の方が本職であった。家庭教師をやっているのは自分の教養を保つための手段にすぎなかった。静雄を選んだのは、実は臨也を指名してきた人数の多さから抽選となり、適当に書類を引っこ抜いた結果静雄が当たったという偶然の機会であった。いつもどういう運命か女子生徒ばかりを見ていた臨也にとって平和島静雄という男子生徒はひどく新鮮に目に映った。自分を選んだ平和島静雄とは一体どういう男なのか。そんな興味が頭に浮かんでいた。
 『平和島静雄』に関する情報は驚くほど速く、大量に、詳細に集まった。しかし、どれも似たような内容であった。『池袋最強』『自動喧嘩人形』等々、挙句『化け物』。いったいどんな巨体の持ち主なのか。はたまた不良なのか。正直面倒見るの嫌だなあと思っていた矢先、実際見てどうだろうか。臨也にしてみれば不良どころかただの純粋すぎる男子高校生にしか見えなかった。金髪というのは年齢もあるだろう。顔もその辺のアイドルの顔より綺麗で、喧嘩をしてばかりいるという割に怪我の跡ひとつ無ければ、言葉遣いや性格、態度にも問題がなかった。確か弟が俳優だったかなと臨也は一言付け加えておいた。とにかく自分の描いた人物像は間違いも甚だしい馬鹿げた偶像となった。だが人は見かけで判断できないということは、もはや情報屋という仕事の中では常であった。こんな細い体格をしていても、そこらの不良など本当に一蹴してしまうのではないかと疑ってしまう。


 
 再び勉強に集中し始めた静雄の背中を見ながら、臨也は勉強とかけ離れた別のことを考えていた。色白の肌、鎖骨の浮き出た首元、細い腰。臨也と同じような黒いVネックのシャツを着ているため肌の白さが余計に目立ち、臨也を危険極まりない思考に押しやる。これだけ容姿が良いのだから女の一人や二人いるのかと思えばどうやらそうではないらしいことが分かった。質問にこそ答えなかったが、明らかに付き合ったことはおろか、世間話をしたこともそうないことが見て取れた。彼は面白いのだろうか。臨也は考える。そういった趣味を持ち合わせているのかと問われれば臨也は否と答えるが、自分が気に入ったものを愛でるのは当然のことであり、臨也のものはそれが人の、同性にも当てはまるというだけのことである。しかしそれは少し、いやかなりねじ曲がった、そういった趣味に近い愛で方であるが。
 ――― あぁ、平和島静雄というこの青年を!
そう心のうちで叫んだ瞬間、静雄が臨也を振り返った。
「何か言ったか?」
「ん?何も言ってないよ」
「そうか」
何か納得できていない表情のまま、静雄は視線をノートに戻した。
心の中で叫ぶ分には罪にはならない。成年という壁は意外にも高いものであった。臨也は一人思った。


 
 三時間が経ち、臨也は筆記用具やノートなどを鞄の中にしまった。静雄の方もきりがついたので、問題集とノートを閉じ、机の隅にまとめた。
「あと聞いておきたかった問題はあった?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
そう言って頭を少し下げた静雄を見て、臨也は苦笑した。
「そんなに感謝されるほど教えてないよ。質問だって結局あれだけだったし、何で家庭教師なんて取ったのかなってこっちが疑問に思うくらいだったよ」
これは臨也の正直な感想だった。静雄は臨也が今まで見てきた生徒(と言っても女子ばかりなのだが)の中で一番頭がよかった。複雑な計算式も丁寧に且つ結構な速さで解くうえ、二次試験を想定した解答の書き方も定着していた。そんな彼がどうして家庭教師を取ったのかは疑問で仕方がなかった。
「…別に俺が取りたくて取ったわけじゃなくて、母さんが」
「そうなんだ」
――― なるほど。喧嘩ばかりしている子どもに対する自己満足か。案外信用されてないようだね。これはもしかしたら利用できるかもしれない。時間はきっとかかるだろうから。
臨也は相槌を打ちながら、別のことに考え耽った。
「……」
静雄は無言で、その様子を見ていた。今、彼はよからぬことをきっと考えているだろう、そうに違いない。そんな確信があった。しかし、それを止める権利も知る権利も静雄は持っていない。実行に移されて目に見える形でなければ何もできない。
「玄関まで送ります」
「あぁ、ありがとう」
今静雄が出来るのは、臨也をこの部屋から立ち去らせることだけだった。
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獅子えり
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女性
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大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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