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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/04/23 (Tue) 22:05:00

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No.200
2013/09/08 (Sun) 14:10:43

※いろいろ注意書き
 ・遠回しなグロ表現があります。
 ・テオの性格が銀〇の〇田の様?
 ・多分波紋組は別の戦艦に乗ってる


  夢の世界は果てのない深海を漂う感覚に近かった。己と水の境目は無く、しかし異なる温度が心地よく、いつまでも溶けていたかった。目の前いっぱいに広がる青、蒼、藍。それだけがすべてだった。それだけで十分だった。
 いつからだろう、境目が生じたのは。
 いつからだろう、赤が混ざるようになったのは。
 いつからだろう、手に持つナイフの重みを感じるようになったのは。
 いつからだろう、

 目覚めは、海から陸に打ち上げられた魚のようだった。急な酸素濃度の変化に、身体が順応するまで少年は咳き込んだ。息ができなくて苦しい、という状況を初めて知った。漸くすると呼吸は落ち着き、目下の水溜りを覗けば、藍と、赤く光る眼が自分を見ていた。
 顔を上げてみると、広い海を思わせる夢の世界とは異なり、薄暗く硬い床の上にたくさんの箱や筒があった。這って近づいてみると、筒の中は水で満たされていた。下の方は得体の知れない何かが堆積していたが、少年には分からなかった。
 まだ震えの残る体を立ち上げ、少年は以前から知っていたかのように頭に思い浮かんだ地図に従って動き始めた。筒の間を抜け、白い壁のドアを抜け、箱の間を通り過ぎ、分厚い扉の前に立った。軽い空気音を鳴らして軽やかに開いたそれをくぐり、少年はその部屋を出た。
”いってらっしゃい、われらが同胞の一”



 ストームライダー隊、談話室。
 アクアフォースの白い軍服に身を包んだ二人の男が、チェス板を挟んで座っていた。ベネディクトとディアマンテスであった。
「チェックメイト」
そう言って、ベネディクトは黒いナイトを動かした。あまりにも軽やかに言ったものだから、ディアマンテスは気づくのに数秒の時間が掛かった。
「あ、あぁっ!」
また負けかぁ。ディアマンテスは顔を手で覆うと、椅子の上で仰け反った。各盤面における自分の手を一つ一つ思い出し読み直していくも、失敗は無かったはずだ。
「君、強すぎるよ、全く」
「水将の名を預かっているのだ、当然だろう」
戦闘技量や経験だけでなく、戦術や海流の特徴を理解してこその、波状螺旋の水将という名であった。ベネディクトは膝上においていた帽子を目深に被りなおして立ち上がった。
「さて、私は仕事に戻るとしよう」
時間を見れば、あと数分で休憩時間が終わるところだった。
「じゃあ後で再戦しよう」
「良いだろう」
軽く手を振って、ベネディクトは談話室を出た。
 ストームライダーの談話室からベネディクトの執務室まではさしたる距離ではないが、通るものが限られるため比較的静かであった。そこに、かすかに耳に届いた波の音。それは滴が落ちた波紋のように、非常に微かで、しかししっかりとしていた。
 振り返ると、見覚えのない少年が立っていた。脱槽して間もないだろうとも取れる格好で、じっと蒼と赤の目でベネディクトを見ていた。医療士官の一人が見逃したのだろう。送るのが最善か。そんな軽い気持ちでいたが、少年の探るような視線に思わず声が厳しくなった。
「何かな?」
「……違う」
少年はふらりと身体を半回転させるなり、空気に溶けるように、軽やかに歩き出した。
 ベネディクトはその背を見送りながら首をかしげた。少年の存在そのものだけでなく、少年のその見た目に関して。色の濃い髪は決して珍しいわけではないが、淡い色彩の多いアクアロイドの中では数は少ない。特にあの黒交じりの藍は、ベネディクトの知る限り、一人しかいなかった。
 角を曲がって姿が見えなくなったところでベネディクトの考えは纏まった。
「今のは、もしかして」
ある一つの可能性に至り、それを確かめるためにベネディクトは駆け出した。直ぐに追ったつもりでいたが、存外あの少年の足が速かったようだった。角を曲がってもそこに姿は無く、同じ方向に進んでいくストールが目に入った。
「バシル」
「ベネディクト大佐?ディアマンテス大佐なら執務室に戻っていらっしゃいますが」
「いや、彼ではなくて」
このぐらいの新兵を見なかっただろうか。ベネディクトは自分の手を胸少し下辺りに当てた。返ってきたのは首を左右に振る、知らないというサイン。
「いえ、全く見ていませんが」
ベネディクトは違和感を持った。脇に入る道はバシルよりも数メートル先で、彼を追い越す以外にいく術はない。しかし気配に一倍敏感な彼に気づかせないで、何処へ行ったというのか。
「そうか…見かけたら伝令を頼む」
「それほどに重要な兵士なんですか?」
バシルの疑問も最もだろう。書類も伝令も持たない一介の少年に注意を払っているのだから。
 ベネディクトは私の推測だが、水路に視線を向けながら言った。
「多分、ジノビオスのだろう」
それだけで、バシルは事情を察することができた。
「それは、確かに」
見つけ次第、ジノビオス大佐にも連絡します。バシルはそう言って、右手を額近くに上げた。


 少し針が進んだ時間。皆が休憩を取っている中、アルゴスは自室で世話を焼いていた。
「一介の兵士たるもの、訓練明けとはいえ身だしなみぐらいきちんとすべきだ」
全身濡れたままの少年を見つけてしまったのが最後、どうしても放っておけなかった。動きは機敏なのにその目はどこか虚ろに見えてしまったのが原因かもしれない。
 少年は一言も発することなく、髪を乾かされたり服を着させられたりと、アルゴスのするままに従った。
「私の士官候補生時代のものだが、ないよりましだろう」
袖が少し余ったが、アンダーウェア一枚といういささか活発すぎる格好からは軍人らしくなった。最後に帽子を被せ、それを見てアルゴスも納得し、一息ついた。
「アルゴス少佐」
不意に後ろから声がかかり、危うく口から漏れかけた奇声を、なんとかアルゴスは止めた。
「これは、バシル中佐」
気づかず申し訳ありません。アルゴスは少年の頭から手を離し、軽く敬礼をした。
 バシルの視線は少年に移った。そして視線を合わせるように膝を付くと、頭に被せられた帽子をずらした。そこから覗いた髪と目が、ベネディクトの言っていた特徴と一致した。湯に浸かったのか、少年の顔は赤みを帯びていた。
「あぁ、彼は、水浸しのまま艦内を歩いていたのを見つけまして」
「水浸しで?」
地上より水分含有量の多い艦内ではあるが、水に浸かる場所は限られている。訓練施設と廊下に沿って走る水路しかない。あの場所から近いとすれば後者だが、それでも自分が気づくことは無かった。自分たちとは少し組成が異なるのかもしれないと考えながら、バシルはアルゴスに向いた。
「ベネディクト大佐からの伝言だ。彼をジノビオス大佐のところに連れて行って欲しい、と」
「は、ジノビオス大佐の……了解しました」


 そう言って承ったはいいものの、心中は複雑であった。
 彼はもしかしたら、ジノビオス少佐の複製かもしれない。この可能性が生まれてしまったからだ。しかし能力が高いほど完全同型はできないという結果が出ている以上、安易に結論にも至れない。彼らと同じような存在ではないようにも感じられるし、また別の理論で生まれたのか。
 その際限ない思考を止めたのは水銃の一閃だった。
「あ、アルゴスさん」
鼻先を危うく掠め取られるところだったと焦ったのもつかの間、飛んできた声がアルゴスの怒りを呼んだ。
「……テオ兵長、軍規第47条を覚えているか?」
「はい、確か艦内での武器使用は必要に迫られた場合のみに限る、でしたっけ。でも二項で模擬戦闘に関してはこれを容認するともありますが」
「お前は模擬戦闘の事故で上官を殺す気か」
「だからすみませんって言ってるじゃないですか」
口では謝っているものの、その飄々とした態度に反省の色を見出せず更に怒りが増しかけたところで、第三者の声が入った。
「大変申し訳ありません!アルゴス少佐!」
一旦落ち着きを取り戻したアルゴスは、努めて怒りを抑え、事情を聞くことにした。どうやらテオの武器に憧れた二等兵達に見せていたところ、誤ってトリガーが引っかかってしまったとのことだった。魔力こそ入ってないので破壊力は通常をはるかに下回るが、いわば強力な水鉄砲には変わりなく、当たればそれなりの痛みを感じただろう。アルゴスは、今後は訓練施設で行うように、次はないと厳重注意で終わらせた。
 気づけばアルゴスと少年の後ろをテオが歩いていた。
「全く、アルゴスさんは何で俺に厳しいんだか」
「その性格が少しでも直れば少しは優しく接してやろう」
「うわぁ、優しいアルゴスさんとか引く」
テオは左右の手を二の腕に沿えて震える真似をした。アルゴスは触れることを止め、当初の目的に専念することにした。
「ところでその兵士、少佐の子です?」
「…その減らず口を閉じてやろうか」
「冗談を真に受けないでくださいよ。髪の色とか全体見ればむしろジノビオス大佐の方か」
テオは後ろからじっと少年を見た。体格こそ士官候補生たちと変わらないが、纏う雰囲気が違った。既にいくつかの戦闘を経験したかのような、彼らにはない何かがあった。
「ところで、そいつの名前は?」
「そいつじゃない、アレックスというそうだ」
バシルから伝言を受けた後、呼びかけに悩んだアルゴスは少年に尋ねていた。それが最初に聞いた少年の、アレックスの声であった。それっきり、また何も話さなくなってしまったが、尋ねられたことにはある程度反応することもわかった。もしかしたら脱槽して間もないアクアロイドだったのかと、アルゴスは思い始めていた。

 気づけは地上では陽が傾いていく時間帯になり、艦内の照明が暗くなり始めた。数隻あるアクアフォースの戦艦間移動を繰り返し、漸くジノビオスの執務室に着いた。二度ノックをして、中からの返事を待つ。
「はい」
「アルゴス少佐、入ります」
「テオ兵長、入ります」
室内には机が三つ、三辺それぞれに平行に並んでいたが、入り口正面の机は空いていた。
「すまん、大佐はトランスコア少将の所に出向いている」
「お二人の班に回す書類は来ていませんが」
左右からパヴロス、ソティリオがそれぞれ応えた。
「いえ、書類ではありません。ベネディクト大佐からの伝言で、この新兵を大佐のところにと」
「新兵?」
アルゴスはアレックスの肩を押した。その容姿を見て、書類を捌く手を休めた二人は驚いて椅子から立ち上がった。そして足早に近づくと、膝を折った。
「似ていますね、大佐に」
「あぁ、そうだな」
一度に二人から好奇心の篭った目で見つめられ、アレックスはアルゴスの後ろに下がった。
「伍長が驚かすから」
「お、俺のせいじゃないだろう」
しかし気になるところはあるようで、アルゴスの後ろからアレックスはじっと二人を見ていた。
「懐かれましたね、さすが人望が篤いアルゴスさん」
「…どうもお前に言われると神経に障るんだが」
壁に体重を預けて我関せずの傍観者になっていたテオの一言に、アルゴスは息を吐かざるをえなかった。
 ソティリオとパヴロスが言い合い、それを三人が静観しているそんな状況の中、執務室の扉がノック音なしに再び音を立てた。
「やぁ、ただいま」
「ジノビオス大佐、お帰りなさい」
さっと近づいてきたソティリオに帽子を預け、ジノビオスは襟元を正した。
「危うくレヴォンとサシで飲みに行くところだったよ」
ジノビオスは大変だったと軽く笑っているが、明らかに応じていたら明日がない話にしか聞こえなかった。
「して、アルゴスとテオは」
「此方の新兵を送るよう、ベネディクト大佐の伝言をバシル中佐から受けて」
アルゴスの説明の途中から既に、ジノビオスの注意はすべてアレックスに向いていた。自分に似た暗い色の髪や顔立ちは、アルゴスが着せた士官候補生の服も相まって、昔一枚だけ写真に収めた、今でも記憶に残っている過去の自分を思い出させた。どうせ駄目だろうと思いつつも、心のどこかで希望を持ち続け提供してきたものが、今自分の前に姿を伴って帰ってきていた。
「いや、本当に」
「大佐?」
ジノビオスはアレックスの肩に手を置くと、そのまま机まで一緒に進んだ。
「ジノビオス大佐?」
そして椅子に深く座ると、膝の上にアレックスを座らせた。
「さて、仕事の続きをしようか」
そう言ってジノビオスは机上に積まれた紙を左手で取り、目を通し始めた。
「いやいや大佐それおかしいだろう」
「膝の上に座らせる必要が何処に、というかその子は結局どういう存在で」
「私の子ども?にあたるな」
ジノビオスは視線をアレックスへと向けた。漸く落ち着ける場所を見つけたように、アレックスは頭をジノビオスの腕に乗せていた。突然の子ども発言に全く理解が追いつかないパヴロスとソティリオは首を傾げるしかなかった。
「と言っても細胞を提供しただけに過ぎないけれども」
「しかし、同一個体はできないと」
アルゴスはマスプロ・セイラー達を思い浮かべた。ジノビオスの細胞からアクアロイドを生成してもその類に入ってしまうことだろう。
「正確には“複製”ではないから“子ども”なんだ。誰とも知らない先人も混ざっているだろうから」
アレックスの左目や戦闘能力は、後から調整されてついたものであることを、ジノビオスは既に気づいていた。幸いその能力が彼の身体的負荷になっている様子は無く、脱槽直後のアクアロイドと同じ、感情の起伏がほとんどない特徴だけであった。
「また、お前たちと同じく『波紋』を継ぐアクアロイドでもある」
ジノビオスは視線をパヴロスとソティリオに向けた。それはアクアロイドの中でも自分達にしかない、絆のようなものであった。アレックスの背を押して、二人へと
「先輩として指導を頼んだぞ」
「「はっ!」」

 二人の部下が部屋を出て行ったところで、ジノビオスは部屋に残ったアルゴスとテオへと顔を向けた。
「アルゴス少佐、テオ兵長。連れて来てくれて感謝する」
「死なないといいですね、彼」
またお前は、とアルゴスはテオを見たが、その表情はいつもと違い、戦場に立つ兵士の顔であった。戦地は新米にも玄人にも容赦ない。確率は下がるだけで、ゼロに至ることはない。その表情を向けられ、ジノビオスは笑みを浮かべた。
「死なせやしない。勿論、私も元より死ぬ気などない」
正義を貫くために、生きるんだ。机上の端に置いている一冊の記録に手を置きながら、ジノビオスは呟いた。
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HN:
獅子えり
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女性
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大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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