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日常/感想/二次創作小説※重要。小説へはカテゴリーの一覧から飛んでください。取扱CPはDRRR:臨静臨/APH:東西&味覚音痴/異説:78中心天気組/黒バス:赤降赤/VGユニット:騎士団航空海軍他。DRRRは情報屋左推奨中。TV小説漫画DVD所有。APHは東西LOVE独語専攻中。漫画全巻CD原作柄所持TV二期迄。異説はもう天気組愛。原作は7のみ。コンピ把握。81012は動画攻略wiki勉強。究極本厨。赤降気味でリバOK。VG擬人化フレイム・サンダー辺りとか。コメント・誤字指摘歓迎します!!転載とかはご遠慮願います。
No.
2024/05/04 (Sat) 23:28:29

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No.164
2012/01/07 (Sat) 22:40:29

第四話。

 感覚的な話であるが、受験生の一年は速い。外を見れば梅雨前線の影響で一週間ほど続いている雨が、今日も降っている。換気ができないため教室内の空気が濁ってしまい、暑かった。しかも教室には熱気もこもり始めていた。こ原因は、期末考査期間突入とともに企画が始まった高校生活最後の文化祭に対するクラスメイト達の活気であった。クラスみんなで何をしようかと友人同士で話し合っている中、静雄は窓際の席で静かに、静かに予習と考査のための勉強を進めていた。クラスメイト達は連日の雨や暑さで静雄の機嫌が下降していることを自然に察知し、関わらないようにしていた。大まかに食品を扱う模擬店と決まり、後は何を作り、どんなキャッチコピーで、どんな雰囲気の店にするかを話し合っていた。
 突然教室の引き戸が荒々しく開かれるまでは。
「平和島ァッ」
そう叫び突然教室に乗り込んできたのは、先日まで停学処分を受けていた隣のクラスの生徒数名。短い学ランにサイズの大きすぎるズボンを腰のあたりでベルトで留めるという、やや古風なスタイルであった。今日も今日とて雨であったために濡れている裾が少し格好悪かった。
 彼らは周りに目もくれず真っすぐ静雄の席へと歩き、周りを囲んだ。
「テメェ何イイコちゃんぶってんだぁ?アァッ?」
彼らの苛立ちの根源は全くもって停学処分への鬱憤と一人処分を免れた静雄への恨みに対する八つ当たりであった。静雄が処分を免れた理由は主に怪我であった。本人はちゃんと直立し意識もあったのだが、頭から血を流し、左腕と右足があらぬ方向を向いていた。いつもは加害者と見られがちであった静雄だったがこの時ばかりは被害者扱いされ、停学処分を受けなかった。それでも、何の意味も持たない反省文だけは書かされた。
なにはともあれ、機嫌の悪い静雄が黙っているはずがない。そう思ったクラスメイト達は一斉に教室の外へと貴重品を持って退出した。
「オレ達が・・なくて寂しかっ・・・よなァ」
「平和島静雄に・・んな ・・・ らねぇだろ」
「 て  ・・が ・・ ・・」
「・・  ぇ ・・  ぉ・・・・」
苛立ちのあまり、静雄は次第に周りの音が聞こえなくなってきた。なぜ俺に突っかかってくる。この間の話はもう終わったことだろうに。勝手に引っ張り合いに出してこじ付けの因縁をつけてくるということはつまり喧嘩を売っていることか。俺に暴力を使わせる気か…
ぐるぐると持論が展開されていく中手に余計な力が入り、シャープペンが折れた感触がした。その時に、ふと我に返った。
「……あ、」
静雄は無残にも真ん中から折れたシャープペンを眺めた。そしてそれが今しがた込めた力のせいで折れたのだと気付いた。
 
――― 幽が、…幽がくれた、シャープペン……
 
「何だぁ?こいつ」
「シャープペン見たまま固まってッぞ?」
 
――― こいつらが
 
――― こいつらが、来なければ・・・
 
「あ、もうおぁッ」
静雄はすばやく手を伸ばし適当な位置にいた一人の顎を掴んだ。そのまま椅子から立ち上がり、腕を伸ばして上へと持ち上げる。
「……のに」
「は?」
「っの野郎ッ!」
後ろから殴ろうとしたもう一人に、静雄は空いたもう片方の手で裏拳を顔面に入れた。華麗に吹っ飛び、廊下側の壁に力なく激突し、床へと落ちた。
「幽から貰ったものなのによぉ…テメェ等が俺を怒らせなきゃ折れずに済んだよなぁ…」
静雄は持ちあげている一人を手早く放り投げ、服や腕を掴んできていた生徒の手を無理矢理はがし、正面から頬を殴ってきた生徒の腕を掴み軽く曲がらない方へと曲げ、さらにいまだ伸びてくる手を黙らせるため脛を蹴ってやった。それでも残った者たちはいたが、静雄に手を上げず払われた仲間の方へと向かっていった。
 席の周りはさっぱりした。静雄は折れたシャープペンをジャケットのポケットに入れ、机に出していた筆記用具を筆箱に仕舞うと、鞄を机の横のフックから外し、その中に机の中から出した教科書ノート類を突っ込み、筆箱も突っ込んで、それを持ってうずくまる彼らを無視して歩き出した。
教室を出て、ぱっと目に付いた生徒に一言。
「帰る」
そう残して下駄箱へと向かった。
 この日の静雄の備品への被害はゼロで、むしろクラスメイト達の証言により不良たちは生活指導の教員に二時間に及ぶ説教を受けることとなった。
 クラスメイト達は、教室の被害がゼロだったことよりも、始めてみた静雄の、本当に悲しそうな表情を心配していた。
――― 静雄、大丈夫かな・・・
教室内で唯一事情を知る生徒、新羅はいなくなった二つ後ろの席をみて、窓の外を見た。
 空はまだ暗く、雨足が少しだけ強くなった気がした。


 
 学校を出て二十分。静雄は傘も差さずふらふらと街中を歩いた。雨の冷たさに頭が冷まされたが、さらに心も体も冷めていくようだった。こんな天気でも、こんな時間でも、中心街は相変わらず人の波があった。道行く人は静雄に奇異な視線を送るが、彼を避け、我関せずと過ぎ去っていった。
「……」
静雄の心の中は、あのシャープペンを折ってしまった自分に対する後悔ばかりが渦巻いていた。どこにでも市販されているただのシャープペンだが、あれは、幽が受験の応援として贈ってくれたものであった。見えない価値がついていた。だが、自分がここまで落ち込むとは思ってもいなかった。
 気がつけば公園まで来ていた。静雄はふらりと中に入り、濡れて色濃くなったベンチに腰をかけた。公園に立ち寄っている者は誰もいなかった。
――― 幽、ごめん…
俯けば、髪から滴が絶え間なく伝い落ちていき、砂に混ざっていった。完全に制服は濡れ、雨粒が背中を打つのが感じられた。
 しかしそれは不意に地面が少し陰ったと同時に止まった。
「静雄君?」
「……?」
名前を呼ばれ顔を上げると、臨也が立っていた。相変わらずのフードのついた黒いジャケットを羽織った格好で、ジーンズの裾が少し濡れていた。手にしている黒い傘は傾けられ、自分がぬれるのにもかかわらず静雄を雨から守っていた。
「傘も差さずに何してるの?」
「別に…濡れるからいい」
静雄は再度俯いて答えた。その声に力は無かった。何かあったのは確実だ。そう思い、臨也は傘を静雄に向けて傾けたまま、携帯電話を開いた。
 ――― 丁度終わったし、この後もしばらくは予定ないし
臨也は携帯をポケットに戻し、静雄に話しかけた。
「家の鍵持ってる?」
静雄は一つ頷いた。
「とりあえず家に帰ろうか」
「……」
臨也は静雄の手を引き、今更ともいえるが傘の中に入れ、歩き始めた。


 
 静雄から鍵を借り、臨也はドアを開けた。
 室内は真っ暗で、人の気配はしなかった。それでも、外気よりは少し暖かかった。
「親はいないみたいだね」
「…今日は仕事でいない」
そう小さく言って、静雄は靴を脱ぎ、ふらふらと自分の部屋へと向かった。しかし臨也はその腕を掴み、洗面所の方へと引っ張った。
「とりあえず温まっておいで」
「……」
そう言われ、静雄は誘導されるままに洗面所に入った。静雄は制服を脱ぎ下着を脱ぎ、風呂場へ入った。
「服は適当に選んでおけばいい?」
それに対し返事はなかった。
 臨也は静雄の部屋に入り、適当に服を見繕って、風呂場に入ったのを見計らって洗面所の方に置いておいた。
 リビングに入りキッチンに立つとココアやコーヒーの瓶が目につき、勝手だが淹れることにした。コートを脱いでダイニングの椅子に掛けさせてもらい、キッチンに戻った。
 ――― なーんで俺、こんなことしているんだろう?
カップや瓶など道具を並べながら臨也はふと思った。しかし手は止まることなく、家でするように水を沸騰させてカップに粉を入れそこに湯を注ぎスプーンで二、三回混ぜていた。携帯を見たときはまぁこの後は暇だし助けるか。そんな軽い気持ちだったが、よくよく考えてみれば雨に濡れた子を助けるなんて洒落たことは誰にもしたことがなかった。
 ――― 特別視したせいかな?
顎に手を当てながら、臨也は静雄が出てくるのを待った。


 
 温かいシャワーを浴びると、静雄は気分が少し落ち着いた。冷えた体のみならずその温かさは心にも少しだけ届いた。薄緑色のタイルの壁に手をつき、静雄は鏡を見た。
 ――― ひっでぇ顔
こんな暗い表情をして自分は街を歩いていたのか。改めてそう思うと少し馬鹿らしく感じてしまった。正直に話そう。静雄はそう決めた。
 濡れた体をふき、さぁ出ようと思った所で静雄は着替えのことを思い出した。そういえば部屋に寄って持ってくるのを忘れていた。しかしそれは杞憂に終わった。風呂場を出て洗面所を見ると、タオルが置かれているかごの上に服が置いてあった。そう言えば何か言っていたような気がした。静雄はそれに着替え、ジャケットから折れたシャープペンを取り出してジーンズのポケットに入れ、洗面所を出た。臨也に礼を言おう。そう思い電気のついたリビングに向かった。
 扉を開けると、梅雨独特の湿気が消えていた。
「勝手にキッチンとかエアコン使ったけど、良かったかな?」
臨也はソファに座っていた。テーブルの上にはカップが二つ置いてあった。静雄は一つ頷いて、その向かいに座った。
「どっちが好きか分からなかったから両方淹れちゃったけど」
「……ココア」
「そう」
静雄はココアの入ったカップを取った。一口飲むと、丁度いいぐらいに冷めており、また偶然にも静雄の好きな濃さであった。臨也は残ったコーヒーの方のカップを手に取り、一口啜った。
「で、何があったの?」
そう尋ねられると、公園の時とは違い、静雄は答えることが出来た。
「幽がくれたシャープペンを、折っちまったんだ」
そう言って、静雄はジーンズのポケットからその折れたシャープペンを出した。
 ――― うわぁ
一体どれほどの力が入ればここまできれいに折れるのだろうか。割合太めのシャープペンは真ん中ぐらいのところで、見事に真っ二つに折れていた。外のケースも、内の軸も綺麗に割れていた。修復できないわけではないが、すぐにまた折れてしまうのは目に見えていた。
 臨也はうーん、と唸って、やがてコートのポケットに手を入れた。
「はい」
「え?」
「幽君の物の代わりにはならないかもしれないけど、俺からプレゼント」
静雄の前に出されたのは、最近出たばかりの真新しいシャープペンだった。
「丁度今日買いに行ってきてね」
「でも」
「いいって。それくらい、また買えばいいし」
臨也はコーヒーを一気に呷り、立ち上がった。
「受験、頑張ろうね」
「…はい」

 
 その後、静雄は幽にシャープペンのことを話した。
「そう」
幽は怒ることも悲しむこともなく、少し嬉しそうな表情をしてそのシャープペンを見た。
「これ、本当は兄貴の力を抑えてくれるように願掛けしてたんだ」
「そうなのか?」
「うん。あまり効果なかったかもしれないけど…」
「いや、そんなこと!ない、」
「無理しなくていいよ」
そう言うと、幽はもう一本、同じシャープペンを静雄に渡した。
「今度は、ちゃんと受験が成功するようにってお願いしておいた」
「…ありがとな」
 期末考査中、静雄は調子が良かったことは言うまでもない。


 
 梅雨が明け、じりじりと蒸し暑い季節がやってきた。授業も短縮に入り、午後は文化祭の準備が始まっていた。
「静雄、考査前に何かあった?」
休み時間、新羅は空いた静雄の前の席に座るなり、突然そう切り出した。
「なんだよ、突然…」
「いや、期末考査あたり、何か機嫌よかったからさ」
そう言いながら、新羅は静雄のペンケースの中を漁り始めた。何してんだと言いつつも静雄は特に彼の手を止めたりはしなかった。そして間もなく、新羅はその中から二本のシャープペンを机の上に出した。一本は以前静雄が折ってしまったものと同じものだった。どうしたのかと聞けば、また貰った、といった。
「へぇ、幽君から同じもの貰ったんだ」
「あぁ。前のやつは俺の力を止めてくれるよう願掛けしてあったらしい」
「成程」
一見どこにでも売っていそうなシャープペンだったが、軸をくるりと回したときに目についた軸の文字を見て、新羅は吹き出しかけた。
 ――― これは特別製だ
それでも顔はにやけていた。軸にあった文字は。
『 Dear.SHIZUO.H from,KASUKA.H 』
光の加減で薄く見える程度の文字であった。静雄の様子からして、この文字に気づいた様子はないようだった。
――― なかなか粋なことをするなぁ、幽君
新羅はさらに、もう一本の方のシャープペンを手に取った。そちらはついこの間新発売された某有名文具メーカーのものだった。気軽に買うにはちょっと高すぎる値段が付いていたことと新羅は思い出した。
「静雄って文具にこだわりあった?」
「それも貰いもんだ」
「誰から?」
そう聞くと、静雄の口から出てくるとは思ってもいなかった名前が出てきた。
「折原っていう家庭教師。受験がんばろうってくれた」
「折原?!」
その声は思った以上に大きく、教室中の視線を集めてしまった。新羅は苦笑いし、一つ溜息をついた。
 ――― いや待て自分。折原っていう名字は他にもたくさんいるよ。なに勝手に『臨也』って指定してるんだ。でも僕が知る折原って彼しかいないし……
新羅のその様子を見て、静雄は決定打を決めた。
「本当に知り合いだったのか」
 ――― あぁ、臨也に決定だ。てか、何で臨也?
「い、いや……まぁ、結構お世話になってるというか、お世話してるというか…」
「何だそれ?」
頭上にクエスチョンマークをいくつも飛ばしている静雄をよそに、新羅はへぇ、うん、そう、などと呟きながら、シャープペンをペンケースの中にしまった。
「あの時は本当、助かった気がするんだよな」
「…へぇー」
珍しい静雄の穏やかな表情に、新羅は一抹の不安を感じていた。


 
 同日午後、川越沿いマンション
 新羅はある人物を前にして怒っているのに笑っている顔をしていた。
「どうしたんだい?」
折原臨也だった。
 あの後新羅は授業後にあった文化祭の話し合いに参加しなかった。とくに興味もなく、皆がやることに適当に合わせればいいかなぁと思い、同じ考えを持った静雄とともに教室を出て家にまっすぐ帰った。すると、なぜか臨也が家の中にいた。同居しているセルティが鍵をかけ忘れたと言うのは考えられなかった。だとすれば、この男は不法侵入者となりうるのだが、はっきり言って今に始まったことではなかったので、新羅は言及しないでおいた。
 それよりも気にかかってやまなかったのは。
「何で君みたいな最低最悪腹黒外道残酷冷酷非常卑劣な情報屋折原臨也が、静雄の家庭教師なんてやってるのかなぁ」
「立派な罵詈雑言ありがとう」
臨也は他人の家だというのに優雅にソファに座り、新羅の出した紅茶を啜った。
「単なる偶然だよ」
聞けば、応募者多数により、抽選となって彼の書類を引き当てたそうだ。新羅にしてみれば、どんな家庭教師の会社なのかも気になった。生徒を抽選で選ぶ家庭教師があっていいものか。きっと臨也と何らかの取引をしているに違いない。
「で、興味持ったから続けてるんだよ」
「いつまで続くかなぁ」
新羅はダイニングテーブルに寄りかかり、愛用のマグカップでコーヒーを飲んだ。臨也は飽きやすいことを、新羅は知っていた。本職と人間への愛を除いて、今まで長くもって半年。短い時はたった二時間程度しか続かなかった。家庭教師も、生徒をころころと変えては長続きしていなかった。
「今までいろんな子のこと聞かされてきたけど、シャープペンをあげるなんて初めてじゃないか。しかも受験がんばろうだなんて」
「そうだね」
臨也はカップをテーブルに置き、背もたれに寄りかかった。
「俺も不思議だったよ。雨の日に公園で彼を見つけてさ、家まで送って色々世話して」
 ――― おいおい人の家で何やっているんだ。
心中でそう突っ込み、新羅はマグカップから口を離し、臨也の方を見た。
「最初に会った時も、俺が集めた情報と違いすぎて驚いたよ。これが化け物かってね。確かに容姿は人並み以上だし、力だって現場を見たことはないけど動画見て本当らしいことがわかった。しかも警戒心は人一倍強い割に、存外すぐ慣れるんだよね。この間も引かれてた線一本越えた感じがしたんだよ。俺を最初見たとき毛を逆立てた猫、いや、ライオンあたりにでもしておこうか、そんな感じだったのに。シャープペン一本壊したぐらいで落ち込むくらい精神的には弱くて・・・何であんな最強で最弱のものを、この世界は作り出したんだろう」
 ――― 臨也?
その長い言葉を聞いて、新羅はふむ、と顎に手を当てた。
「君ってさ、色々曲がってるよね」
「まぁ、真っすぐな人間ではないと思うよ」
俺が真っすぐだったら、この世の人間のほとんどが鋭利な直線になるんじゃないかな。
臨也は嗤った。そうじゃなくて、と新羅は結論を言った。
「好きなの?静雄のこと」
「好き?まさか。冗談だ」
そう言って、臨也はカップに口をつけた。
「そうやって短絡的に結びつけるところはまだ君も高校生だね。最初に言っただろう?興味だって」
あくまで興味と言い張る臨也に、新羅はかまを掛けてみた。
「興味、ね。確かに僕も静雄に興味はあるよ」
「へぇ」
瞬間、臨也の目の色、目つき、空気が少し変わった。それを感じ取りながらも、新羅は続けた。
「あの筋肉、骨格、体格でどうして自動販売機とかアスファルトに埋まった標識とか重いものが持ち上げあれるのかってね。解剖してみたいよ」
「それは彼が死んでからにしてくれないかなぁ」
そう言うと、臨也はソファから立ち上がった。いつの間にか変化はすべて消え去り、横に置いていたコートを羽織り、玄関へと歩き出した。
「俺この後仕事だから、また後でよろしく。じゃあねー」
ドアが閉まり、新羅はダイニングテーブルからソファへと移動した。
「また後でって、今日も怪我すること決定なのかい」
仕方ないなぁ。新羅は医療器具一式を準備しておくことにした。
 そして、臨也は短絡的で高校生だと言ったが、明らかにあの空気の変化は間違いないと新羅は一人マグカップを片手に深く頷いた。
「というか、やっぱり好きなんじゃないか。静雄のこと」
案外短絡的なのは臨也の方じゃないかなぁ。マグカップを一気に呷って残りを飲み干し、新羅は事務室、もとい治療室の清掃を始めることにした。
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HN:
獅子えり
性別:
女性
職業:
大学生
自己紹介:
日本の真ん中あたりの都市に住処有。最近有名になった大学に在学。ドイツ語専攻中。ゲームは日常の栄養剤。小説書くのは妄想を形に(笑)本自体が好きという説明しがたく理解されにくいものを持っている。横文字は間違える。漢字は得意な方。英語は読み聞きはいいが話せない。他は自己紹介からどうぞ。
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